kisskiss & chuchu



明日は日曜日だからそのまんま泊まるっていう英二を連れて帰宅。
お風呂に入って夕飯も食べ終わって、少しだけリビングで母さんや妹の話し相手をしてから部屋へ引き上げてきた。
俺の部屋へ来た時の決まり事のように英二はベッドで大の字になってるから、一応だけど 「もう眠いのか?」 と声をかける。
「いーや、全然」 という思ったとおりの答えが返ってきた。

端っこしか空いてないベッドに腰掛けて英二を見れば、確かに大きな目がパッチリと開いている。
その目が、クルッと俺の方に向けられた。

「おーいし」
「うん?」

呼ぶだけ呼んで、返事をしてもなにも返してこない。
そのままじーっと俺の顔を見てるから、なにか言いたいことでもあるのかと少し英二に顔を寄せると、同じように顔を寄せてきた英二にちゅっとやられた。
とっさのことに驚いてわずかに体を引く。
いつもならここで、英二がしてやったりの顔で笑ってくるところなんだけど、なぜか今日は納得がいかないみたいに眉をしかめている。

「英二?」

どうしたのか聞こうと声をかけると、返事もせずにむくりと起き上がってきて、また顔を寄せてくる。
今度は心の準備もできているから、抱き寄せてまたキスをする。
唇が離れると、そのままの至近距離で英二がじっと俺の顔を見て、今度は首をかしげた。

「英二、・・・」
「いーから。大石は黙ってオレにちゅーされてればいいの」

言いかけたことを強引にさえぎられてまたキスをされる。少し深いキス。
離れて顔を覗き込んだ英二が 「うーん?」 と不思議そうに唸る。
なにをやってるんだか、どうしたいのかが掴めない。

「なにしてるんだ?」
「違うかぁ・・・」

質問には答えないまま、腕組みをしてなにやら考えこみ始めた。
あんまり真剣に考えているから、邪魔をせずに答えが出るのを待ってみる。
「あれかな・・・」 と小さく呟いた英二が、今度は俺の首にするりと腕を巻きつけてきた。

「おーいし」
「はい」
「お疲れさん」
「はぁ?」

なにがお疲れさんなのかわからないまま、またキスをされた。
そしてちょっと離れて、英二がまた首をかしげた。
なんだ?なんなんだ。

「これでもないのかぁ・・・」
「さっきからなにやってるんだ?」
「気にしなくていーんだって。大石は自然にしてて」
「そんなこと言われても」

1回キスをする度に、顔を覗きこまれて、あげくに首をかしげられれば気にならない方がおかしい。

「大石が普通にしててくれないとダメだと思うんだよなぁ」
「どうしたいのか言ってくれれば協力するよ」
「あれは自然な感じだから良かったんだって。大石が意識しちゃだめなんだよ」
「なんの話なんだ?」
「今日、帰る前に部室でさぁ・・・」

帰り際、部室、そしてたぶん、キス。
この3つのキーワードに心当たりがある。
数時間前、いつものように待っていてくれた英二と、いざ帰ろうとして部室のドアに手をかけたところで、「お疲れさん」の言葉と一緒にキスをされた。
ああ、そうか。さっきの「お疲れさん」のセリフは、もしかしたらここから来てるのかもしれない。
でも、ひとつ謎が解けただけで、英二の意図はまだ見えてこない。

「それで?」
「あん時さぁ、大石がすっごくいい顔したんだよ。で、もう1回見たいなーって思ったんだけど」
「いい顔って・・・」
「なんかすっごく嬉しそーな、とろけそーな、幸せーって顔」

顔に血が昇る。いったいどんな顔してたんだ・・・。
そりゃいつだって、英二にキスをされるのは嬉しいんだから、そういう顔になってるとは思うけど。

「もうさ、世界中で1番幸せー!みたいな・・・」
「わかった。わかったからもうやめてくれ」
「ほんと、写真に撮って飾っときたいくらいだったんだけどなー」

もう見れないのかぁ、残念無念、なんて言いながら、英二がまたベッドに転がった。
俺もその横に寝そべって、上から英二の顔を覗き込んだ。

「英二だって幸せそうな顔してるよ」
「オレが?」
「うん」
「好き好きー!って顔してる?」
「うん」

笑い出した英二の顔がとても楽しそうで、あんまり可愛かったから、笑っている唇に軽くキスをした。

「大石も、オレのこと好きーっ!て顔してるよ」
「当然だろ」
「やっぱり?」

そのままじゃれるように何度もキスを交わした。
英二が蕩けそうに甘い顔で笑ってる。
俺もこんな顔してたのかな。確かにこれなら何度も見たくなるかもしれない。
幸せそうな顔してたなんて言われると照れくさいけど、俺も英二のそういう顔を見れるんだからお互い様だ。

「英二、すごくいい顔してるよ」
「大石もね」

顔を見合わせて笑って。
完全に盛り上がってしまうにはまだ時間が早いから、もう少しお互いのいい顔でも眺めていようか。




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