小心者が世界を変える
〜マーティ・O・レイニー〜



  マーティ・O・レイニー博士の「小心者が世界を変える」(務台夏子訳、ヴィレッジブックス)を読んだ。 元来自分は活字嫌いで、写真が沢山掲載されている雑誌のキャプションを拾い読みするくらいでしか、日頃読書に接することはない。 情けないことに、中学生の息子よりも読書時間は少ないのではなかろうか? そんな自分でも、年に1〜2冊は、目からうろこのお助け本に出会うことがある。 マーティ・O・レイニーの「小心者が世界を変える」はそんな一冊である。 翻訳のせいかもしれないが、もう少しうまくまとめてもらえれば1/3くらいのボリュームに収まるような気もする。 しかし、活字嫌いの私でも読みきることができる面白い内容だったので、少しだけ紹介させていただきたい。
 アメリカ人の著者は、世の中の人達を外向型と内向型の性質に分類して分析している。 「わたしたちの文化においては、外向的な特質が尊ばれ、報いられる。 アメリカは自らの考えを声に表す市民を重視し、荒削りな個人主義のもとに成り立った。 私たちは、行動、迅速さ、競争、活力を重んじている。」(本文より抜粋) 世の中の75%はそんな外向型人間であり、それにさらされながら生きている内向型人間は、外向型人間からのストレスにさらされ、さらには罪悪感や羞恥心を強いられることになってしまうのである。 外向型人間は例えれば”太陽電池”、外の世界に接することにより自分の活動エネルギーを生成する。 それに対し内向型人間は”充電型電池”、自分の内側から活動エネルギーを生成し、外の世界からの刺激によりエネルギーを消耗してしまう。 ってのが自称内向型女性のレイニーさんの分析。 今となっては、日本においても、小学、中学、高校、大学、会社、全ての社会においてもアメリカと同じ傾向は見られるような気がする。
 ところで、自分は外交的な人間だと周りの人達から言われる。 本人もそうかなぁと納得していたのだが...。 しかし、この本を読んで、特定のプレッシャーに弱かったり、自分のとった行動や発言に対して、時折感じる罪悪感や羞恥心の正体を知ることができた。 外交的であるか内向的であるか? それは二者択一ではなく、連続的につながっているのである。 私の場合は極めて外交的に傾いているが、ときおり内向的な気質が顔を出してしまうのだ。 本書にて、該当項目を選択し、外交的か内向的かを自己診断することができるが、私の場合どちらにも完全に自分と一致する項目が複数存在した。 なかなか定量化できる話ではないが、定性的にパターン化することは可能なようだ。 本人しか分からない心の中の事だから、思い当たるふしがあってドキッとさせられるかも。
 外向型になれ、内向型になれと言われても、それは変えることができない生来の気質。 外向型と内向型は単なる気質の違いであって、優劣ではない事を認識することが重要だそうだ。  医学博士である著者の解説や紹介される参考文献は、科学的・論理的で素人の自分にも納得しやすい。 人の気質は、育ってきた環境よりも、性格染色体と呼ばれる遺伝子の影響を受ける傾向がある。 この性格染色体は神経伝達物質の分泌をつかさどり、外向型気質の人は、ドーパミン等の興奮系神経伝達物質により、自律神経系の交感神経を刺激しやすい。 一方内向型気質の人は、アセチルコリンのような抑制系神経伝達物質により、自律神経系の副交感神経を刺激しやすい傾向がある。 自分の場合、交感神経と副交感神経のPID?制御がお粗末なのだろう。 行け行けどんどんの時と、どんより落ち込んでいる時の、血圧やら脈拍やら血糖値など測り溜めといたら面白いかもしれない。
 さて、著者の心理療法師の経験により、クライアントに対し実践しているサジェッションが具体的でとても参考になる。 人や集団、環境から刺激を受けすぎて消耗してしまう内向型気質。 その気質の特質を理解し、エネルギーの生成と消費をコントロールすることにより、内向型の特長を活かして生活を楽しみ、さらに有意義な人生をおくることができるっていう筋書きである。 また、内向型の立場からだけでなく、外向型の立場からも参考になることは多いと感じた。 ここでは紹介しきれないが、夫妻、親子、会社の上司と部下、いろいろなケースでの外向型と内向型の組み合わせ事例と、それぞれの対処方法がアドバイスされている。 外向型の人間も、内向型人間の気質を全く気にせずに振舞い、大切な人との関係を円滑に保てなかったり、せっかくの優秀な人材を活用できていない場合も少なくないようだ。 内向型の人の気質に気づきそれに配慮することができれば、外向型人間にとっても大きなプラスになるかもしれない。
 人間関係や仕事にストレスを感じてしまっている人は、内向型気質がその理由かも? 煮え切らない身近な人のことが理解できない人は、能天気な外向型気質が理由かも? 思い当たる人は読まれてみてはいかが? 性格は変えられなくとも、原因を知るだけで随分救われます。 性格変えようなんて無理なこと考えると、それこそノイローゼになっちまう。 世界が変えられるかどうかは分からないが、ディフェンス技術は高いほうが良いことは事実。




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