夕焼けの中で




地元から駅3つのところにある小さな古ぼけた遊園地。
観覧車とコーヒーカップと、今時回転もしないジェットコースター、子供しか乗れないゴーカート。
こんな所に遊びに来るのは、近所に住む小さな子供連れの家族や、おじいちゃん、おばあちゃんばかり。
オレが誕生日に遊びに行こうと誘ったのはそんな遊園地だ。

お昼前に待ち合わせて、ベンチで持ってきたお弁当を食べた。
わずか2時間足らずで園内の乗り物は制覇してしまった。
ゲームコーナーのやけに重たいライフルでスクリーンに映る的を打ち、モグラを叩きまくって、それにも飽きたら鳩に餌をやる。
なんだかんだ言いつつ、それでも充分満喫して、夕焼けに空がオレンジに染まる頃、もう一度観覧車に乗った。
ゆっくりと空に昇っていく観覧車の窓から、町を眺める。
「本当にここで良かったのか?」
大石が笑いながら、今更な質問をする。
「いーの、いーの。楽しかったし!」
他にも遊園地はいっぱいある。
オレたちはもう社会人で、学生の頃みたいにお小遣いの残りを気にする必要もなくて。
有休だってたくさんあるし、その気になれば短い旅行だって行けるんだけど。
でもさ、今日はここが良かったんだ。
なんでかわかる?大石。
「ここからの景色は昔と全然変わらないな」
「そだね。あん時もいい天気で、キレイな夕焼けだったし」
「そうか、ちょうど10年前の今日だな」
なるほど、って大石が頷く。
そうだよ、大石と初めて誕生日デートしたのがここ。
2人きりで乗る観覧車は心臓がドキドキして、なんだかうまく喋れなかった。
今思い出すと、ちょっと恥ずかしいような、あの頃はオレたちも可愛かったよね、なんて。
「なんか、思いだすと照れ臭いな」
大石が懐かしそうに笑う。
「オレは、ちゅーくらいしたいなーって思ってたのになー」
そう言えば、
「俺もそう思ってたよ。できなかったけどな」
なんて。
10年目にしてあの日の真実が発覚しちゃったり。
「英二」
大石の手がオレの手を取る。
引き寄せられてキス。
あの日できなかったキスを10年経った今、実行した。
顔を見合わせて笑う。
もう昔みたいにドキドキもしないし、緊張で手が汗ばんじゃうこともないけど。
あれから今日まで、ずーっと大石と一緒にいられたのが嬉しい。
できればこれからもずっと。
観覧車が地上に着く。
閉園の音楽が鳴ってる。
「行こうか、英二」
「うん」

また来れたらいいな、それまでここが潰れないといいんだけど。
今度はおじいちゃんになった頃に。






Happy Birthday!                                                                       (11・11・27)