恋人時間




11月28日、今年のオレの誕生日は日曜日だ。
めいっぱい遊ぶ為の計画は、1ヶ月以上前から大石と考えてあった。
土曜の夜に大石んちへ泊まって、日曜は午前中から街へ繰り出して、映画・昼飯・ウインドショッピング。
これぞデートだっ!っていうのがしたい、っていうオレのリクエストに答えてくれた大石プロデュースだ。
予定通りのデートコースを満喫して、後はオレんちのお誕生日パーティって流れになってるんだけど、実はさっきもう1つやってみたいコトを思いついた。
別に誕生日じゃなくてもできるんだけど、なんていうか誕生日っていう口実があったほうがいい気がする。特に大石には。
思いついたら即実行!ってわけで、オレは不思議そうな顔をしてる大石をひっぱって、朝出てきたばかりの大石家に再び舞い戻った。

大石の部屋に入ってまずはベッドへダイブ。
思いっきり両手両足を伸ばして、それから大きく息を吐いた。
夕べも泊まったし、普段からしょっちゅう来てるから、すでにここは半分オレの部屋みたいなもんだ。
遠慮なくくつろいでると、片手に飲み物の乗ったトレイを持って、後から入ってきた大石が笑った。
テーブルにトレイを置いたのを目で確かめてから、ちょいちょいと大石をベッドへ手招きする。

「なぁなぁ、おおいしぃ〜」
「ん?」

さっそく思いつきを実行するべく行動に移す。
呼ばれてベッド脇へ腰を下ろした大石の隣に、オレも起き上がってぴったりくっついて座る。

「あのさ、オレ達ってお付き合いとかしてるわけじゃん?」
「ああ、そうだな」
「だったらさ、たまにはこう、ラブラブ〜なかんじとか、やってみたいと思うだろ?」

な、な?と顔を覗けば、大石は苦笑いのような困ったような顔をしてる。
つまりオレがやってみたいのは、恋人同士にしかできない、二人の世界ってやつだ。
映画やドラマでよく見かける、とろけそうな瞳で見つめ合っちゃったりしてる、アレ。
さすがにオレんちじゃいつ邪魔が入るかわかんないし、まして外でそんなことするわけにもいかないから、ちょっとだけ大石の家に戻ってきたのだ。

「どうしたんだよ、突然」
「なんかさー、オレらって普段ムードもへったくれも無いってかんじじゃん?」
「まぁな・・・」
「だからさ。ここはせっかくオレの誕生日でもあることだし!誕生日、恋人同士、とくれば、甘〜い雰囲気が定番だろうってことで!」
「定番って言われても・・・」

本気で困ってそうな大石の気持ちはよくわかる。
なんたってオレ達は俗に言う『恋人』ってのに辿り着くまでに長い時間がかかった。
それまでの関係はお友達でありダブルスのパートナー。
でもって、それは現在も継続中なのだ。
恋人、なんて新しいカテゴリーが増えたところで、いまさらオレ達の接し方が変わるはずもない。
変わったことといえば、スルことをスルようになったくらいで。

「だめだ、英二、降参。ヒントくれないか」
「・・・クイズじゃないんだからさ。簡単だろー?いちゃいちゃしてりゃいいんだって」
「いちゃいちゃ?うーん。例えばこんな?」

いちゃいちゃを実践しようとした大石がオレの髪を撫でてきた。
おおー、なんかいい感じ?
そんで、ドラマとかだとこのまま甘いセリフとかが出てきて・・・・・・ん?
なんで、ただひたすら撫でてるんだ?

「なんか違くない?」
「そうか?」
「猫とか撫でてるんじゃないんだからさぁ」

それじゃ、と言った大石が、今度はオレをぐっと抱き寄せた。
今度こそ!って思ったのはほんの一瞬。
そのままぎゅうぎゅうと抱きしめてくるから、オレはだんだんおかしくなってきて、ついに大笑いしてしまった。
これは熱い抱擁っていうよりもプロレスごっこに近い。

「あっはっはっは・・・・違う、なんか違うって!」
「そんなこと言われてもな・・・。だいたい英二こそ、そんなに笑ってたら甘い雰囲気とかになるわけないだろ」
「や、そうだけど、そうなんだけど!だって大石がぎゅうぎゅうって・・・だめだ、あっはっはっは・・・」

おかし過ぎて、笑いが止まらない。
腹を抱えて笑い転げてるオレの横で大石が溜息をついてる。
それがまたおかしくて、しまいには涙が出るほど笑った。
どうにか笑いを収めて、もう一度甘い雰囲気にトライするべくへこんだ大石を励ます。

「ごめん、今度はオレも笑わないで協力するからさ、仕切りなおし、な?」
「・・・まだやるのか・・・」
「なんだよー大石。お誕生日様のオレの言うことが聞けないってのかー?」
「お誕生日様って・・・。はいはい、わかりました。・・・それじゃ」

こういうのは?って大石が耳元で囁いたと思ったら、そのままベッドに押し倒された。
間髪入れずに覆いかぶさってきた大石にキスされて、その上服の中に手まで入り込んでくる。

「んあっ・・・、ちょ、待てって!違う違う!」
「いちゃいちゃするんだろ?あってるじゃないか」
「全然違うっつーの!だいたい、ヤってる時間ないじゃん。これからオレんち行くんだから」
「・・・そうだった」

やばかった。大石はこう見えて意外にエロだってこと忘れてた。
そりゃオレだってヤるのが嫌いなわけじゃない、むしろ大歓迎だけど。
でも今日は時間が無い。この後オレんちで誕生パーティがある。
始めちゃえば途中で終われないのが男ってもんで。
遅れて帰って文句言われるくらいならまだしも、ヤってる最中に携帯がうるさく鳴り出したりしたらかなり切ない。

「英二、もう思いつかないよ・・・。ごめんなさい、勘弁してください」
オレにかぶさったまま脱力した大石の、情けなーい声が耳元に響く。
「だーかーら。そんな特別なんかするんじゃなくてさー。普通の他愛のない会話とかでいーんだって」
「それならいつもしてるじゃないか・・・」
「そこに、甘ーい雰囲気を付け足すんだよ」
「難しいこと言うなよ・・・」

かぶさったまんまの大石の頭をを両手でつかんで、えいっと持ち上げれば、声と同じお手上げで困りきった顔が見えた。
おかしくて、つい笑っちゃったけど、こういう情けなーい大石の顔も好きなんだよね。
鼻先にちゅっと軽くキスしてやると、ほっとしたように大石が笑う。

それにしても、そんなに難問だったかなぁ。
ま、しょうがないか。オレ達はまだ恋人スキルが低いってことだ。
これから一緒にスキル上げすればいいよね、と大石の頬をペチペチ叩いてやる。

「そんじゃ大石はこれ、宿題ね。期限は来年のオレの誕生日」
「宿題?」
「そ。来年のオレの誕生日には、甘〜い二人の世界を作り出せるよう、勉強しとくこと」
「わかった。ちゃんと来年は英二の期待に答えられるよう、努力します」
「うん。楽しみにしてんね」

突発で思いついたコトだったけど、けっこう楽しかった。
おまけに来年の誕生日の楽しみもできたし。
来年はオレ達も、もうちょっとレベルアップしてラブラブな恋人時間を過ごせる・・・かなぁ?




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