last update:Feb.-97
Words by Cole Porter
/Music by Cole Porter
(1930年)
恋、お売りしますわ。食欲をそそる若い恋、お買いにならない?
新鮮でまだ傷んでいない恋、ほんのちょっとしか汚れていない恋、
恋、お売りしますわ。
お買い上げくださるのはどなた?
私のお出しするものを試食してみようという人はどなた?
パラダイスへの旅の代金を払ってみようという方はどなた?
恋、買いませんこと?
詩人さんたちには、子供っぽい愛の歌を、
さえずらせておけばよろしいわ。
私はあの方たちよりずっとずっと、
いろんなタイプの愛を存じてますのよ。
あなたが恋のスリルをお望みなら、恋愛製造工場直送の私をいかが?
古い恋、新しい恋、あらゆるタイプの恋を取り揃えておりますの。
本当の恋以外はね。
恋、お売りしますわ。食欲をそそる若い恋、お売りしますわ。
私の商品を買う気があるんなら、ついてらっしゃい。階段の上へ。
恋、お売りしますわ。
コール・ポーターほど時代に対してシニカルで、それでいてその時代の気分を如実に
反映している作家は他にいないかも知れません。この曲が作られた1930年と言えば
世界恐慌のさ中。つまり、何も売れない時代。今の日本と同じように、インチキセー
ルスマンや詐欺師なんかが横行していた時代かもしれません。そして、そんな不安な
時代には"こんな商品"が、本当によく売れたのかも知れません。
この時の不況は本当に深刻で、まず黒人の工場労働者が解雇され、また、農産物価格
の暴落に苦しむ農民は、洪水、疫病、砂嵐などの自然災害にたたきのめされ、家や土
地を失って流れ者の農場労働者となったそうです。
そして、都会の街頭にはりんご売りがあふれていました。私の手許にある1930年代
のアメリカの写真集にも、ニューヨークの目抜き通りの歩道に、りんご箱がずらりと
並べられている写真が載っています。りんご売りの貧しい身なりに比べ、その前を足
早に通り過ぎる人々の中には、毛皮のコートをまとった人もいて、こうした貧富の二
極分解こそが大恐慌の現実だったということを教えてくれます。
コール・ポーターの「Love For Sale」が、発表当初放送禁止をくらった曲だという
話しは有名ですが、公序良俗に反する歌と考えれば、当然の処分だったのでしょう。
でも、本当にこれを商売にしている人は、こんなセールスマンみたいなセリフは言わ
ないでしょう。この歌詞を訳そうとすると、どうしても、知的で上品で、上流階級的
なものの言い方をする女の人が浮かんで来てしまいます。
宝石を売るような口調で春を売る、それがコール・ポーターの本当の設定だったんじ
ゃないかって、私には思えます。スノッブなものに対してたっぷりと皮肉をこめた歌。
私にはそんな気がしてなりません。
街角には実際”りんご売り”や娼婦が立っていたとしても、この曲は決して彼女たち
を歌った歌ではなく、大不況の中にあってもなお富み続ける階級への憎悪を、ポータ
ーは歌にしたのではないかという気がします。それは恵まれた階層に生まれたポータ
ー自身の境遇への冷たい視線だったのかも知れません。
ピーナッツ売りのようなアニタ・オデイ、マッチ売りの少女のようなビリー・ホリデー、
竿竹売りのような、朗々たるエラ・・・。いろんな「Love For Sale」があります。
面白いのはアーネスティン・アンダーソン。「Cncord to London」で歌っている彼女
の「Love For Sale」は豪快にドライブして、「愛は売るほどありあまっているから、
さあ、愛を語りあいましょ!」と誘っているみたいに聞こえ、これは現代のシンガーに
とっては参考になるかもしれません。
男性ではトニー・ベネットです。「I」を「she」に変え、大声量のゴージャスな歌いっ
ぷりですが、どうも”ぜげん”の歌みたいに聞こえて、なんでわざわざこの歌を歌うの
かちょっと理解に苦しみます。(トニー・ベネット・ファンの方、ごめんなさい。)
「Love For Sale」もう一つの解釈
年代順「ジャズ詩の旅」
このホーム・ページの1930年代の曲
But Not For Me(1930)/
Georgia On My Mind(1930)/
Love For Sale(1930)/
On The Sunny Side Of The Street(1930)/
All Of Me(1931)/
Willow Weep For Me(1932)/
It's Only A Paper Moon(1932)/
As Long As I Live(1934)/
Summertime(1935)/
Caravan(1937)/
My Funny Valentine(1937)/
Over The Rainbow(1938)/
What's New(1939)/
All The Things You Are(1939)/
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