Lovers




あちこちでクリスマスの飾り付けが見える街を大石と並んで歩く。
「なんかさ、すっかりクリスマスな感じだよね。まだ1ヶ月くらい先なのにさ」
「華やかでいいんじゃないか?英二は好きだろ、こういうの」
「そーだけど。でも、なんかありがたみが無くなるっていうか」
1日1日と陽が短くなり、まだ18時だというのに辺りはすでに夜の色だ。
暗い空に映えるチカチカ輝くクリスマスイルミネーションは確かに綺麗だけど。
「どんなに好きなものでも毎日食べると飽きるじゃん?こんな早くからクリスマスしてるから、25日になる頃には見慣れちゃってさ。それってもったいなくない?」
「そう言われてみれば確かにそうだな」
金曜の夕方だから街は人通りも多い。
学校や会社帰りで駅に向かう人、これから遊びに行くのか駅から出てくる人。
毎年恒例誕生日パーティを用意しておくから、20時には家に帰って来いって言われてる。
こうしてブラブラ歩いてられるのも後2時間だ。
「それにしても今日は冷えるな」
「なんか今年は急に寒くなった!夏だった次の日にいきなり冬が来た!みたいな」
「いくらなんでもそりゃ大袈裟だろ」
「そんなだったって!暑くてカキ氷食べてた翌日はコタツ入って鍋焼きうどん」
「無い無い」
いつの間にか繁華街を抜けて、イルミネーションも落ち着いてきた。
どこか入って暖かいものでも飲むか?って聞いてくる大石に首を振る。
寒いけど、もうちょっとこうして歩きたい。
肩寄せて、くっついて、目的もなくただブラブラと。
「じゃ、あれにしようか」
大石が自販機を指差す。
「オレ、ココアがいい」
「ココアか。あるかな?」
眩い光を放っている自販機に近寄ると小さな缶のココアがいた。
大石が財布から小銭を出して、オレにココア、自分にはコーヒーを買う。
「暖かい〜、ってか、熱い!」
「それだけ手が冷えてたんだな。やけどするなよ」
「だいじょーぶ。・・・んまーい、あまーい・・・幸せだにゃ・・・」
ココアの甘さに顔も体もとろりと溶けそうだ。
そんなオレを見て大石が笑ってる。
暖かい缶を持ったままオレたちはまた歩き出す。
お店の数も減ってきて、だんだんと家が多くなってくる。
人通りもずいぶん減って、時々擦れ違うくらいになった。
「ね、ね、おーいし」
ちょんちょん、と左手の指先で大石の手をつつくと、その手がするりとオレの手を掴んだ。
オレの手はそのまま大石のコートのポケットへ。
ちょっとくすぐったい気分でオレは笑う。
寒くって着膨れて、暗い夜道だからこそできるこんなこと。
それに比べたら寒さなんて。
「・・・っくしょん!」
「冷えたな。ちょっと外に居過ぎたか。そろそろ英二の家に行こう」
「だいじょぶだっ・・・くしゃん!」
「大丈夫じゃないだろ。風邪引いて熱でも出したら、明日と明後日、遊びに行けなくなるぞ」
「それはヤダ」
「じゃ帰ろう」
ポケットの中で大石の手がぎゅっとオレの手を握る。
わかったと返事をする代わりにオレもぎゅっと握り返した。
くるりと方向転換してオレたちは来た道を戻る。
まだもうちょっと手はポケットの中で。
「おーいし、お誕生日おめでと、って言って」
「お誕生日おめでとう、英二」
「うんうん、おめでたい気がしてきた」
「なんだそりゃ」
大石におめでとうをねだったのは今日これで5回目だ。
やっぱり大石が言ってくれるのが1番嬉しいかな。
1年に1回しか言ってもらえない言葉だし、うん、あと3回くらいは言ってもらおう。
暗い道がだんだん明るくなって、通りにイルミネーションが戻ってくる。
ポケットの中でもう一度ぎゅっと大石の手を握って、それから手を外に出した。
左手だけがまだ暖かい。
大石の手の感触も、まだちゃんと、残っていた。




→happybirthday!                                                                                                             (08・11・28)