SACD/CD Player Lindemann 820

マイクロ精機の CD プレーヤー,CD-M2 がディスクを受け付けなくなったのが昨年の秋.同じトラ
ブルを修理して約一年.再修理も考えたがなにしろ運ぶには重い.Studer A730 は探してもみつか
らない.たとえ手に入ってもメインテナンスが難しいと思い,現代の機器を探してみようという気に
なった.オーディオの先生は体調を崩してリタイアされた.お元気でも McIntosh MC275, Marantz
#7, Tannoy Monitor Red の時代の方は CD に関心がない.かくして CD プレーヤー探しが始まった.

価格を考えなければ普通に思いつく機器は Linn CD12.やがて CD12 が生産中止になることが報道さ
れたため,最新の音響機器 SACD に絞る.候補に挙げた機種は Accuphase DP-100+DC 101,
DENON DCD-SA1,Esoteric X-01,Goldmund Eidos 18ME-A (universal),Mark Levinson
No.390SL (HDCD),Sony SCD-DR1,そして Lindemann 820.Esoteric P01+D01と dCS のセット
は価格が折り合わず最初から対象外とした.SACD/CD トランスポートと A/D コンバーターが一体でも
独立していることに無関係で好みの音を探した.聴かせて貰ったスピーカーは Sonas faber の Amati
Homage など多数.ネットを外すと複数のユニットが露出するスピーカーは性に合わないが
Autographで聴ける店はない.現代のハイエンドアンプの中ではの McIntosh の真空管プリメイン,
MA2275 が印象に残る.話はそれるがこのアンプは MC275 と C22 を設計した S. コーダーマンの
作品.往年のふたつの銘器を併せたような音と書いているヒョーロン家がいたが,それは乱暴すぎる.
せめて彼が若い頃聴いたことがある音を彷彿とさせるような音とでも書いたらどうだろう.現代の
人工的すぎる美音に対して一石を投じたことは理解できるが,ソリッドステートも各所の使われた
MA2275 は MC275 とは異なる.私は MC275 と Marantz #7 の組み合わせにこだわる.

さて SACD.最初に目星をつけて Lindemann を聴いてアナログに近いつややかな質感のある音と
感じ,あとの作業は Lindemann を越える機器を探すことだった.Sony は明らかなデザインのミス.
Accuphase は変わりない Accuphase の音がした.Glodmund と Mark Levinson は SACD 2 チャン
ネルではなく,もし気に入った音がしたら,という程度の気持で聴いた.DENON と Esoteric は現代
オーディオ機器がもつ特徴的な音がした.Esoteric にその傾向がより強い.最終的に Lindemann と
対照的な Esoteric をわが家に持ち込んで貰って比較評価するという話になったが,輸入台数が少な
かった Lindemann の試聴機がなくなってしまった.年末年始の救いのない退屈な時間に間に合わなく
なってしまい,Esoteric をシステムに組んで聴かないまま,2004 年 12 月 28 日,代理店に一台
残っていた Lindemann 820 が届いた.古い機器を集めた私のシステムの中ではあまり問題にならない
が,道具としてのデザインには不満が残る.日本製の機器の方が一般にスマートだ.しかしクルマ同
様,画一的すぎる.Lindemann はさらにシャープなデザインを追求すべきであった.ただし,SACD
の梵字のようなロゴが刻印されていない点が音質とともに気に入ったところだ.マルチチャンネル,
DVD 対応ではなく 2 チャンネル対応という意図がオーディオの本質を突いている.

CD はアナログ信号が毎秒 44,100 回でカットされ,標本化周波数は 44.1 kHz.符号化方式は 16
ビット (44.1 kHz/16 bits),PCM (Pulse Code Modulation).それに対して SACD の sampling
rate は CD の 64倍,2,822.4 kHz,1 ビット DSD (Direct Stream Digital) 方式で符号化されるため
(2.8224 MHz/1 bit),アナログにきわめて近い音が再現されるといわれている.理論的なダイナミッ
クレンジは CD の約 96 dB に対し SACD は 120 dB 以上の値がえられる.なぜ機種によって音質が
異なるかはわからない.制作者の思想が込められていると思われる.

Lindemann D680 という機種の評価が高かったが,HDCD 対応のフィルターを供給するメーカーの
Lindemann820-1都合で生産中止になり,昨年秋に後継機と
して Lindemann820 が発売された."D" は
省かれている.製造元はミュンヒェン郊外,
シュタルンベルクにある "LINDEMANN
audiothchnik GmbH (リンデマン・オーディ
オテヒニーク)".数名の社員がハイエンド・
オーディオを目指して努力する小規模なメー
カーだ.シュタルンベルクは Ludwig II が
入水した湖の畔にある小さな街.通り過ぎた
ことがある.Lindemann 820 のドライヴ・
メカニズムは Sony OM4. SACD/CD に最適化
された専用波長をもつ twin laser を格納した
シングルピックアップ・リニアトラッキング
型.CD のアップサンプリング機構が組まれ,
44.1 kHz, 88.2 kHz, 176.4 kHz に切り替え
られる.初期設定は 176.4 kHz にセットされているが,
sampling rate を変えてCD を聴き比べる楽しみがある.丁寧に制作されたディスクを 44.1 kHz から
上げて聴くと小春日和の澄んだ空気から 176.4 kHz では凛とした冬の空気になるように感じられる.
SACD での S/N比は -124 dB,THDは -106 dB,ダイナミックレンジは 144 dB,周波数特性は
0Hz-38 kHz (-3 dB) .

Lindemann820-2Hybrid SACD でラファエル・クーベリック,
バイエルン放送交響楽団,合唱団,独唱者に
よるマーラーの第 8 交響曲 (Audite) を聴く
と,ひとの声による圧倒的なスペクタクルを
体験できる.ドイッチェス・ムゼウムのコン
グレスザール一杯に広がる音響と独唱者や
独奏楽器の定位感が明確に判る.第 8 交響曲
を鮮明に聴くことができることを喜んでいる.
ジャズはハンク・ジョーンズ,ジョン・パティ
トゥッチ,ジャック・デジョネットの The
Great Jazz Trio による 'S Wonderful (Eighty-
Eights) で試した.上品で冴えたピアノを
支えるベースとドラムスが見事だ.三人のジャ
ズメンがそこにいるようではないか.エルヴィ
ン・ジョーンズを喪ったハンク・ジョーンズの
気持ちまで届くような気がする.一方で,Lindemann は J-POP にはまったく不向きだ.中低音を強調
した録音を相手にしていないところにオーディオに関する主張がある.なお,プレーヤー本体に AC 電源
が供給され,別に独立した電源から DC を供給する構成になっている.輸入機器にはケーブルが付属して
いない場合があることを注意する必要がある.SACD/CD プレーヤーは今後も開発が進められると考え
られる.ユニヴァーサルに向かうか,2 チャンネルに徹するかがオーディオを好む者の判断の分岐点かも
しれない.私は 2チャンネル,ステレオを好む.(記: 10. April 2005)

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