ツイノベ -青学編- 




◆◆◆ 大石×菊丸 ◆◆◆


■「夜の並木道」「さよならを言う」「長袖」

「それじゃ、また明日」そう切り出したくせに、お前の指は俺の袖を掴んだままだ。あと少し、もう少し、そんな気持ちにキリが無いことくらいわかっている。それでも離れ難い気持ちはお互い様で、俺たちは阿呆のようにいつまでも夜の並木道に突っ立っていた。


■「夕方の水族館」「恋する」「雪」

恋するってすごい。突然、夕方の水族館なんかに来てしまった自分に笑う。泳ぐ魚たちを眺めてても、頭にあるのは彼のことばかり。名前のわからない大きな魚が、底に敷かれた白い砂を巻き上げる。水中に降る雪の中を綺麗な赤い魚が泳いでいった。もしオレが魚だったら、彼の水槽で愛してもらえるのに。


■「昼の高架下」「嫉妬する」「吐息」

よく晴れた空は青く、陽の当たる場所は暖かい。散歩の途中、高架下で俺たちは、ダンボールの中でか細く鳴く捨て猫に出会った。すぐに抱き上げられた子猫は、撫で回され、頬ずりにキスと浴びるような愛情を注がれる。連れて帰るというお前に笑いながら、心に湧いた嫉妬は吐息と共にそっと吐き出した。


■「夜のこたつ」「探す」「指輪」

焦った。ポケットに入れていたはずの指輪が無い。意を決して買った指輪なのに。さっきまであったんだから、落としたならこたつの中だ。平静を装って、手探りで中を探す。ふいに君が笑い、左手を挙げて見せる。薬指に填められた指輪。「これ、オレにだよね?」


■「早朝の廃墟」「約束する」「猫」

昇り始めた陽が、残骸になっているステンドグラスを煌めかせる。元は教会だった廃墟で、俺は片手に抱いた猫に、幾度目かの永久の誓いを立てた。約束するよ。何度生まれ変わっても、たとえ君がどんな姿になっても、俺は君を探し出す。そして必ず永遠の愛を誓うと。


■「深夜の駅」「浮気する」「ココア」

終電にぎりぎり飛び乗る。降車駅に着いた時にはもう日付が変わっていた。嵌められたんだ。本当に合コンだなんて知らなかった。浮気する気なんてある訳ないし。…と、いくら心で弁解を並べても後ろめたい気持ちは消えず。傍にあった自販機でココアを買う。甘いものが苦手な俺へのささやかな罰だ。


■「夕方の高架下」「見つめ合う」「雨」

季節外れの夕立に高架下で雨宿りをする。濡れた頭をタオルで拭っても冷えた体が震えた。恨めしく降る雨を睨んでいると、ふいに背後から熱い腕が回される。驚いて振り返ると、寒いからと苦笑いする顔。笑う顔とは裏腹の真剣な眼差し、見つめ合ううちに雨音も聞こえなくなった。


■「夜の公園」「すれ違う」「時計」

気晴らしに夜の公園でブランコに乗る。子供の頃のように大きく漕ぐと、木立の向こうに月が見え隠れした。忙しいあいつとは最近すれ違いばかりだ。いつも時計を見てる姿に、お前は不思議の国の白ウサギかと言いたくなる。それならオレはアリスかな。振り向きもしないウサギをどこまでも追いかけている。


■「昼の畳の上」「電話する」「雪」

「そっちは雪が降ってんだ。ん?こっちは晴れてるよ」ぬくぬくした部屋で畳の上に寝転がって携帯を握りしめる。法事で一昨日から親戚の家に行っている彼は、頻繁にメールや電話をよこす。山奥らしいから何も無くて暇とみた。暇潰しでもこうして声が聞けるのは嬉しい。でもやっぱり顔が見たいな。


■「昼の教室」「笑い合う」「雪」

昼休みの教室に駆け込んでくるなり、何も言わず俺を窓の方へ引っ張っていく。どうしたと聞く間も与えず、あれ、と窓の外を指した。校庭は積る雪にはしゃぐ生徒、そして間に見え隠れする、ちょっと特徴のある雪だるま。「大石だるま」笑う君に俺も笑顔になる。隣にちゃんと君の雪だるまもいたからだ。


■「夜のプラネタリウム」「抱き合う」「桜」

わざわざ遠くまで桜を観に来たかいがあった。暗い夜空にぼうっと白く浮かび上がる満開の桜は、ただただ圧倒されるばかり。「桜だけじゃないよ、ほら」そう言われて見上げれば、空には降ってきそうな無数の星。まるでプラネタリウムの中でお花見してるみたいだ。こんな贅沢は都会じゃ味わえないよね。


■「夜のソファ」「寂しがる」「チョコレート」

クッションを抱えてソファでテレビを見る。バラエティは面白かったけど、1人で笑ってもつまらなくてテレビを消した。テーブルの上には、甘い、甘いチョコレート。でもキスの甘さにはちょっと欠ける。君がいないとキスができなくて唇が寂しがる。だから代わりにチョコを1つ、口に入れた。


■「夜の並木道」「抱きしめる」「時計」

街灯がちらちらと瞬く並木道を駆け抜ける。口から零れるのは遅刻だ、遅刻だという台詞だけ。突然童話の世界に放り込まれた俺は白ウサギ役。ひたすら走るだけで止まることは許されない。手にした懐中時計は猫の形。お前は何の役だろう?無事でいるのか?走りながら祈るように時計を胸に抱きしめる。


■「昼の部屋」「抱きしめる」「ラーメン」

部屋でごろごろしてると、背後から手が伸びて抱きしめられる。まだ昼間なんだけど、と思いつつ回された腕に手を重ねた。キスをしようと振り返るが頭しか見えない。あれ?と思う間に「ラーメン」と声が背中に響いた。続く言葉は「腹減った…」。はいはい、昼飯ね。ちぇ、期待して損した。


■「朝の屋上」「なぐさめる」「飴」

目覚めると隣のベッドはもぬけの殻だった。マンションの屋上に眩しい朝日を浴びてフェンスに凭れる後ろ姿がある。まだ落ち込んでるのか。これは昨日寝てないな。背後にそっと忍び寄り、肩を叩く。水臭いじゃん、こんなとこで。オレがいくらでもなぐさめたげるよ。ほら、飴やるから元気出せ。


■「昼のソファ」「選ぶ」「足音」

お洒落な君は出掛ける前が一騒ぎだ。今もクロゼットから取り出した服が、床やベッドの上にカラフルな花を咲かせている。鏡の前で服を選ぶ真剣な顔、どうやらまだ時間がかかりそうだ。ばたばたと忙しない足音をBGMに、俺はソファで読書でもしながら待つことにする。


■「夜の歩道橋」「告白する」「靴」

歩道橋の上に並んで立つ。空には願いを叶えてくれそうな満月。深呼吸をして俯いた視界には君の靴が見える。意を決した告白、だけどそれは猛スピードで走り去ったトラックの轟音に掻き消された。何か言った?と聞き返す君にオレは笑顔で首を振る。…聞こえなくてよかったんだ、きっと。


■「早朝の部屋」「溺れる」「本」

壁を占める本棚、溢れて床に積まれる本たち。フリンジみたいにお洒落な付箋だらけの本、ページを開かれた何冊もの本は白い花が咲いたよう。そんな足の踏み場もない本の海で溺れる奴が1人。朝ご飯だよと声をかけても微動だにしない。恋人を本に取られたようで腹が立つ。起きないと全部処分しちゃうぞ。


■「夜のベランダ」「寄り添う」「蜜」

風呂上がりにベランダで涼む。空には蜂蜜色の大きな月、風に乗ってどこかから香る花に、改めて春なんだなぁと思う。気分が良くてうっとりと眼を閉じると背後に人の気配。風邪引くよなんて言いながら、包むように寄り添ってくれるから、もうこのまま眠っちゃいたいくらい気持ちいい。


■「深夜の畳の上」「共有する」「制服」

就寝しようと部屋の電気に手を伸ばし違和感に気付く。ハンガーにかけてある制服が僅かに小さい。もしやと手に取り上着に袖を通すが、肩が狭い。やっぱりあの後取り違えたのだ。同じ制服でもサイズが違うから共有は無理だ。なんでもない顔で帰って行ったあいつは、本当に気付かなかったのだろうか。


■「夕方のコンビニ」「キスをする」「目眩」

腕を引かれる。同時に掠めていった柔らかな感触。何が起きたのかわからないでいると、振り返ったお前が目を細めて自分の唇を舐めた。唇から覗く舌が朱い。外界を染め尽くす燃えるような夕陽の赤と相まって、眩暈がしそうだ。


■「深夜の坂道」「キスをする」「ビール」

少し高めの声が深夜の街に響く。たった2杯のビールで酔ったお前は、上機嫌で歌いながらふらふらと歩く。電柱と衝突する寸前で慌てて引き寄せれば、声を上げて笑いながら抱きついてきた。「キスしよっか」言うなり返事も待たずに唇が重なってくる。嬉しいがここは外だ。どうか誰も見ていませんように。


■「夕方の書店」「ケンカをする」「雨」

学校の帰りに寄り道した書店、参考書か漫画かで他愛のない喧嘩になる。ちょっとだけ後悔したけど意地で漫画を読む。つまらない。謝ろうか悩んでいると、店内に響く耳をつんざく雷鳴。そして滝のような雨。やばいと慌てる背を奴が叩き、鞄から傘を覗かせる。ホッとして笑うと奴も笑い返してくれた。


■「夜の水族館」「振られる」「月」

閉館時間まで水族館にいた。外に出るとすでに月が出ている。色鮮やかな魚を眺めていると癒されるけれど、心の奥深くに潜む不安までは消せない。携帯電話を何度も取り出してはまたしまう。この恋が終わったなんて、まだ信じられないんだ。


■「夜の密室」「騙される」「傘」

微かな雨音が聞こえる。強い風が雨雲を運んできたようだ。部屋は薄闇のまま、灯りを点けるでもなく、俺たちはただ黙って手を繋いでいる。「傘が無いから帰れないな」という呟きに頷いた。いつも鞄の中に入れてるくせにと思いながら、俺は騙されたふりをする。


■「昼のベッド」「キスをする」

目が覚めた時はすでに陽も高かった。もちろん、ベッドの隣を探ってももぬけの殻だ。起こしてくれればいいのにと思い、起こされれば文句を言ってただろうことも確実で。薄情なあいつの代わりに、引っ張り込んだぬいぐるみを抱き寄せておはようのキスをする。


■「早朝の駅」「開く」「花束」

駅に向かう途中の花屋が開店準備をしていた。手入れをされた鉢植え、脇には背の高い観葉植物が並ぶ。店先には小さな花束にされた色鮮やかな花が愛想を振りまいている。その中でも一際愛嬌のある明るいオレンジに目がいく。太陽が落ちてきたような大輪のガーベラは君にそっくりだ。


■お題無し

次々に拾われてくる猫たちで家が狭くなったと感じるのは、たぶん妬みからだ。美味しいご飯とたっぷりの愛情を貰える猫たちは、当然大好きなご主人様の傍を離れない。手入れもされてふわふわの毛玉みたいな猫たちは可愛いけれど、お前たちが独占してる俺の恋人をそろそろ返してくれないか。


■夢でしかお前に会えない

・目覚ましの電子音に慌てて起き上がる。ボタンを押して不快な音を止めた時には、幸せな夢も欠片しか残らなかった。懐かしい夢を見た。まだ学生の頃の、君がいつも俺の傍にいた頃の夢だ。笑う君の顔と、抜けるような青空。せっかくの夢も、それしか思い出せずに切なくなる。今は夢でしか会えないのに。


■若気の至り、かもしれない

・俺たちはたぶん、まだ子供で。だから本当のことなんて、ひとつもわかってないのかもしれない。思春期にはよくある一時の気の迷いだと大人は言う。そんなことはないと否定できるものは何も持っていないけれど。君が好きだよ。未来はわからなくても、今ここにいる俺は、間違いなく君のことが好きだ。


■君の手を握りしめて

・道に迷いそうになったら君のことを思う。ちゃんと笑ってくれる方へ、決して泣かせたりしない方へ。その笑顔が僕の道の指針、今までもこれからも変わらない。隣を歩いてくれる君の手をしっかり握って、僕たちはこれからも歩いていく。



◆◆◆ 手塚×不二 ◆◆◆

■「夜の海辺」「選ぶ」「猫」

人懐こい猫と天の邪鬼な猫、君ならどちらを選ぶ?そう聞かれて答えに窮する。そもそも猫を特別好きだと思ったこともない。満点の星の下、海辺に佇むお前の顔には意図の読めない頬笑み。なぜ突然そんな問いを発したのかすら理解できない俺に、お前の欲している答えがわかるはずもない。


■「早朝の部屋」「耽る」「手紙」

朝日を浴びて鮮やかに色づく窓辺のサボテンに水をやる。机の上に置かれているのは、昨日届いたエアメールだ。中身は相変わらず無愛想な文章で、手紙というより報告書。まったく君らしいったらない。君のいる街はどんな色で、どんな風が吹くだろう?封筒を胸に目を閉じて、僕は遠い異国の空想に耽る。






→end