三代将軍たるべきものは、竹千代か、国千代か。徳川家はこの相続問題により、真っ二つに割れた。このままにはしておけぬ!家康は 駿府城へ天海僧正をまねき、驚くべき解決の提案を受ける。
伊賀と甲賀に、あくまで和睦せず、千年の敵としてにくみ合う忍者二つの一族あり。二つの一族を、竹千代方、国千代方の二つに当て、 十人ずつ選び、戦わせる。その勝敗に全てを託すというのだ。これならば、両族すべて血の海に没しても、徳川家の侍に傷はつかぬと・・・・・・
かくして、両家の首領は呼び出された。甲賀弾正と伊賀のお幻。両家を制していた服部半蔵との約定は解かれる。甲賀十人衆、伊賀十人衆、 たがいにあいたたかいて殺すべし。のこれるもの、この秘巻をたずさえ、五月晦日駿府城へ罷り出ずべきこと・・・・・・
それぞれ十人の名を連ねた巻物は宙に投げられ、甲賀の巻物は国千代の方へ、伊賀の巻物は竹千代の方へ。三代将軍の運命は今、甲賀、 伊賀の両家にゆだねられたのである。
甲賀弾正とお幻はたたずんでいた。かつては恋こがれた者同士、そしてまた今、お互いの孫が恋仲となり、ようやく和睦しようとしていた 矢先なのである。だが、しょせん、星が違った!弾正はふところから巻物を取り出した。お幻の連れ夜叉丸が持ち帰ったはずの巻物である。
突如、お幻の首を針が貫き通した。戦いは始まっていたのだ。倒れたお幻を始末しようと近づいた弾正の胸にも、お幻に握られた針がつき たてられた。この争いのまっさきに、両頭目は、お互いを葬り去ったのである。
そして甲賀の巻物は弾正の連れ風待将監が甲賀へ、伊賀の巻物はお幻の操る鷹が伊賀へと持ち去った。両家の泥沼の戦いに飛び込むように ・・・・・・
徳川家の世継ぎを決める為に駆り出された、甲賀伊賀の忍び20名が入り乱れての殺し合いを行うという、壮絶かつ単純でわかり易い ストーリーだ。
状況としては、甲賀と伊賀は基本的に敵対していること。共に服部半蔵に大恩がある為、互いに争って血を流すことを半蔵 によって禁じられていたこと。甲賀の弦之介と伊賀の朧が恋仲であり、近々和睦しようとしていたこと。それでも他の甲賀伊賀の者は和睦 に対するわだかまりが残っていること、である。
その状況で二代目半蔵によって争いの禁は解かれた。 みんな相手を潰したくてうずうずしていたのだ、ここぞとばかりにオラオラ!という感じである。人の恋などどうでもよいのだ。この 気持ちは「あいのり」を見てるような奴にはわからねえだろうな。
登場する人物全員が何らかの技や術を使う、山田風太郎のお得意パターンだ。全て忍術としてくくっているが、これ忍術か〜?という代物 ばかり。だがそこが面白い。リアル忍者を期待してはいけない。壮大なスペクタクルで送るファンタジー小説と考えた方が良い。
だって、能力が不死身って、忍者とまったく関係ないじゃん。でもその能力とか術とかがうまく絡み合っていて、この術、使い道あるの かよと思っていたら、ある能力に対してもの凄く有効だったり、この術はこいつにはまったく効かないとか、もの凄くよくできている。
その得手不得手によって次々と消されていく忍びたち、そんな忍びたちを妄想してもらうために、読んでればわかることだが、その能力を ちょこっと公開。
甲賀組十人衆
伊賀組十人衆
ネタバレすると面白くないところは伏せておきました(ほとんどバラしてるけど・・・)がどうです、俺は大人だけど子供心をくすぐるこの ラインナップ。こんな技の持ち主同士が争うわけですよ。誰が誰を倒したとか考えてると夜も眠れないですよ。とにかくアイデアに溢れて いる。
これだけの技を前にして、筆者はあくまでも、肉体の可能性の範囲にありながら常識を絶したもの、としている。可能性の範囲ということ は、もしかしたら出来るんじゃないかっていう願望的なものであるが、いやそれは出来るんだという断定的なものでもある。
これは人間に秘められた可能性は大きいんだという提言ではないのか。もちろんこれらの術が不可能であるのは分かっている。 不老不死なんて、自然の摂理を根本からくつがえすようなことが可能なわけはないのだが、実はこれ正確には不老不死ではなく、超回復なの だ。
例えば手足を軽く怪我したとしても皮膚は数日で再生する。トカゲの尻尾は切れてもまた生えてくる。このように全ての生物には 再生するという能力がある。つまりこの再生力が超人的ならどうなのか、ということが反映して薬師寺天膳の能力が生まれたのだろう。
そしてその超人同士がぶつかれば、どのような結果が生まれるのか?何が残るのか?誰が生き残るかということではなくて、何の意味が あったのかということで、この話の一つのポイントでもある。偉そうなこと言うようだが、そこは熟読して各自読み取ってほしい。
で、この超人的な能力がぶつかり合い、弱者は消え、強者のみが生き残る。互いにぶつからなければ、強い能力者が多々生き残っただろうに。 だが互いに切磋琢磨し、相手を潰していかなければ、その強さの証明にはならない。強者同士のぶつかり合いは、必ずどちらか一方の死を 意味する。
結局、お互いを潰しあった結果、みな死んでしまうのだが、最後に残った弦之介と朧はそんな能力に関わらず、自ら死を選ぶ のである。これが愛の力というやつなのか!
他の者がみな死んでしまったから、そのまま2人で逃げてしまえば済んだものの、互いの甲賀、伊賀の尊厳を守る為に戦った。しかし譲り 合った。負ければ仲間達の無念も晴らせず、その名に傷がつくというのに。
勝手だといえば勝手だが、相手を想う気持ちを美しいと捉えることもできる。愛情をとるか、尊厳をとるか。二人はともに愛情を選んだ のだ。
若い!若いねぇ!俺もそれくらいの恋愛してみたいぜ・・・ってことで、並みの恋愛小説をも凌駕するこの甲賀忍法帖。絶対読むべし!
| なんか手裏剣とか売ってたよ!伊賀流忍者店! |
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