はじめに
子宮筋腫は子宮や卵巣に発生する腫瘍のうちで最も頻度が高く、40代の患者さんでは3人から4人に1人は子宮筋腫が認められると言われています。また、妊娠、・出産する年齢の上昇や機会が減ったことにより、子宮内膜症に悩んでいる患者さんも以前に比べ増加しています。婦人科の病気は患者さん本人にとっても、なかなか医師に受診することに勇気がいるために症状がありながら、様子を見てしまい、悪化させてしまうケースを経験することがあります。また、最近、治療の選択肢が広がったことは良いことなのですが、かえって混乱してしまう場合もあるようです
ここでは、子宮筋腫や子宮内膜症に関しての知識や情報を整理し、症状の理解や治療法の選択に役立てていければと考えています。
治療法の選択肢が多くて判断に迷うのはなぜでしょうか?
手術療法か子宮動脈塞栓(UAE)かホルモン療法か?
子宮全摘か子宮温存か?
開腹か腹腔鏡か子宮鏡か?
さらに新しい治療法(収束超音波、冷凍凝固等)か?
東洋医学的アプローチは?
子宮癌や卵巣癌等の悪性疾患では、直接生命にかかわる病気であることから、「この症状であれば、この治療法が最善である」という標準的治療法を決めるための努力が、常に行われています。一方、子宮筋腫、子宮内膜症は良性疾患ですので、困った症状がなければ治療は必ずしも必要では無いことが大きな特徴です。また、患者さんの背景(年齢、筋腫や内膜症の存在部位、症状、妊娠の予定の有無、仕事など)により最善の治療が異なってくることも問題を複雑にしています。さらに、仮に背景が全く同じ2人の患者さんが居たとしても、それぞれの方の自分の身体に対する考え方によっても正解の選択肢は異なる、ということも、しばしば経験します。上にあげたような様々な選択肢から、自分に合った治療法を見つけることは単に身体の病気を治すだけでなく、自分の生き方にもかかわってくると言えます。
医師の問題点、患者さんの問題点
産婦人科の医師がカバーする領域は、主に「周産期」というお産に関するもの、さらに「悪性腫瘍」、「不妊症」などがあります。最近はおばあちゃんに多い子宮脱や尿失禁に関連する「泌尿・婦人科学」という分野も出てきました。それぞれの分野で医学の進歩は目覚しく、体外受精や胎児診断、早産の管理、癌の先端医療や終末期医療などのメジャーなフィールドに産婦人科医の関心も向いてしまいがちです。子宮筋腫・内膜症は良性の病気であり、子宮や卵巣は心臓や肝臓のよう生命には直接関係しない臓器との認識から10年位前までは、メジャーな疾患の谷間で扱われてきた感があります。その後、内視鏡手術の進歩や子宮動脈塞栓術の普及、何よりもインターネットにより専門的な医学情報を患者さんが手に入れる事が可能になり、患者さん同志のネットを通じた横の広がりがきっかけとなり、子宮筋腫・内膜症に対する考え方も大きく変わってきたように感じています。しかし、癌と異なり、子宮筋腫や子宮内膜症に関してはこれまでの治療成績の積み重ねが意外に少なく、担当医の経験や個人的意見により治療法が左右されてしまうことは現在でもしばしばあるようです。
患者さん側の問題点としては、インターネットや書籍による情報過多があります。残念ながら現時点では子宮筋腫や子宮内膜症に対する「魔法の治療」というのは存在しないのが現実です。しかし、これらの情報の中には情報の発信者の思い込みや知識不足により誤ったものも多くありますし、内容が誰にもチェックされていないことにも注意しなくてはならないと思います。
内容に関してはなるべく偏らないように記載するように心がけましたが、情報に誤りや古くなってしまったものもあるかもしれません。また、一部の治療法に関しては実際に体験していないものもあり、その点はご容赦下さい。先にも述べましたように、治療法の選択は医学的判断だけでなく、色々な「背景」を総合的に判断して決めてゆくべきと思います。このページが判断のお役に少しでも立てれば幸いです。
旗の台レディースクリニック 盛本 太郎