ツイノベ -キャラ指定無し- 




■「深夜のホテル」「キスをする」「吐息」

深夜のホテルで1人毛布に包まる。今にも達しそうな体を追い詰めるべく指を絡めれば、唇からは熱い吐息が漏れた。一瞬の快感と放心。イくことは1人でもできるが、キスをするのは1人では無理だ。あの人とキスがしたい。寂しがる唇を指でなぞれば、溢れる涙がこめかみを伝った。


■「昼の部屋」「恋する」「ゲーム」

暖房の良く効いた真昼の部屋で、俺たちはくだらないゲームに興じる。もしも2人が恋人だったら。ただの暇つぶしでしかない、ごっこ遊びだ。寄り添い、甘い台詞を唇に乗せ、見つめ合う。嘘と偽ってしか口にできないこの想い、恋するとはなんてみじめで滑稽なのか。


■「深夜の遊園地」「約束を破る」「メール」

真っ暗な深夜の遊園地にぽつんと佇む。肝試しをしようと誘ったくせに、待ち合わせのベンチに彼の姿は無い。約束はいつも当たり前のように破られる。もう慣れた、そう嘯いて出口へ向かった。響くメロディ、メールの着信。『もう着くから待ってて』安堵と怒りで顔が歪む。でも絶対に泣き顔は見せない。


■「朝の図書室」「キスをする」「時計」

授業が始まる前の僅かな時間、彼は急ぎ足でやってくる。貸出期限ぎりぎりの本を返し、時計を見上げ、またすぐに去って行った。私は彼の為にだけ、朝の図書室を開けている。机の上には返却された本。彼が触れたと思えばただの本ですら愛おしく、私はそっと表紙にキスをする。


■「夕方の図書室」「愛される」「噂」

放課後の図書室は、とある一角だけが場違いに騒々しい。彼女たちは人目も憚らず、見目良い男子の噂話に興じている。1人だけ知った顔があった。自称・君の彼女だ。彼女は友人たちに、いかに自分が彼に愛されているかを力説する。僕は本を閉じて席を立つ。夢を見られるだけ彼女は幸せだ。


■「朝の部屋」「振られる」「手品」

朝っぱらやけにハイテンションな男は、手品を見せるといって部屋に来た。叩き起こされた俺は、布団に潜ったまま不機嫌に片目だけ開ける。ワン・ツー・スリー!奴の手が空中で振られる。次の瞬間、その手に現れたのは1本の赤い薔薇。ハッピーバースデー!ははは、それが言いたかったのか。


■「昼の屋上」「思い出す」「クッキー」

屋上でぼんやりと空を見上げている。ふわふわと浮く雲はクリームパンとおにぎりに似てた。続く小さな雲はいびつなハート型。昔貰った、不味い上に固かったクッキーを思い出す。一生懸命俺の為に作ったんだろうと思ったから文句も言わず食ったが、他の奴も貰ってたって聞いた時は笑った。


■「朝の畳の上」「見上げる」「眼鏡」

酒盛り、そして寝落ちが丸わかりの悲惨な部屋に、朝日が差し込む。すぐ隣で畳に雑魚寝している男は、相当酔っていたのか眼鏡をかけたままだ。外してテーブルの上に置いてやっても起きる気配は無い。寝汚い姿に悪戯心が沸き、そっと唇を寄せる。軽く触れて顔を離すと、笑う瞳が見上げていた。


■「深夜のホテル」「選ぶ」「ラーメン」

終電を逃し、タクシーで帰るより安上がりだと連れだって深夜のホテルに入る。正直、期待が高まるシチュエーションだ。それなのに。「とんこつ、いや、味噌も捨てがたい・・・」真剣な顔でメニューのラーメンを選ぶお前に溜息が出る。頼むから少しは俺を意識してくれないか。


■「深夜の廃墟」「逃げる」「犬」

昔は巨大な迷路だったという庭園は、年月を経てすっかり複雑怪奇な廃墟と化していた。面白がる君は子犬のようにはしゃぎ、止める僕の手をすり抜け逃げて行く。声を頼りに姿の見えなくなった君を追い、月灯りを頼りに先に進む。どれくらい歩いたのか足は棒のよう、そしてもう君の声すら聞こえない。


■「昼の畳の上」「密会する」「手袋」

茶室の畳の上に、見覚えのある黒い皮手袋が片方だけ落ちていた。ああ、なるほど。いつの間にか姿を消したと思っていたら、こんなところで密会していたか。人目を憚る恋路を歩む彼らが、睦まじく過ごせる場所は少ない。手袋を拾い上げる。素知らぬ顔で奴の鞄にでも入れておいてやろう。


■「夜の庭」「開く」「人形」

庭に黒い扉がある。開くとたちまち辺りは深い夜の闇に包まれた。手探りで進むと、木の椅子に掛けた白い姿がぼんやりと浮かぶ。歩み寄り、顔を覗き込む。陶器でできた人形だ。真っ直ぐに前を向き、静かな頬笑みを湛える、僕の想い人。ひんやりと冷たい頬に触れる。君なら僕のものにできるだろうか。


■「夜の橋」「恋する」「誕生日」

夜の帳が落ちた道をゆっくり歩く。白い息を吐きながら、辿りついた橋の上で流れる川を眺めた。ちょうど2ヵ月前、この橋をあの人と渡った。傍にいるだけで浮き立つ気持ちに、恋をしているのだと自覚した。あの日が恋心の誕生日だ。生まれたばかりの淡い気持ちは、今もまだ育ち続けている。


■「深夜の遊歩道」「笑い合う」「星座」

深夜の遊歩道をコンビニ袋揺らして2人で歩く。雑誌の星占いが面白くて、ついでに読んでやろうと星座を聞いた。答えは蠍座。俺は思わず吹き出す。大変だ、射手座の俺とは相性最悪だと教えてやると、最悪からスタートすれば後は良くなっていくだけだ、と笑う。なんだか妙に納得した。


■「夕方のホテル」「髪を撫でる」「噂」

嫌だと言ってるのに、わざとこのホテルにまつわる怖い噂なんか聞かせる。夕陽で赤く染まる部屋を「惨劇の後みたいだね」なんて楽しそうに笑って。きっとこいつはサディストだ。そのくせ髪を撫でる手は優しくて、悔しいけど縋ってしまう。いつかこの手がナイフを握っても、僕は逃げたりしないんだろう。


■「深夜の水族館」「共有する」「氷」

真夜中に宿泊先のホテルを抜け出して、水族館裏で逢引。優等生のお前が誘いに乗るかどうかは賭けだったけれど。憮然とした顔でやってきたお前に笑う。修学旅行のいい思い出になるぞと言ってやると、冷やかな氷の眼差しで一瞥される。これで俺たちは小さな秘密を共有した。いわば共犯だ。


■「早朝の密室」「溺れる」「蜜」

曜日の感覚も時間の感覚も無い。いつからここにいるのかさえわからない。天窓から入る白い光に、かろうじて夜が明けていることを感じる。ここは貴方と私だけの密室。誰も踏み入ることのできない世界で、心行くまで愛に溺れる。今が私の人生で一番幸せな蜜月。


■「夕方の病院」「告白する」「水」

手続を終え病院の玄関を出る。綺麗な茜の空を見送りに来てくれた主治医と眺めた。実は、と彼が切り出す。貴方の病に治療法はありませんでした。だから僕は、毎朝祈りを込めた水を処方していたのです、と。私は告白に驚きはしなかった。なぜなら、先生の薬を飲む度にその祈りの声が聞こえていたからだ。


■「夜の密室」「お仕置きをする」「猫」

ただの言葉遊びとわかっていても、猫撫で声でお仕置きをしてあげよう等と囁かれると背筋に震えが走る。ここは密室で、時刻は夜で。助けを求めても、きっと誰にも聞こえない。頭の中に残酷で淫らな行為が次々と浮かぶ。触れることすらしない彼の指を恐れて、私は甘い吐息を洩らす。


■「夕方の駅」「さよならを言う」「マフラー」

いつの間にかマフラーが変わっていた。私のあげたマフラーは捨てられたんだろう。わかってる、もう時間の問題だ。私の運命もマフラーと同じ。いつもの帰り道、混雑する夕方の駅。それじゃと手を振り、改札に吸い込まれる背に心の中でさよならを言う。遠くない未来の別れを平静にやり過ごす為の準備だ。


■「夜の図書室」「開く」「瞳」

僕の眠り姫は図書室の奥、本に囲まれて夢の中。君が旅するのは童話の森か、それとも生きる意味を問う哲学の荒野だろうか。月灯りの下で安らかな笑みを湛えるその唇に、たった1度キスを落とせばその瞳が開くことを知っているけれど。眠る姿の愛らしさに、つい夢の中から連れ出すことを躊躇してしまう。


■「朝の車内」「さめる」「メール」

混み合った朝の電車、暇潰しに携帯でニュースを見ていると、メール着信の通知が割り込んだ。見なくても誰からなのか、内容はなんなのかわかっている。愛してる。愛してる?日に何度聞けば気が済むのか、どうして確かめないと不安なのか。聞かれる度興が醒めるが、きっとこれも俺のせいなんだろう。


■「昼の遊歩道」「手を繋ぐ」「本」

天気が良いので文庫本片手に散歩がてら外にでる。遊歩道で空いているベンチに座り、しばし辺りを眺めた。子供が二人、手を繋いで歩いている。楽しそうな様にこちらもつい笑顔になった。俺たちにもあんな頃があったのだ。何も思い煩うことなくただ笑い合っていられた頃が。


■「昼の部屋」「探す」「魔法」

外は桜も満開、春爛漫という午後に、君は出掛けようともせず、浮かない顔でテーブルに肘を付いている。そして小さな溜め息。どうした?なんて聞いても意地っ張りな君は教えてくれないから、僕は君が一発で笑顔になる、そんな魔法の言葉を探す。


■「深夜の屋上」「嫉妬する」「指輪」

俺達の秘密基地は管理の甘いマンションの屋上。いつもお前は星を見ながら寝転んでいて、コンビニで買った菓子や飲み物を持ち込む俺と、くだらない話をして笑った。今日は菓子の代わりに安物の指輪を渡す。笑いながら薬指に填めたお前が、愛おしそうに細い銀に口づける。なんだか指輪に嫉妬しそうだよ。


■「夜のコンビニ」「約束する」「手袋」

飲み物を買いにコンビニまで行く。春とはいえ夜は冷えて、思わずポケットに手を入れると指先に何かが触れた。滑らかな手触りのそれは皮の手袋だ。寒そうに見えると押しつけるように貸してくれた奴の顔を思い出す。すぐ返そうと思ったがなかなか会う機会が無かった。これを口実に約束を取り付けるか。


■「早朝のカウンター」「出会う」「桜」

出勤前、まだ時間があるので目に付いた喫茶店に入った。カウンターに座りブレンドを注文すると、コーヒーを淹れていた店員が振り返る。白磁の肌と絹糸の髪という比喩が実在するのだと初めて知った。出会い頭に恋に落ちた俺は、勧められるまま桜ケーキまで注文してしまう。


■「夕方の路地裏」「貪る」「チョコレート」

ひと気の無い路地裏に引っ張り込み、その唇を貪る。やけに甘いと感じるのは、さっき買い食いしていたチョコエクレアのせいだろう。家に帰るまで待てないのかと抗議されたので、お前のエクレアと一緒だと返してやった。


■「夜の廃ビル」「浮気する」「ゲーム」

深夜の逢引は立ち入り禁止の古いビル。窓から入る街灯の灯りは、広い部屋の中央まで届かない。後ろめたい気まずさが浮かぶ顔など見たくなくて、手を引いて暗がりへと誘う。誰が本気で、どれが浮気か、そんなことは考えなくていい。こんなものはただのゲームだ。明日には全て忘れてしまえばいい。


■「夕方の廊下」「約束を破る」「風」

誰もいない校舎、果ての見えない廊下の奥から冷えた風が流れ込む。僅かに混じるのは異界の腐臭。今日は念願のデートだっていうのに。あまりにタイミングが悪過ぎて溜息も出ない。廊下の奥に無数の影が蠢く。早く済ませて待ち合わせ場所へ行こう。約束を破ったりしたら二度と口もきいてもらえないぞ。


■「深夜の廃ビル」「耽る」「目眩」

誰も踏み入ることを許さない廃ビルはお前の塒(ねぐら)。入口の番人に小銭を渡して俺は中に忍び込む。ひとり秘密の楽しみに耽るお前は息を呑むほど艶めかしい。唇から洩れる微かな喘ぎが空気の色まで変えていく。眩暈がする光景、下賤な俺は覗き見るだけで魂を吸い尽くされる。


■「深夜の映画館」「見つめる」「月」

レイトショーが終わって映画館を出ると、空には大きな満月があった。どちらともなく足を止め、2人で月を眺める。言葉を交わすでもなく、ただ並んでぼんやりと。満月なんて珍しいもんでもない、月なんて天気が良ければいつだって空にある。それなのに、今日はいつもより、大きく綺麗に見えて。


■「夕方のコンビニ」「水」

喉が渇いた気がしてコンビニに立ち寄る。ミネラルウオーターを1つ取りレジに行こうとしたが、いざ手にしてみるとそれほど飲みたくもなくなった。今度は空腹を感じた気がして弁当を選ぶ。レジで金を払い店を出たが、途端に水も弁当もどうでもよくなった。そうか、飢えてるのは喉でも腹でもない、心だ。


■「夜の廃ビル」「ビール」

コンビニの袋をガサガサいわせ、いつもの廃ビルに入る。裏口から猫の額程の庭に出ると、壊れたコンクリを背に月見酒と洒落込む奴がいた。挨拶代わりに片手を上げると、手にしていたビールを軽く挙げて答えてくる。背中合わせに腰を下し、袋から酒を取り出す。ビルの谷間に浮かぶ小さな月に乾杯だ。


■「昼の畳の上」「抱きしめる」「枕」

「好きだよ」抱き締め、安心させるように背を撫でる。「いいか?」甘く囁く。了承を得た後、組み敷いて見つめ、そのままキス。いいぞ、この調子だ。がっついては駄目だ、あくまで触れる手は優しく、愛おしむように。今はまだ枕が相手だけど、練習の成果を発揮出来る日が必ずやってくると信じてる。


■「昼のカフェ」「裏切る」「氷」

BGMと話し声でざわつく店内、空いてる席を見つけ腰を下す。無言で手元に視線を落とす様に心で溜息をついた。お前から誘ったんだろうが。深刻な雰囲気を壊したくて、わざと音を立ててドリンクを吸い上げる。俯いたままの口から発せられたのは予想外の告白。思わず取り落としたコップから氷が転がる。


■「深夜の床の上」「密会する」「制服」

疲れた体を引き摺るようにして部屋まで辿り着く。もう着替えるのすら億劫で、制服のまま床に寝転んだ。ぼんやりと天井を見上げる。自分で望んだはずなのに後悔や罪悪感ばかり募る。目を閉じれば浮かぶ、柔らかく微笑む顔。こんな人目を憚る恋でもお前は幸せだと言えるんだろうか。


■「早朝の図書館」「愛される」「手錠」

朝っぱらから拉致られて図書館へ。目の前に参考書だ問題集だと積まれてうんざりするが、それはまだいい。問題は左腕にかけられた手錠だ。おもちゃのくせしてやけに頑丈で力づくでも外れやしない。反対側は奴の右腕、邪魔だ動き辛いと文句を言っても聞き入れない。なんでこいつはこう束縛したがるんだ。


■「夜のベランダ」「逃げる」「氷」

いい月だとベランダの桟に頬杖をつき空を見上げている。飽きもせず眺めている姿は子供のようで可愛いが、さすがに少し寒い。もう部屋に戻ろうと手を伸ばせばするりと避けられて。逃げる指先を捕まえれば氷の冷たさ。未練がましく月を追うお前を部屋に押込み、これは俺のものだと月を睨む。


■お題無し

ふとした瞬間に人待ち顔で窓の外を見る。そんな癖があることは、恐らく本人も気付いていないのだろう。酷く切ない瞳をして無意識に想い人を探す。こんな所にいるはずもないのに。心に今も住まう相手に成り代わることができるはずもなく、それなら自分にできるのは何も見なかったふりをするだけだ。


■あいしてる/はしたないくちびる/おやすみ、可愛い人。

・おはよう、いただきます、さようなら。そんな、誰にでもする挨拶と同等の軽さ。お前が愛してると口にする度、俺はその言葉の意味を考えてしまう。特別な言葉だと、本当に大事な時だけに使う言葉だと思うのは勘違いか?八百屋の店先で投げ売りしてそうな愛なんて、ありがたくもなんともない。

・猫が甘えるように擦り寄って、流し見た目が誘う。さて、ここからが我慢大会だ。どうせなら可愛い声でヤりたいって言わせたい。 俺の欲しい言葉は決して言わない癖に、蠱惑的に唇を舐めてみせる。 恥ずかしがり屋のくせにはしたないお前がたまらない。

・さらさらと指の隙間から零れる髪を何度も掬い上げる。きつい光を放つ瞳が瞼に隠れるだけで、歳相応の幼い顔になる。昼間の凶暴さが嘘のように、安らかな寝息を立てて無防備に眠る姿はまさに天使だ。起きてる時の悪魔なお前も魅力的だけれど、今は天使の寝顔を堪能しよう。


■ただ傍に居てくれたらそれだけで良かった

・支えてほしいとか護ってほしいとか。そんなことはひとつも望んじゃいなかったよ。陽の下で、馬鹿やって、いつもみたいに笑ってくれてれば、それで良かった。そんなお前を護る為に俺はいくらでも強くなれたから。ただそこにいてさえくれれば、それで勝手に俺は救われてたから。


■あまい蜜のような

・普段は硬質な光を放っている瞳が、ふいに艶を帯びる。それは滴る蜜のように俺を誘う。二人きりの夜に開く唇は、庭の沈丁花よりも甘やかに香る。灯りを落とした部屋で、月よりも白い肌を晒して、囁く声はどこまでも淫らに甘く。


■もっと俺に構えよ/嫉妬なんて俺らしくない

・困った顔で俺を見る。どうして欲しいなんて、そんなことは教えてやらない。わからなければ考えるだろ?答えが出るまで俺のことで頭が一杯になるだろ?他のことなんて考えなる隙間もないほど、俺のこと気にしてればいいんだよ。持ってるもの全部投げ打って、お前は俺のことだけ構ってればいいんだ。

・お前が大事にしてるのはひとつじゃない。欲張りなお前はその腕に山ほど大切なものを抱えるんだ。どれひとつとして零れないように必死になって護る。大切なものはそれで一括り、優劣なんてない。俺も所詮、その中のひとつだ。俺の手にはお前しかないのに、ずいぶん不公平な話だよな。


■大事にしたいんだ

・掴んでいた腕を力任せに引いて寝台へ放る。重さに軋む音はしても、布団が緩衝材になるはずだ。案の定すぐに起き上がろうとするのを許さず、上に乗り上げて肩を抑え込む。睨む瞳を同じ強さで見返しながら、苦い気持ちで舌打ちする。優しく甘やかしてやりたいのに、なぜそんな簡単なことが叶わない。


■二人でいこうね/ごめん、欲情した/寂しいときに限って居ない

・子供の足で行けるとこなんて限られてる。低い目線で見える世界なんて、それは狭くて。遠くに見える青い山々の向こうは、どんな景色が広がってるんだろう。なぁ、いつか、大人になったら。隣に立つ、俺と同じ小さな手をきゅっと握る。あの山の向こうへ行こう。二人でいろんなものを見よう。

・これはマズイ、わかってるのに止まらない。伸びた襟足から透ける項に鼓動が早まる。捲れた裾から見え隠れする素足に口づけて、襟元から除く鎖骨に齧り付きたい。駄目だ駄目だと振り払っても、頭には俺に蹂躙されるお前が浮かぶ。体に籠る熱を持て余す。まさかお前相手にこんなことになるなんて。

・初夏の風に混じる、青い草の匂いが記憶を刺激する。山と川と緑しかないあの場所で、笑い、遊び、学んだあの眩しい季節。もう思い出の中にしか無いのに、それすら時と共に薄らいでいくことが酷く寂しくて切なくて。せめてあの季節を共に過ごしたお前が傍に居てくれれば、少しは慰められるのに。


■急がなくていいよ

警戒心の強い野良猫を馴らすのに似てる。害の無い顔をしてみせて、根気よく構う。俺を見ても逃げずに寄ってきて、餌を強請るようになればしめたもの。やがて触っても嫌がらなくなり、甘えた声で鳴くようになるんだ。この腕に抱けるようになるまであと少し、慌てずゆっくり落としてやるよ。


■もっと愛して、奥まで愛して/ずっと隣で笑っていて欲しい/なぁ、……何でもない。

・俺は欲張りだ。溺れるほど愛してもらっても、窒息しそうなほど拘束されてもまだ足りない。体も心も奥の奥まで、余すところなく全部お前で埋めて欲しい。自分なのかお前なのか、全てが溶けて、境界が曖昧になるくらい、もっと愛して。

・そうそう、そんなふうにね。難しいことなんて考えないで笑っていればいいんだよ。そりゃ人生色々あるよ、楽しいことばかりじゃないってのもわかるよ。でもさ、辛くたって苦しくたって、いつかまたちゃんと笑える日ってのは来るんだよ。だからさ、笑っててよ。ずっと、俺の隣でさ。

・言いかけて、途中で止める。ちょっとした思いつきの、なんでもないことだ。続きを待つ顔のお前に、なんでもない、そう言ってやれば終わり。なのにやっぱり聞いてみたくて、でも言いたくなくて、黙ったまま逡巡する。お前の方で察して言ってくれないかな、って思うのはやっぱり勝手過ぎるかな。


■愛し方なんて分からない

欲しければこの手に掴んで離さない。力加減も知らず握り潰しそうになって、あがる苦痛の声は聞こえないふりをする。お前の意思なんか気にかけない、振り回すだけ振り回して、壊しそうになって怖くて捨てた。子供だったなんて言い訳にしかならないけど、今ならもう少しましな愛し方もできたのに。


■朝になった、夢じゃなかった

・夢かもしれない。夢でかまわない。夏の夜の暑さも凌駕する熱に浮かされて、手加減も遠慮もせずに貪った。縋る手に募るどうしようもないほどの愛おしさ、それを伝えたくて骨が軋むほどに掻き抱く。白い朝の光がやってきても、隣で眠るお前がいるうちは俺の夢は続いている。


■本気にしてもいい?

言うことは単純明快、でもその心は捉えどころがない。呆れるほど明け透けに、色気も糞もない口説き文句を並べてくるけれど、冗談だろうと疑えばあっさり笑い飛ばす。もし俺が本気にしたら、それこそ途端に逃げ出しそうだ。その手を取りたい、でも怖い。お前の戯言を本気にしてもいいのか?


■どうしても言えない/もう待てない

・幼い頃からの付き合いで、お互いの気性は嫌というほど知ってる。ずっと傍にいたから、考えていることも読める。だから言えなかった。お前は一度こうと決めれば梃子でも動かない。聞く前から答えが決まっていることを問うほど俺は愚かでも強くも無い。

・熱い手に腕を取られて体が震えた。戸惑う視線は絡め取られて息を飲む。情欲を宿す瞳に恐れが先立ち、逃げたいのに指一本動かせない。せめて言葉をと開いた唇が塞がれる。『もう、待てない』狂おしい想いは吐息と共に注がれ、頑なな心を呆気なく溶かしていく。







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