海に咲く夢・番外編 / 木手 1
その島の異様な光景は近付くにつれてはっきりと見えるようになった。
島の8割が白い砂で覆われ、残る2割の緑地に建物がひしめき合って建ち並んでいる。
地盤のしっかりした地面といえば緑地部分しかなく、だがそれだけでは地面が足りず、木の上にまで家が作られていた。
人の住む場所で全ての緑地を使い果たしている為、野菜等の農作物は砂漠に鉢を置いて植えている。
砂地には半ば砂に埋もれて傾き半壊した家が数多く残り、一部の人はまだそこに住んでいるようだった。
「・・・想像以上だな」
「近年では島に見切りをつけて他に移る者も多いようだ」
上陸できる場所を探して島を半周しただけでも、この島がかなりの窮地に立っていることは見て取れた。
島は平野で大きな山も無く広さがあり、かつてはもっと多くの人が住んでいたと思える。
今は当時の3割いるかどうか。
「大石、だからといって彼らのしたことに同情の余地はないぞ」
「・・・わかってる」
柳に釘を刺され大石が苦笑いする。
確かに自分の住む所が無くなったからと言って、よその国を滅ぼした言い訳にはならない。
だが、この惨状が彼らに非道な行為を決心させたのは事実だ。
緑地には船をつけるスペースが無く、一段高くなっている砂漠側の崖に船をつけ大石と柳、仁王が上陸した。
島からも見慣れない船が近付くのは見えていたのだろう、上陸してすぐに数人の島民が寄って来た。
中でも一番年長の男が大石達の前に歩み寄る。
「この島になんの用だね?」
「木手永四郎という男に会いにきたのですが」
大石が木手の名前を口にすると、集まった者達に動揺が走った。
「・・・確かに昔はそう言う者がいたが、今はここにはいない」
年長の男が大石を見据えるようにして言う。
嘘だということはすぐにわかったが、集まった者達の雰囲気が剣呑なものを漂わせた為、今は追及せず話を合わせた方がよさそうだった。
「どこへ行ったか知りませんか?」
「いや、聞いて無い。ところで君達は何者かね?」
「・・・俺達は、」
「俺達は呪術者の島から来ました。この島が呪いの被害にあっていることが分かり、以前会ったこの島出身だという木手に調査協力を依頼しようと」
大石の言葉を遮って柳が話す。
呪いのことを持ち出すと島民の態度が一変した。
「・・・呪いだと?」
「こちらの島は10年ほど前から急激な砂漠化が進んでいると聞いています。その原因が呪いだと判明しました」
島民がどよめいた。
「俺達はその呪いを解く為の調査を行いに呪術者の島から派遣されたのです」
畳み掛けるように続けた柳の言葉に、島民が隣り合う者同士小声でひそひそと話始めた。
時折大石達に向ける視線には不安と期待が入り混じる。
大石の前に立つ年長の男だけはまだ警戒の色を浮かべて考え込んでいた。
島の窮状を救える可能性が不信感に打ち勝ったわずかな隙をその表情から読み取った柳が、絶妙なタイミングで要求を切り出す。
「数日間の滞在を許可してもらえませんか」
「・・・それで砂漠化が止まるのかね?」
「原因さえ突き止められれば呪いの解除は可能です」
勢い込まず、静かに返した柳に男が頷いた。
「いいだろう。滞在を許可しよう。ただしご覧の有様だから宿泊用の場所は提供できないが」
「俺達は船で寝泊まりできるし、食料も充分あるから心配いらん」
加勢するように仁王が答える。
この島では海産物以外の食料に困窮しているであろうことは島民に聞くまでも無く、そこを突いた仁王のフォローは効を奏した。
自分達の生活に影響が及ばないと知った島民は安堵し、態度も好意的なものに変わる。
「ありがとうございます」
にこやかに一礼した柳は準備の為と称して、一度船に戻ることを年長の男に告げ、大石達といったん船に引き上げた。
「やるのぅ、参謀」
「多少の加工をしただけで嘘は言っていないぞ」
からかうように笑う仁王をいなして柳が大石に向き直る。
「木手がこの島にいるのは間違いないが、そう簡単には会えないようだ。許可された滞在期間中に探し出す作戦を立てる必要があるな」
「なぜ木手がいないなんて嘘をつくんだ?」
「東国の追っ手でも来たんじゃろ」
「あぁ・・・なるほどな」
西国が出した条件に木手達の処分があった手前、東国は躍起になって木手達を追っているはずだ。
「そう長くは滞在できない。そこで作戦だが・・・」
柳の提案に仁王と大石が意見を出し合い、ほぼ作戦が決定する。
部屋で待機していた英二と慈郎が呼ばれたのはその直後だった。
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