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マリア様がみてる 小説vsアニメ 徹底比較

「マリア様がみてる」のDVDリリースが開始されました。ここではもう一度アニメを見直しながら、じっくりと小説版との違いを見てみたいと思います。 そもそも小説とアニメとでは表現手法が違うものであり、どちらが上・下ということではなく、それぞれの長所・短所を挙げながらさらに深くマリみてワールドを楽しんでしまおうという趣旨です。

したがって、このページではアニメ・小説ともに激しくネタバレをしています。両方制覇してから読むことを強くお勧めします。それではスタート!

(マリア様がみてる〜春〜の比較はこちら)


DVD 第1巻

VS

DVD 第1巻

「マリア様がみてる」

第1話「波乱の姉妹宣言」

アニメ第1話に対応するのは小説「マリア様がみてる」(第1巻目だけサブタイトルがない)の「胸騒ぎの月曜日」章。アニメでは冒頭、いきなり祥子さまが祐巳を姉妹宣言するところから始まる。初めて観た人には???だったかもしれない。「ロサ・キネンシス」「ブゥトン」「プティ・スール」などの難解な専門用語に加え、山百合会メンバーが全員集合、その上結構長い。その分情報量は多いのだが、ちょっと詰め込み過ぎでかえってインパクトが薄れているかも知れない。

記念すべき祥子さまと祐巳とのファーストコンタクトでは、祐巳は小説では何も言えないまま固まっていたが、アニメではタイを直してもらったお礼をきっちり言えている。 前者では祥子さまを神格化、後者では憧れの先輩に声を掛けてもらえたうれしさが強調されている。アニメではその後の展開が短くなっていることが変更の理由と思われる。

薔薇の館初訪問では、アニメではなぜか祐巳が祥子さまに押しつぶされるシーンは後回しにされ、いきなり着座してスールとなる話が進んでいる。説明台詞を固めて置きたかったものと思うが、かなり不親切ではないだろうか。小説を読んでいた私でさえ、え?と思ったくらいだ。その後は、かなり忠実に小説をなぞった展開になっている。

アニメでは祐巳が祥子さまの申し出を断った時に、すっとロザリオが回転して心の動揺を表しているところがスマートな印象を与える。その部分は小説では「こめかみをピクピクと震わせて」と少しコミカルタッチ。全体的に言えることだが、アニメでは真面目というか落ち着いた感じになっているように思う。 それは祥子さまの声や演技にも現れていて、小説からはもっとツンツンした印象があったのだがアニメではきわめて上品なテイスト。 祐巳を抱きしめて「あなた、お姉さまはいて?」と尋ねるシーンなどは、ずっとイケナイ感じが増していると思う。その分、祥子さまが一番年上に見える(聞こえる)のが難点だが、 個人的には非常に好印象である。

その祥子さまの演技については、自分のフォローに回った祐巳をしかるシーンでもそうで、より優しさが感じられる。一度祐巳の肩にかけた手をなでるように動かし、 しばし見つめ合うシーンが挿入されているのもいい演出。

「必ずあなたのスールになってみせるから」と祥子さまが晴れやかに宣言するシーンでは、小説ではもっと前に出ていた「マリア様の心」をバックに流している。 風にたなびく祥子さまの長い髪と、祐巳のタイ。というところできれいに第1話は終了している。

「マリア様にはないしょ。」

DVD初回特典映像。わずか1分半の映像ですが、なかなか笑えます。マリみてSDキャラたちが収録の裏側を再現するという展開で、ちょっとハイトーンな声が可愛らしいです。すました顔で決め台詞を言い放つ志摩子さんがグッド。フランス語の解説をする由乃ちゃんなどファンならニヤリとしてしまうシーンもあります。

初回特典などとケチくさいこと言わず、全部に付けて欲しいものです。


DVD 第2巻

VS

DVD 第2巻

「マリア様がみてる」

第2話「胸騒ぎの連弾」

「波乱の火曜日」から「水曜日の物思い、金曜日のバトル」の冒頭までに相当する第2話は、かなり小説に忠実に作られている。特に、志摩子さんの銀杏談義など全くそのままで、志摩子さんファンとしては嬉しいところ。

連弾シーンはサブタイトルになっているだけあって、ムード満点。ただし小説では「しかしその息づかいは、腹が立つほど穏やかだった。祐巳と違って祥子さまは、これっぽっちのことで動じたりしないのだ。」とある。憧れの祥子さまと連弾というファンとしては至上の時間を過ごしながらも、結局自分は賭け(スールになるかならないか)の対象でしかないのだという思いから祐巳は連弾を止めてしまったと読める。どちらかといえば、祥子さまへの恨み節かもしれない。 アニメではそこまでは描かれていないので、少なくともこの時点では、自身のドキドキ感に胸が苦しくなって止めたように見える。

ダンスシーンでは、ほぼ小説のまま。ただし、黄薔薇のつぼみロサ・フェティダ・アン・ブゥトンとダンスしている時に祥子さまと目が合い、思わず手を離して逃げ出してしまうところはアニメのみ。 祐巳の思いの深さを感じることができるシーン。

祐巳がスールを断った理由が語られるシーンも、ほぼ同じ。ただし、小説では「プライド」という言葉が出てくるところが面白い。 女らしい感情だと思うが、アニメの方がすっきりとしていて分かりやすい(男としては)。

第3話「月とロザリオ」

忠実だった第2話から一転、小説のほぼ残りの半分を片付けたのはこの第3話。当然、小説のエピソードは端折られまくり。一番大きな違いは、柏木の正体(同性愛者)に言及しなかったこと。したがって、なぜ柏木がダメなやつなのか、どうして祥子さまはそんなに傷ついたのかよく分からないままに終わっている。 また、柏木に会ってからおかしくなった(ぼ〜っとしている)祥子さまのシーンもないため、祐巳が祥子さまの気持ちに気付いたのも少し鋭すぎる勘と言わざる得ない。 ただ、努力もせず相手からも認められないままに好きな人と結ばれる哀しさ、という意味で祐巳の中での祥子さまとの関係をなぞる形にはなっている。

後は、祥子さまのゴージャスなブラジャーを祐巳が借りるイベントとか、一緒に学園祭を見るシーンとか、ラストでワルツを踊るシーンなどもカット。ブラはともかく、学園祭を見るところは真の初デートとも言えるわけで(小説の中でも1,2ページの出来事とはいえ)残念。

しかし、アニメもシーン単位ではいいところを見せてくれる。まず、白薔薇さまロサ・ギガンティアが祐巳にじゃれついて「祥子を嫉妬させてあげたわよ」いうシーン。 基本的に祐巳視点で描かれている小説とは異なり、直接祥子さまの反応を見られるところがよい。また、二人だけでダンスを練習するシーンも声がいかにも楽しげに弾んでいて、アニメ化した甲斐があったところ。肝心のロザリオの授受もわざわざマリア像の前で行うなど、ビジュアル的な効果も考えられている。ただ、温室で祥子さまが涙するシーンでは、少しタメが足りずに情感が十分出ていなかったように感じた。

マリア様にはないしょ。#2

公式ページの書き方がイマイチ分かりにくいので第1巻だけの特典なのかと思っていましたが、どうやら毎巻付くようです(初回のみですが)。どうもマリみては商売下手のような。

さて、今回もSDキャラが舞台裏を明かしてくれます。祥子さまは祐巳に少し物足りなく思うところがあるようです。それは……。たったの90秒で終わってしまうので、集中して見ましょう。

ところで、ロザリオ拝受というのはなかなかいい言葉ですね。


DVD 第3巻

VS

DVD 第3巻

「黄薔薇革命」

第4話「黄薔薇革命」

なぜか黄緑色のカバーのDVD第3巻。どういうわけか令さまが祐巳をナンパしているような絵がケースに描かれているが、第3巻がそのまま小説版「黄薔薇革命」に対応しているのは分かりやすい。分量も、第4話は小説の「思わぬ余波」章の3節冒頭までと、ほぼ等分されている。

冒頭の見所の一つ、祐巳に祥子さまが飴をあげるシーン。ここは小説では「目つきには依然として険がある。けれどその一段高い位置は、祥子さまの華やかな美しさをますます強調するためにふさわしかった」と階段の上から祐巳を見下ろしている。アニメでは二人とも廊下に立ち、祥子さまにはステンドグラス越しの柔らかな光が注いでいて祐巳が見とれている。第1話のレビューでも触れたが、小説では祥子さまの凛とした美しさが強調され、アニメでは優しく上品な美しさが強調されていると感じる。どちらの祥子さまがお好みだろうか。

したがって、由乃にロザリオを突き返され茫然自失の令を連れ帰るシーンは、その凛とした祥子さまが発揮されるところであるが、アニメではイマイチの感がある。 「「しゃっきりしなさい、令」(中略)悔しいくらいビシッと決まる。この命令口調は、誰にもきっと真似できない。」という雰囲気があまり伝わってこないのだ。 これは祥子役の伊藤美紀の声の功罪といったところか。伊藤美紀の演技力の問題という意味ではなく、上品さを狙った演出のマイナス面だろう。

さて、小説1冊を2話で消化している関係上、様々なシーンがカットされている。第3話と違ってうまくまとめているが、この第4話の範囲では、志摩子さんの銀杏収穫祭がカットされているのがファンとしては残念である。

第5話「戦う乙女たち」

冒頭から、白薔薇さまロサ・ギガンティアの"お戯れ"シーン。小説ではティーカップを3つ祐巳に用意させて彼女の行動が計算尽くであることを分からせているが、アニメではそれはカット。第3話で似たようなことをやっていて、また"お戯れ"ていることは分かるので、これは小説の方が冗長かもしれない。祥子さまが白薔薇さまロサ・ギガンティアに噛みつくこのシーンは、上手くアニメ化されていて、彼女の嫉妬感が遺憾なく表現されている。第3話ではお茶を吹いてしまった祐巳の口の周りを拭うことはしなかったものの、ここでは白薔薇さまロサ・ギガンティアにキスされたところを拭いてあげているところが面白い。ついでに、アニメではロザリオを返してしまった由乃の行動への疑問へと繋げていて、話が自然に流れている。

令を剣道部顧問の山村先生が励ますシーンはアニメでは丸々カット。カットされてもそれほど違和感はないが、大原さやかの声を当てたのはこのシーンのためだと思っていたので、少々拍子抜けの感がある。

祐巳と祥子さまがお見舞いについて話しているシーン。小説では腕組みというラブラブなシーンがあったがそれはなし。祐巳が百面相をしている理由は小説では祥子さまとのことを考えていたからだが、アニメでは流れに沿って由乃のことをあれこれ考えていたからという違いがある。

腕組みはともかく、剣道の観戦シーンで白薔薇さまロサ・ギガンティアがパンをおごろうとして祥子さまが遮ったシーンもカットされたのは極めて残念。祐巳に「たまには、お姉さまらしいことさせてちょうだい」と、初めてストレートに気持ちを表現したところであるので、ちょっともったいない。しかし、アニメでは「お姉さまとお呼びなさいと何度言えば分かるの?」と祐巳に詰め寄るところを紅薔薇さまロサ・キネンシスが穏やかに見守っているというシーンになっていて、これはこれでおいしい。ついでにラストシーンへの伏線でもある。

観戦シーンと言えば、祥子さまが剣道に詳しいのは柏木のお陰なのだが、アニメではこれについて言及はない。 第3話での彼の扱いを見ると当然かもしれないが、今後アニメでは祐巳が柏木について心配する必要はなさそうである。

手術後、久しぶりに顔を合わせた由乃と令。この二人が気持ちを通わせるシーンはアニメ版の方が非常によくできている。台詞は全く同じなのに髪をなでる手の動き、弾む由乃の声、おでこコッツンする様子などアニメの表現力を活かして印象的なシーンに仕上がっている。嬉しそうな由乃と安らいでいる令という対照もうまい。個人的には黄薔薇ファミリーはあまり好きではなかったが、この回によって一気に評価が上がった。

後日談とも言える黄薔薇さまロサ・フェティダの真相だが、アニメではなぜ妊娠と誤解されていたのかさっぱり分からない。小説ではそれとミスリードする描写があったため、まだ唐突な感じは少なかったが、どちらにしても妊娠ネタがここで出てくる意味はあまりよく分からない。

そしてラストの「お姉さま」呼び掛けのシーン。ここはまったく小説版と同じ。アニメ版もよく表現されている。もっとも「マリみて」してるシーンであるので力が入るのも当然だが、実によい出来。

マリア様にはないしょ。#3

例によって、今回登場したシーンをネタにして遊んでいます。ギャグとしてはかなりベタですが、くすっと笑えます。それにしてもSDキャラの祐巳ちゃんはなんでこんなに可愛いんでしょう。いやいや、目だけ動かして祥子さまを見る志摩子さんもなかなか。さぁ、次回からは志摩子さん祭りですよ。


DVD 第4巻

VS

DVD 第4巻

「ロサ・カニーナ」

「ウァレンティーヌスの贈り物〈前編〉」

第6話「ロサ・カニーナ」

ロサ・カニーナこと蟹名静さまと、白薔薇のつぼみロサ・ギガンティア・アン・ブゥトンこと志摩子さんとの白薔薇さまロサ・ギガンティアを巡るお話。原作第3巻「いばらの森」を後回しにして登場。 小説では、お姉さまにうまく接することが出来ずに落ち込む祐巳の姿がもう一つの柱なのだが、アニメではだいぶそれが薄められている。

基本的には原作どおりに話が進むが、例によって尺の短さからいくつかのシーンがまとめられたりしている。 まず、祐巳はそれと知らずに静さまに接近しているのだがこれがカットされ、いきなり由乃に指摘されるシーンから始まる。 余談だが、図書館の検索のシーンを念頭に置いたネタをwebサイトに(放送前に)上げておいたら、思いっきり削除されて肩透かしを食らってしまった。

これにしたがって、また、あっさり選挙も終わってしまったため、原作にあったロサ・カニーナvs現山百合会、その中間に位置する祐巳という構図はほとんどなくなっている。 静さまもなにかよく分からん人が、唐突に白薔薇さまロサ・ギガンティアといちゃついていたという印象がある。

しかしながら、生徒会長選挙を通じて、自分とお姉さま、リリアン女学院の関係に思い悩む志摩子さんは丁寧に描かれていた。 「私のお姉さまは白薔薇さまロサ・ギガンティアただ一人です」と毅然と語る姿も美しい。アニメでは志摩子さんの扱いは優遇されているように感じる。

紅薔薇さまロサ・キネンシスが祐巳のフォローに回るシーン、ここは篠原恵美の演技力が抜群。 台詞としては「祥子に叱られた?」と優しく答えを引き出そうとする原作のほうがよい。 しかし、自信たっぷりに「お姉さま歴の長い私が言うのだから、間違いないの」とあんな声で言われたら、それこそなんでも答えてしまいたくなるほどの安心感である。 これは4話で令の相談に乗ろうとするシーンでも同様で、紅薔薇さまロサ・キネンシスははまり役と言えるだろう。

「あなたは魅力的だ、ロサ・カニーナ」と来るものは拒まない白薔薇さまロサ・ギガンティアのシーンは原作通りだが、前フリが全くないゆえに違和感を感じる。 また原作の、静さまの長髪は白薔薇さまロサ・ギガンティアに合わせてカットした、というエピソードもなかったため、彼女がずっと白薔薇さまロサ・ギガンティアのことを思っていたこともいまひとつ伝わってこない。 もっともこれは「いばらの森」が後回しになったことも関係している。

さて、選挙が終わった後、小説では緊張してお昼を食べ残していた祥子さまが「あなたの顔を見ていたら急に食欲わいてきたのよ、私」と語るシーンがあったが、それはアニメではカット、単にお茶をするように変わっている。わずかな違いだが、小説「パラソルをさがして」に繋がる伏線なのでちょっと残念。

ちなみに、小説後半の「長き夜の」はTV新シリーズ(マリア様がみてる・春)に持ち越されている。

第7話「びっくりチョコレート・前編」

小説タイトルは「ウァレンティーヌスの贈り物(前編)」となっているが、アニメでは「びっくりチョコレート」章からサブタイトルを取っている。第7話では小説のp119までで、第8話とほぼ等分されている。

全体的な構成は変わってないものの、この話も尺の短さからなのか、かなり端折られている。新聞部の三奈子さまが相当迫力不足なのは妥協するにしても、 バレンタインを前にした祐巳の不安があまり出てこないので、押しつけの自己満足的行動を取るという流れがほとんど表現されていない。

小説では、バレンタインと言う一大イベントを控え期待を膨らませていた祐巳が、カード探しイベントでお姉さまと一緒に行動することが出来ず、 またお姉さまはバレンタインが嫌い!?というショッキングな出来事から不安になってしまい、うまくお姉さまに接することが出来なくなるという心情がつづられている。 だから、それでもお姉さまの役に立ちたいと思った彼女が、人知れず雑用をこなすようになるという経緯が良く分かる。

残念ながらアニメではそういった感じに乏しく、山百合会の制約の中で働いていた祐巳が一方的に祥子さまに叱られているように見えてしまう。 特に、登校時のマリア様像の前で祐巳が祥子さまを無視したというアニメオリジナルのシーンは、祥子さまの言いがかりにしか思えない。

これは小説版とアニメ版の表現方法の違いも影響しているかもしれない。小説版ではあくまでも祐巳視点で描かれているので、その中の祥子さまは完璧な存在のように見える。 実はそうではないことが次第に分かる(=祐巳が祥子さまに対する理解度を上げていく)というのが小説の基本姿勢である。 対してアニメではダイレクトに祥子さまを描いているので、今回叱ったのは大義名分はあるものの、彼女自身もうまく祐巳に接することが出来ず、令や白薔薇さまロサ・ギガンティアに対する嫉妬心から来ていることが最初からバレてしまっている。

ではアニメは破綻しているのかといえば、これがそうでもなく、次話で解釈を加えてそれなりに収束させているところが面白い。

マリア様にはないしょ。#4

今回も「ないしょ。」にしたい舞台裏がてんこ盛り。祥子さまが怒りに震えていた理由は? いつも貫禄ある紅薔薇さまロサ・キネンシスのセリフ回しに必要なものとは? その目でご確認あれ。


DVD 第5巻

VS

DVD 第5巻

「ウァレンティーヌスの贈り物〈前編〉」

「ウァレンティーヌスの贈り物〈後編〉」

第8話「びっくりチョコレート・後編」

小説の「ウァレンティーヌスの贈り物〈前編〉」のp120〜「びっくりチョコレート」最後までに対応。DVDの志摩子さんジャケットがちょっとうれしい…すごくうれしい。

さて、まず驚かされたのが冒頭の祥子さまの台詞。泣き出してしまった祐巳に対して、「なぜ、泣くの?」から始まる一連の台詞は小説とまったく同じだが、声の演技によって込められている感情が異なる。 小説では「『あなた方も、やっぱり私を一方的に悪者にするつもり!?』 ヒステリックな叫び声が、階段の上の方から聞こえてきた。」と、当り散らすといった感じだが、アニメではずっと寂しそうで哀しそうで、ああ祥子さまも辛かったんだな、と分かる。そんなお姉さまをみて祐巳はさらに涙が溢れてしまうというのも理解しやすい。 このシーン単体で見た場合はアニメ版のほうが優れているように見えるが、先の展開も考えるとどうだろう。小説では祐巳視点で「すごい」と見えているお姉さまより、実は祐巳のほうがずっと精神的に大人で、祥子さまは自分の感情をうまく表せない人ということが徐々に分かってくる。 それを考えるとこのシーンでは子供のようにヒステリックになる必要があったかもしれない。しかし、アニメ版の表現が非常に新鮮で腑に落ちたのもまた事実である。

祐巳が温室で白薔薇さまロサ・ギガンティアと話すシーンは、ほぼ小説通り。「姉さまに嫌われちゃったかな…」とうなだれるところの演技や、「…どうしよう、もうすぐ白薔薇さまロサ・ギガンティアが卒業しちゃう」と腕にしがみつくシーンも美しく、アニメも原作に負けていない。なお、このシーンで白薔薇さまロサ・ギガンティアが「わたしゃこの温室、ちょいと苦手なんだ」という台詞は、アニメでは「白き花びら」が後に回されているため、逆に伏線になっている。

そしてお楽しみののカード探しイベント…は、大幅にカットされている。原作では追いかけっこがコミカルに描かれていたが、残念ながらほとんどでてこない。祐巳がトイレに逃げ込むシーンもないため、紅薔薇さまロサ・キネンシスがこのどたばたを目撃することもなく、小説の「紅薔薇さまロサ・キネンシス、人生最良の日」がアニメ化されることはなさそうである(一部、9話に取り入れられているが)。

カード探しの後、それぞれの姉妹スールがチョコを渡すところは、それぞれ微妙に異なっている。まず、志摩子さん。小説では「たぶん志摩子さんも気づいていた。だけど、うつむいて何も言わなかった。だから、祐巳が代わりに質問した。」と「赤面してうつむきっぱなし」である。 信仰の厚い彼女が、ウァレンティーヌスの日にチョコレートを渡すなど初めてのことだったのだろう。そんな初々しさが溢れている。 一方、アニメでは祐巳の力を借りずに、自分で白薔薇さまロサ・ギガンティアにチョコの件を尋ねている。そして赤面しながらも、とても満ち足りた表情を浮かべるのだ。ここはアニメの表現の方がなかなかよいのではないだろうか。 祐巳の場合は、ほぼ原作通りだが、最後に「はずれの」チョコレートが「当たり」の箱から出てきて「祐巳は不思議な気持ちでそのチョコレートを摘み上げて」というのはアニメでは明示的には語られていない。小説ではその後、祥子さまを半日デートに誘うのだが、アニメではそのワンクッションがないため、最初から狙っていたのかな、と思えなくもない。由乃の場合は小説では「令ちゃんの馬鹿!」と言ったときにチョコを投げつけるのだが、アニメではその台詞(9話)だけで彼女はチョコを渡していないのだった。

なお、その他の姉妹スール、例えば祥子さまが紅薔薇さまロサ・キネンシスへチョコを贈ったのかは小説・アニメともに言及はない。

第9話「紅いカード」

ウァレンティーヌスの贈り物〈後編〉に収録されている「紅いカード」は薔薇ファミリー以外の人間がメインである、小説でも異色の話。鵜沢美冬と、彼女の目から見た祥子さまが語られており、アニメも原作に忠実に描かれている。小説では「幼稚園児の頃の姿をパワーアップしたような」と祥子さまが実はそれほど「大人」ではないことがズバリ記述されている。

鵜沢美冬が祐巳を認めた後で髪を解くシーンがあるが、この意味は小説を読まないと分かりにくい。祐巳がカード探しの最中、温室で彼女に会ったシーンで小説ではこう記述されている。 「祐巳と同じように髪を二つに結んで、でも少し長さが足りないようでサイドに後れ毛が多かった」。そして「祐巳さんは髪型が変わった私のことを、やっぱり気がつかないようだった」という一文で話が締めくくられている。彼女は、祐巳が祥子さんの姉妹スールになぜ選ばれたのかを知りたくて、もしくは祥子さんに認めてもらいたくて、祐巳の髪型を真似ていたのではないだろうか。残念ながら、アニメ版では美冬の髪型は、リリアンに転校してきた時から二つに結んでいたのでこの仮説は成り立たない。しかし、祐巳ふうの髪を解き、自分なりの髪形にすることは彼女の成長を象徴していると捉えた方がすっきりするだろう。 アニメではクラスメートに「その髪型、似合ってるわよ」と誉められるシーンが追加されており、その点については分かりやすくなっている。

小説とは順序が異なり、「紅いカード」の後に「ファースト デート トライアングル」の冒頭や「紅薔薇さまロサ・キネンシス、人生最良の日」の一部が来ていて、全体として8話の後日談的な話としてまとめられている。

その後日談のなかで、もっとも印象的なのは志摩子さんと白薔薇さまロサ・ギガンティアとのやり取りを描いたシーンだ(特に志摩子さんファンにとっては)。細かいしぐさ、きらりと光る涙、そして そっともたれかかる様子を描写することで、志摩子さんの白薔薇さまロサ・ギガンティアへの想いを汲み取ることができる大変美しいシーンになっている。だが、ここは小説版とは意味合いが異なっている。特に、小説では白薔薇さまロサ・ギガンティアの肩にもたれかかったりはしない。「二人は似ている。だから、あまり近づきすぎてはいけない。近づいて、相手に甘えてしまうことは、お互いの傷をなめあうことに他ならない。」と、むしろ距離をおいて触れ合うことに意味を見出している。これは「私、甘えるのが下手だし」(いとしき歳月(後編))という後の台詞にも繋がっているのだろう。 また、アニメでは「白き花びら」が後回しになっていることから、志摩子の手を強引に引いてマリア様へ手を合わせるのを止めさせるという、栞のように神に奪われることを恐れているかのような白薔薇さまロサ・ギガンティアの描写がカットされている。 つまり、アニメでは志摩子さんの気持ちに、小説では二人の関係にそれぞれ焦点が当てられていると言えるだろう。 しかし、アニメのシーンはずっと繊細かつ洗練されており(特に、白薔薇さまロサ・ギガンティアが志摩子さんの手を取った時に流れる一条の涙が実に美しい)、名シーンの一つに推したいところである。

マリア様にはないしょ。#5

まさにその志摩子さんと白薔薇さまロサ・ギガンティアとのシーンから。静からもらったチョコをほいっと志摩子に投げ入れてしまい…。その次の祥子さまも異様に可愛かったりします。 …しかし、この「ないしょ。」ちとパワー不足かな? せっかく好き勝手できる枠を手に入れたのだから、もっと存分にやって欲しい。あまりやりすぎるとファンのひんしゅくを買うかも知れませんけど…。


DVD 第6巻

VS

DVD 第6巻

「いばらの森」

第10話「いばらの森」

小説では三作目に当たる「いばらの森」を、アニメでは第10〜11話に持ってきている。理由はいくつか想像できるが、あまり最初に重い話を持ってくるのを避けたのではないだろうか。白薔薇さまロサ・ギガンティアの"軽い"キャラクターが浸透したところでやったほうが効果的かもしれない。次の巻が出るまで時間がある小説とは違い、毎週放送のあるアニメゆえの措置か。

しかし、第9話がバレンタインで、この第10話でなんの説明もなくクリスマスまで戻ってしまったのは、若干不親切かも知れない。また、時系列の変更により、第8話で白薔薇さまロサ・ギガンティアが祐巳を力づけるシーンや、第9話での白薔薇さまロサ・ギガンティアと志摩子さんとのシーンに修正が加わっていることはすでに述べた通りである。

さて、この第10話自体もかなりの変更がある。小説では白薔薇さまロサ・ギガンティアの小説騒ぎを軸に、祥子と祐巳、令と由乃、白薔薇さまロサ・ギガンティアと志摩子の関係を対比させることで、姉妹スールの様々なありかたを示すような展開になっている。しかし、アニメでは白薔薇さまロサ・ギガンティア一本に絞り、それに必要な部分だけを取り込んでいる。 「おいしい」部分がかなりカットされてしまったので、物足りなく感じるのは私だけではないはずだ。以下、その「おいしい」部分について触れておきたい。

まず、祥子と祐巳。祥子さまがレジに本を持っていくシーンで、小説を読んだことのある人は「ありえない!」と叫んだはずだ。ハイパーお嬢さまな彼女は、セルフサービスで商品を持っていくというシステムを知らないのだ。また白薔薇さまロサ・ギガンティアの告白を聞いた後で祐巳が、艶やかな訪問着を着た祥子さまに遭遇するシーンもない。 ここもハイパーお嬢さまっぷりが際立つエピソードであるが、それよりも白薔薇さまロサ・ギガンティアと志摩子の関係を「別にうらやましくはないわ。そういった形もあるって、認めはするけど。私には向いていないもの」とコメントし、祐巳のリボンを直してくれるシーンの方が重要。だからこそ姉妹スールになったのだ、と祐巳も読者も感じたに違いない。 極めつけは小説のラスト。祥子さまと祐巳はクリスマスプレゼントを交換する。祐巳が付けていたリボンをほどきあの長い黒髪を束ねるという、ちょっとこそばゆいけど心温まるシーンだった。これをアニメで見られなかったのは残念である。

お次は、令と由乃。自宅で姉妹スール関係を越えた仲の良さを見せるシーンが、やはりごっそり削除されている。「令ちゃんのばか」とクッションを投げつける由乃もない。そんな内弁慶な姿を見せていいと思うほど、祐巳に心を許しているというシーンでもあったのだが…。 アニメではあっさり出版社に乗り込んでいくため、由乃の暴走っぷりや、実は令さまがコスモス文庫の愛読者であることも触れられていない。なお、アニメでは「ありがちなラストだったねー」と作中の「いばらの森」に対して冷淡な反応を示す由乃が追加されている。池波正太郎などの書籍を読み漁っている彼女であれば、この反応も頷ける。

出版社に乗り込んで"須加星"と対面するシーンも大幅に短縮されている。小説では、ちょっとした謎解きの感じもあったのだが。 ラストでは、小説にはあったクリスマスを祝うシーンをカットして、代わりに白薔薇さまロサ・ギガンティアの追憶による栞の姿が入っている。次の第11話「白き花びら」への繋がりを重視したのだろう。

第11話「白き花びら」

端折りがちだった第10話に比べ、かなり小説に忠実であったこの第11話。ただ、小説にあった聖の学校や大人への不信というものは控えめになっている。 その代わり映像で見る、聖と栞の禁断の関係は妖しく美しく、これだけでもアニメ化した価値は十分にあったと言えるだろう。特に、温室のシーンがよい。 栞が髪を拭くしぐさが艶めかしく、聖の心のざわめきを表すような雨だれの音のなか、互いの髪と指を絡ませるという(「くすぐった〜い…」) 表現がロマンティックであり、エロティックですらあった。

また、脇役の演出も良かった。今では紅薔薇さまロサ・キネンシスとしてブイブイ言わせている蓉子も、つぼみブゥトン時代だからなのか、聖のことだからなのか、心配さが表情に出ていて魅力的。先代白薔薇さまロサ・ギガンティア役の高山みなみは少し意外な感じもしたが、存在感のある演技で素晴らしかった。

メインである栞については、評価が分かれるかも知れない。というのも小説では、彼女の外観に関する記述はほとんどなく、せいぜい「白い(=信仰心)、長い髪、大人びた」といったところ。私の久保栞像は、地味で取り柄もなく目立たないが、純粋な心の持ち主というもの。 アニメではちょっとエキゾチックな美少女になっていた。もっとも、それだけ聖と抱き合うシーンが美しくなっていたので不満があるわけではない。

ラストは、小説では"須加星"が白薔薇さまロサ・ギガンティアの案内で学園長室まで行くシーンがあるが(ただし「いばらの森」での話)、アニメでは案内の申し出を断っている。 小説では時代を超えた二人の「セイ」のツーショットという印象的なシーンだったが、アニメでは"須加星"のほうにあまり時間は掛けなかったことと、 祥子さまのプレゼントシーンがなくなったので、こうなったのだろう。

マリア様にはないしょ。#6

女の子は長電話が大好きなんです、ってなネタ。なるほど、植田佳奈さんは大阪出身だったんですな。

…今回のネタはこれだけ。本編がシリアスなだけにいじりにくかったものと思われます。


DVD 第7巻

VS

DVD 第7巻

「ウァレンティーヌスの贈り物〈後編〉」

第12話「ファースト・デート・トライアングル」

時系列としては第8話の続きとなるのが、この第12話。アニメでは順番の入れ替えが激しいので、マリみて略年表を参考にしていただきたい。小説には冒頭からp.88に対応しているが、一部p.111の由乃が令たちのデートを目撃するシーンや、p.118の静さまと志摩子さんの会話もこの話に登場している。

さて、サブタイトルとなっている「トライアングル」は祐巳ら1年生3人のそれぞれの行動を指しているものと思われるが、同時に聖-静-志摩子、令-ちさと-由乃という三角関係を指しているとも考えられる。お姉さまとの初デートや、姉妹スール以外の人とのデートを通じてそれぞれの関係を深めるというのが小説および第12話〜第13話の全体の構成である。そんなわけで、大筋としてはアニメと小説は同じ。しかし、例によっていくつか省略された部分はある。

由乃がチョコの整理をしているシーンでは、小説にあった祐巳との友情を確認するというシーンが省略されている。「大人っぽい友情にはまだまだ遠いけれど」というように「なかよしさん」という感じのシーンではあったが、それもまたらしくて良かったのだが。また、それぞれのグラン・スールへの接し方の違いも際立っていた。 ついでに田沼ちさとのチョコを発見して由乃が悔しがるシーンも省略されている。

また、静さまと志摩子さんのバスの中の会話は一部省略されている。小説では志摩子さんが静さまとのデートに戸惑い気味であることと、外面を作り上げて他人と干渉しないように生きてきたこと(新聞部の行動を推測できなかったのは、疑うことを知らないからではないと思う)が静さまのきつい言葉で切り出されているが、このステップを省略し小説p.118のシーンになっている。

令たちのデートを目撃して落ち込む由乃、自分に興味があると言った静さまを前に揺れる志摩子さん、お姉さまとはぐれてしまった祐巳とそれぞれの不安を抱えてこの話は終了する。もっとも、お姉さまとはぐれる祐巳というのはアニメオリジナルのシーンで、いくらなんでも「デートに嫌気がさして帰ってしまった」りはしないだろうとツッコミを入れたいところではある。また、小説ではいろいろと抜けている三奈子さまのフォローをしている蔦子さんが、アニメでは同レベルになっているのは蔦子さんファンには耐えがたいかも?

第13話「ごきげんよう、お姉さま」

小説では「ファースト デート トライアングル」の最後までに相当するこの第13話が最終回。

前回のラスト、祥子さま帰ってしまった!?という展開はないだろうと書いたが、「自信がなくて…」と涙ぐむ祐巳を祥子さまが何も言わずに拭ってあげるシーンはよかった。その時は周囲の雑音も消え、まさに二人だけの世界。その後は小説通りジーンズショップでラブラブ。「衣擦れの音に、ちょっとドキドキ」も忠実に再現されていたのは驚きだ。ただ、由乃がデートに合流する際の「祥子さまは本当は二人きりより三人の方が楽しいんだろうか」という祐巳の「複雑な気分」は描かれていない。

由乃vsちさとのシーンは、小説にあったネチネチ感はなくあっさり風味。が、アニメでは「令ちゃんが悪い」と直接非難するシーンが盛り込まれている。 ちさとのことを言っているのだが、その背後には今日一日寂しかったという感情が込められていることが、涙に濡れた瞳から読みとれる。そんな由乃をそっと抱きしめる令の手には「由乃今日はゴメンネ」とデコレーションされたケーキが。ここは二人の性格を十分反映したいいシーンになっている。

さて、志摩子さんファンとしては、彼女のシーンの美しさに触れないわけにはいかない。まずは彼女のファッション。 深い藍色のロングスカートに、同色のタイ。そして白いフレアカフスのブラウス。小説ではp.133のイラストでしか触れられていないが、あのコートの下にはこんなキュートなファッションが隠されていたのだ。 そして静のアヴェ・マリアをバックに、一人になってしまった志摩子、そこに突如現れた白薔薇さまロサ・ギガンティア。「お姉さまに会いたかった…」と泣いてすがるシーンが神秘的とも言える雰囲気で描かれている。印象に残るシーンだと思うのは、志摩子さんファンだけではないはずだ。

これで第1シーズンとしては終了。最後の祥子と祐巳の電話もなにやら中途半端で、あまり終わったという感じはしない。確かに本当の最終回ではないのだが、区切りとしては微妙なところである。全体を振り返ると、小説のコメディタッチな部分は抑えめで、しっとりした部分を強調しているのがこのアニメ版。 それがうまくいっているところもあるし、そうでないところもあるが、やはりビジュアルや声の印象は強く、アニメファンとしては十分に堪能させてもらった。 惜しむらくは何クール放送が取れるか不透明で、かなり駆け足になってしまった部分があったことだろう。

マリア様にはないしょ。#7

最後のオチですが、ギャグというより今後の展開(〜春〜)を暗示したもののように思えますね。

 

(C)カズくん