last update: Feb.-97
Words by Johnny Burke
/Music by James(Jimmy) Van Heusen
(1940年)
まだジャズボーカルをはじめる前からこの曲が大好きでした。数あるスタンダードの中で、
メロディーの美しさにおいてはNo.1と言っていいと思います。
歌を始めるようになって、これを大好きなエラ・フィッツジェラルドが歌っていると知った
時には狂喜乱舞したものです。歌詞を耳で聴いて意味を全て理解するほどの英語力はないの
ですが、月夜の晩のダンスパーティーで、水玉模様のドレスを着た可愛い娘に出会って一目
惚れをした歌だ、ということはわかりました。想像力をかきたてるのに充分な設定です。胸
がキュンとなるほどなつかしい感じのするこのメロディー、そして青春の思い出は、ほろ苦
くなくてはなりません。これはきっと、甘酸っぱい初恋の思い出と、生まれて始めて味わっ
た心の痛みをふと思い出した中年男の、ほのぼの、しみじみした歌にちがいない。そう想像
(ほとんど確信)しながら、しかしエラの妙に元気な歌い方に少しひっかかりながら、歌詞
をひもといた私が見たものは・・・。
ダンスパーティーが庭でひらかれていたんだ。誰かがドシンとぶつかって、「あら、ごめんなさい」って言う声が聞こえた。目に飛び込んで来たものは水玉模様と月の光。鼻がツンと上をむいたその娘に僕の目は眩んでしまって、もうたちまち夢中さ。
音楽が始まって、僕はためらっていた。でも、はずむ息を抑えて、思い切って言ったんだ。「一曲踊ってくださいませんか?」って。そしたらおどろいたことに、その娘は僕の腕の中に入ってきて、その時、水玉模様と月の光とツンと上をむいた鼻が、僕のおどおどした腕の中でパチパチッとスパークしたんだ。
僕達が踊りながら漂っていると、他の連中は、「おいおい、どうなるんだ」って目で僕らを見ていた。うん、たしかに彼等の目はそう言っていた。でも、僕にはもう答えがわかっていたんだ。そして多分、答え以上のものが。
つまり、今、僕はライラックの花と笑いに満ちた家にいて、「Ever After」っていう言葉の意味を知っているってことさ。そして、これから「ツンと上を向いた鼻」にキスするたびに、あの「水玉模様と月の光」のことを、きっといつも思い出すんだろうなぁ。
「Ever After」が「それからずっと幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし。」という、
物語のおしまいの決まり文句だとわかった時は、思わず「てやんでぇ」と叫んだものです。
とびきり可愛い娘をものにしたという、単なる「のろけ話し」だったんですから。
歌詞の意味を調べて行くと、時々こういうみごとな「裏切り」に出会い、びっくりを通り超し
て憤然とすることがあります。私が勝手に思い込んだだけなんですが、こういう「勘違い」や
「思い込み」は、英語のわかるアメリカ人にはおこるはずがなく、日本人独特のものでしょう。
つまり、日本人のジャズへの思い入れは、この「思い込み」の上に成り立っている部分がかな
り大きいと思うんですが、だからといってその音楽が偽物かというと絶対にそうじゃないはず
で、歌詞を知らないからむしろ、自由な発想が出来るということ事もあるのじゃないかと思っ
ています。それが許されるから、ジャズは普遍的な音楽なんだと・・。(シンガーはそうも言
っていられないのですが....)
ところで、この「めでたしめでたし」のことを岩手県の遠野地方では、「どんどはれ」と言い
ます。この地方に伝わる民話を今も語りつぐ「語り部」のおばあさんたちが、お話しのおしま
いのところで言う「どんどはれ」という言葉の、何ともいえず暖かい響きを思い出してこの歌
に重ねあわせると、許し難い「裏切り」もちょっとは許せる気がして来ます。歌詞の側から言
うと、この曲は一種のコミックソングであり、馬鹿馬鹿しいほど単純なラブソングでもあり、
そうとわかってみると、また別の魅力が見えてくるような気がしないでもありません。
(註)遠野「語り部」のお話しは、悲しいストーリーのお話しも、最後はどこか救いがあって、
やっぱり「どんどはれ」で終ります。
悲しくても、楽しくても、ああよかったと思わせる、不思議な言葉です。
(以下、97.12.18更新)
以前は、岩手県遠野市に在住の”カッパさん”が、遠野に伝わる昔話を紹介しているページにリ
ンクしてあったのですが、”カッパさん”のホームページが引っ越ししてしまい、行方がわかり
ません。
その”カッパさん”のホームページで紹介されていた「河童」という題の民話のページを、私が
たまたまファイルとして保存してあったので、ここで紹介させていただきます。
”カッパさん”の承諾を得てはおらず、著作権は”カッパさん”にあることをおことわりしてお
きます。
”カッパさん”、このページを見たら、ご連絡ください。
遠野地方の民話「河童」のページヘ
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Take The "A" Train (1941)/
You'd Be So Nice To Come Home To(1942)/
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