ツイノベ -他校- 




 氷帝 


◆◆◆ 忍足×跡部 ◆◆◆

■「夕方の並木道」「抱きしめる」「蜜」

蜜が滴るような瞳で見つめるから、てっきり誘惑やと思って抱きしめれば。夕方の並木道に響き渡るパチンという小気味いい音。「時と場所を考えろ」そう言い捨ててさっさと歩いていく後ろ姿も色っぽい。俺は打たれた頬を押さえて追いかける。まるでドMみたいやけど、お前が相手ならそれでもええわ。



◆◆◆ 忍足×岳人 ◆◆◆

■「深夜の遊歩道」「くすぐる」「魔法」

喧嘩して飛び出し、闇雲に深夜の遊歩道を歩く。ずっとついてくる足音と、冷たい空気に少しだけ頭も冷えた。立ち止ると足音はすぐ背後に立つ。「笑顔になる魔法かけたるわ」言うなり奴は俺のわき腹を激しくくすぐり始めた。深夜に響く奇声、灯る家々の窓。馬鹿を思いっきり殴ってその場から逃げた。


■「昼の坂道」「選ぶ」「菓子」

「甘いお菓子あげよか」急に立ち止り振り返ると、握った両の拳を突き出してきた。どちらか選べということだろう。俺は右の拳を指さす。開かれた手は空だ。「当たり。景品は俺の甘〜い愛や」…期待した俺が馬鹿だった。奴に蹴りを入れる。お前なんか、この坂道を果てまで転がり落ちて行け。


■「深夜の教室」「嘘をつく」「チョコレート」

誰もいない深夜の学校は少し不気味だ。教室に忍び込みあいつの机に向かうと、手にしたチョコレートに小さくキスを落として中に入れた。差出人の無いチョコなんて、どうせ他から山ほど貰うチョコに埋もれる。馬鹿だと思うけど、それでも、嘘をつき続ける可哀想な恋心の為に。


■「昼のキッチン」「告白する」「メール」

コーヒーを淹れるからと席を立つ。お湯が沸くのを待つ間に携帯電話でメールを打った。ちょうどカップにコーヒーを注いだ頃に、バタバタとキッチンに駆け込む足音。「なんなんだよ、これ!」真っ赤な顔して携帯握って。「見たまんま、告白やけど。返事教えてくれへん?」まぁ、聞くまでもないけどな。


■「昼の部屋」「手を繋ぐ」「手錠」

今度浮気したら手錠で柱に繋いでやる、そないに物騒なことを可愛い顔で言う。愛されてるって実感できて幸せやと返せば、すぐさま拳が飛んできた。凶暴な猫を背中から抱きしめる。握った拳は開かせて、指を絡めた。こうしてずっと手を繋いでたら手錠なんかいらへんやろ?


■お題:俺ばかり好きでくやしい

・誰かれ構わず甘ったるい言葉を吐いて思わせぶりな態度。俺と一緒にいても彷徨う視線は次から次へと綺麗な花へ。その口で愛してるなんて、いったいどこの誰が信じるっていうんだ。必死な分だけ馬鹿をみて、それでも嫌いになれない自分に呆れる。悔しくて腹が立つ。俺はお前しか見てないのに。



◆◆◆ 跡部 ◆◆◆

■ 「朝のこたつ」「噛み付く」「蜜柑」

体のあちこちが痛む。こたつは快適な睡眠を取るには不向きだ。起きようとついた手にぴりりと痛みが走る。左袖を捲るとくっきりと歯形があった。未だ惰眠の底にいる歯形の主を見下ろし、握られたままの蜜柑を取り上げる。これも皮に噛み付いた痕。所有の証のつもりか?俺様を蜜柑と同列に扱うな。



◆◆◆ 日吉 ◆◆◆

■「夜の車内」「見上げる」「雲」

送ると有無を言わさず車に乗せられた。車内は沈黙が支配しどうにも居心地が悪い。家までの我慢だと諦め、窓の外を眺める。やけに明るい夜空を見上げれば、流れる薄雲を纏う満月があった。風情はあっても明るさでは太陽に敵わない月。すぐ隣にいる太陽のような男を見遣る。俺は月で終わるつもりはない。



◆◆◆ 慈郎 ◆◆◆

■「夜のベッド」「幸福になる」「雨」

どこでも寝れるけど、やっぱ夜のベッドが一番気持ちいい。ふわふわの毛布は幸福になる為のアイテムだ。うるさくても静かでも寝れるけど、雨の夜が一番いい。しとしと降る雨が優しい子守唄になって、ぐっすり。こんな夜の中にいられるなら朝なんてこなくてもいいや。




 聖ルドルフ 


◆◆◆ 赤澤×観月 ◆◆◆

■「夕方のエレベーター」「誓う」「犬」

廊下の窓から差す茜色が、エレベーターのドアに遮られて消える。狭い個室には2人だけだ。「一生、私の犬でいると誓いなさい」浅黒い肌の大柄な男は、真意を測るように私を見つめる。そして獰猛な笑みを浮かべると、了承するように頷いた。それでいい。私が欲しいのは愛玩犬ではないのだから。


■「夜の動物園」「噛み付く」「跡」

寮の夜は騒がしい。動物園かと言いたくなる。今しも足音荒くこちらに向かってくる男は水牛が妥当か。目元に殴られた跡。また喧嘩の仲裁でとばっちりを受けたのだ。「冷やしてあげますから僕の部屋へ来なさい」怒気も顕わな彼が噛み付いてくる前に機先を制す。顔と一緒に頭も冷やしてやらなくては。


■「早朝の部屋」「泣き出す」「アルコール」

薄暗い部屋に一歩足を踏み入れる。むわっとするアルコール臭に辟易し、カーテンと窓を開けた。朝の新鮮な空気、健康的な明るさ。深呼吸して気を取り直し、元凶を見遣る。テーブルや床には夥しい数の酒類、突っ伏する馬鹿な男。片付けてやるが、微かな泣き声は聞こえないふりをする。


■「夜のレンタルショップ」「貪る」「枕」

両手に山のようなDVDを抱え、一緒に見ようと誘われる。休みだからと観たい映画を端からレンタルしたらしい。無駄なことをと思いつつ、映画は好きなので誘いを受けた。映画が始まり、僅か10分で隣から聞こえるいびき。枕が恋人の貴方には映画鑑賞など無理だと、いつになったら学習できるのだろう。


■「朝のエレベーター」「振られる」「本」

偶然朝から顔を見かけ、これ幸いと朝食に誘ったがもう食べたと断られた。昼休みにまた会い、一緒に筋トレでもと誘ったが本を読むからと断られた。夜には部屋に押し掛けたが、練習メニューを見直すからと追い出された。振られてばかりいるように思えるのは、たぶん気のせいだろう。


■観月誕生日

誕生日は友人や部活仲間から、祝いの言葉やプレゼントが多数寄せられる。大漁だなと笑う男に手伝わせ、頂き物を紙袋に詰めながら、慕われているのやら恐れられているのやらと返せば、失礼なことに呆れた顔をされた。だが、嫌いな奴の誕生日を覚えるものかと言われて、不覚にも幸せな気分になる。


■地下鉄のホームで君を見た/優しい笑顔が好きだった/気がつけばお前のことばかり考えてる

・改札を抜け地下鉄のホームへ向かう。ちょうど電車が来たのか、吹き込む強風に逆らいながら階段を駆け降りた。努力も空しく、扉は目の前で閉じる。落胆したが幸い急ぎでもない。諦めて走る電車を眺めた時、扉の向こうに見知った顔を見つけた。驚いた顔で俺を見るお前と目が合う。ほんの一瞬の事だった。

・久々に懐かしい顔を見たせいか、学生時代の思い出が次々と蘇る。熱中した部活、賑やかな寮生活、個性的な仲間。中でも鮮烈な記憶があいつだ。綺麗な顔をしてるのに、嫌味ばかり言う口と計算高い頭を持つ奴。本当は優しいのに素直じゃなくて、でもそんなあいつが時々見せる柔らかい笑顔が好きだった。

・夕飯に馴染みのカレー屋に入る。チェーン店だが味は悪くない。そういえば昔、カレーを作ってくれたな。スパイスがどうこうという蘊蓄付きだったが、俺の好みに合う絶品だった。あいつはそういう奴だ。相手を喜ばせる為に事前に調べて材料を探す、そんな苦を惜しまない。…またあれが食べたいな。




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