メリークリスマス!



ホントにちょっとした思いつきっていうか、出来心っていうか。
や、出来心ってのは違うか。
まぁ、そんなようなもんだったんだ。

菊丸家のxmasホームパーティは、各自がちょっとしたものを用意して家族みんなにプレゼントするって慣わしがある。
プレゼントって言っても,大げさなもんじゃない。アメ1個ずつとかでもぜんぜんかまわない。
しかし、ここが腕の見せ所って言うか、いかに少ない予算で大人数分のプレゼントを、しかもセンスよく選ぶか。最近は兄弟でこのあたりを張り合ってる。
去年のプレゼントで一番よかったのは2番目のねーちゃんの手作りカップケーキ・クリスマス仕様だ。
今年こそはオレが一番センスよく、かつ安く、やっぱ勝負事はなんでも勝ちにいきたいと、24日の部活が終わってから駅前のあちこちの店をそりゃ丹念に見て回って、その先でうっかりみつけてしまった。

透明ブルーの細い棒状プラスチック、中に小さな赤い魚が一匹。
まるで水槽から魚ごと水を切り取って固めたみたいな携帯ストラップ。


頭の中にあいつの顔が浮かぶ。


クリスマスプレゼントかぁ、と考えかけて大きく頭を振った。
いや待て。そんなプレゼントあげたりとか、去年もしてないし。
確かにオレ達は仲いいし、去年からダブルス・パートナーだし、でもだからって。
クリスマスパーティでもなけりゃ友達にプレゼントなんてやらないだろ、普通。


ああ、でも。


手にしたストラップをどうしても棚に戻せない。
だって、あげたいんだ。そう、どうしても。
きっと嬉しそうに笑う。その顔がみたいって思っちゃったんだ。
あー、もうダメだ。
こうなったら実行しないと、後々までずっとひっかかりが残って気持ち悪いんだ。

・・・というわけで、突発出来心だったんだ。うん。

レジのお姉さんがやけにゴージャスにラッピングしてくれたストラップを手にして、オレは頭を悩ませる。
問題は、これをどうするか、だ。
どうするかって、あげるしかないんだけど、でもさ、でもよ?
なんていえばいいわけ?
クリスマスプレゼントだよ〜ん、って?
いきなりそんなもん貰ったら、ビックリするじゃん、っていうか不気味だろ。
誕生日とかならなー、プレゼントあげるってのも自然だけど。
クリスマスなんだよな・・・。
クリスマスにプレゼント贈るなんて家族か恋人同士くらいなもんで・・・
恋人!?ええっ!?
あわわ。ちょっとドキドキしちゃったじゃん。なに考えてんだよ、オレ。
落ち着け。ほい、深呼吸。スーハー。


「英二」
「うぁ!な、なに!?」
「な・・なに驚いてるんだよ」

頭の中でプレゼントをどう渡すかグルグルしてるうちに25日。クリスマス当日。
青学テニス部は当然のごとく冬休み中も部活動がある。
こっそり例の物をラケットバックに忍ばせてきたものの。
どうしたもんかと相も変わらずグルグルしてたら、そのグルグルの元が目の前に立ってんだから、そりゃ驚くってもんで。

「や、別に?急に声かけてきたからビックリしただけだよ」
「ならいいんだけど。あー、英二、あのな・・・」
「ん?」

自分から声かけてきたくせに、あーとかうーとかで話が全然進まない。
なにやってんだ、大石は。なにが言いたいんだ?
しゃーない、オレのグルグルはいったん置いといて、先に大石の話を聞いてやろう。

「なになに、どしたの?なんかあった?」
「あー、いや別にたいしたことじゃないんだけど」
「うん。で、なに?」
「つまり、その・・・」
「うん」
「なんていうか・・・」
「うん」
「あー・・・」
「だーっ!!じれったい!さっさと言えーっ!」
「うわっ」

歯切れの悪い大石にシビレを切らして飛びかかった。お約束だからそのままヘッドロック。
「わかった、言うから!」 ってギブアップしてきたから、とりあえず開放。
またあーうー言ったら次は卍固めだ。

いてて、とか言いながら大石がロッカーの扉を開ける。
待て。話はどうした?
これは卍固め決定か?・・・・と思いきや。

「これ、貰ってくれないかな」
大石に渡された青い小さな紙袋。
思わず顔を見上げれば、視線を外した大石の顔が少し赤い。
これって、もしやのまさか。

ガサガサいわせながら袋をあけると、顔を出したのは。
「うわ、ミニ大五郎ストラップだ。おまけにこいつ、ラケット持ってる!」
ちっこい熊がラケットを抱えてる姿が思いっきりオレのツボにはまった。
サイコー可愛い!すっげー可愛い!

さっそく携帯を取り出して、ミニ大五郎ストラップを付けた。
揺らしてみたりかざしてみたりと飽きず眺めてひとしきり喜んだオレは、やっとのことで大石を放置してたと気づく。
しまった、まだお礼も言ってない・・・と大石を見れば。
うわ。なんて顔してるんだこいつ。
これ以上ないって程、幸せそうにニコニコしやがって。オレのが恥ずかしいじゃん!

「それ、昨日みつけたんだけど、どうしても英二にあげたくなって」
なんだか嬉しそうに話してる大石に、オレの顔の方が熱くなる。
なんだよ、なんだよ、そんなの、オレだって・・・
あ。そうだ。オレも持ってんじゃん!

ラケットバックに手を突っ込んでラッピングされた包みを取り出し、大石の手にベシッ!と乗せた。
「どーだ。オレだって大石にあげたいって思ったんだからな」

へへ、大石のやつ、驚いてる。
なんだよ、開ける前からそんな嬉しそうにしてどうするよ。
そうそう、早く開けて、中見てよ。
似合いそうだって思ったんだ。どうしてもあげたくて買っちゃったんだ。
喜んで。嬉しそうに笑ってよ、ねぇ。

祈るような気持ちで食い入るように大石をみた。
赤い魚の泳ぐストラップ。手にした大石の目が驚きに見開いて、ぱっと輝いた。
「すごい、本物の水に魚がいるみたいだ」
目の近くまで持ってきてみたり、光にすかしてみたり。
なんだか大石が宝物を持ったちっちゃい子供みたいに見えてかわいいなー、なんて考えちゃってるオレは、きっと顔面総崩れ。さっきの大石みたいに恥ずかしい顔してるに違いない。

あ、そっか。大石もグルグルしてたんだ。それであーうーしてたんだよ。
なーんだ、オレと一緒じゃん。プレゼントまでお互いストラップでさ。
くくく。なんかすっげーおかしい。面白すぎ、オレ達って。
笑い出したオレの横で大石も笑ってる。
「オレ達ってすごいよね。最強ペアじゃん?」
「本当にそうだな」

二人で顔を見合わせてまた笑って。
やっぱここは例のセリフを言っとかないと、って口を開きかけると大石もなんか言おうとしてる。
うーん、以心伝心?同じセリフ言っちゃう?

「「メリー・・・」」

やっぱ、オレ達最強!ゲラゲラ笑いながら一緒にせーの、で

「「クリスマス!!」」



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