無門―――なかなか登場しないので、平兵衛が主人公なのかと思ってたら、こいつが主人公らしい。 百地家の下人にして、伊賀一の忍び。やる気はないが腕は立つ。だるそうな喋り方が特徴。
文吾―――こいつも始めに登場するので主人公かと思ったらやっぱり違う。無門と同じく百地家の下人。口ばっかしで、 気は強くても喧嘩は弱いタイプ。のちに石川五右衛門と名乗るという設定だが、この物語ではまったく必要ない設定と思われる。
下山平兵衛―――下山家の嫡男で、伊賀者の中では変人とされる真面目一辺倒な男。その真面目さゆえに伊賀に愛想をつかし、裏切るの だが・・・・・・
北畠信雄―――織田信長の次男。北畠家に婿入りし、織田家の勢力拡大に伴い、北畠家の家督を得る十八歳。典型的な親の七光りという やつ。家庭の事情ってのは色々あるんだよ・・・・・・と、ちょっとかわいそうにも思えるやつ。
日置大膳―――もと北畠家の重臣。大柄で直情型。相手が誰であろうと思ったことをずけずけと口にするやつ。現代社会だと、 すぐ喧嘩になってクビになるタイプ。
柘植三郎左衛門―――もと伊賀者だが、平兵衛と同様の動機で現在は信雄の下についている。現代社会だと、同僚からは嫌われるが、 上司には好かれて、どんどん出世するタイプ。
お国―――無門が安芸国からさらって来た、とある侍大将の娘。以前は生活水準が高かった為、金にこだわる女。稼ぎの少ない無門を 家から追い出している。おそらくツンデレキャラ。デレはあまりないのだが、たまにそれらしきものを垣間見せながら、やっぱり 見せない、が想像上そうであってほしいと願う、今日この頃。
信雄は長野左京亮、日置大膳、柘植三郎左衛門らを連れ、北畠具教を亡き者にすべくやってきた。左京亮、大膳らはもと北畠家の重臣で ある。
具教は娘の凛に北畠家秘蔵の名器「小茄子」を託したあと、左京亮らと対峙するが、三郎左衛門の手裏剣によってとどめを刺される。 一部始終を見ていた文吾は逃走した。
伊賀では百地家と下山家で小競り合いが繰り広げられていた。大した理由はない。いつものことなのである。うんざりした様子の平兵衛 であったが、弟の次郎兵衛が無門によって殺される。
無門は百地家の上忍三太夫から次郎兵衛を殺すよう銭で依頼されていた。怒る平兵衛は無門に挑むが、途中、伊賀中に鐘の音が鳴り響く。
十二家評定衆参集の合図である。鐘が鳴ればいかなることがあろうと、直ちに平楽寺に参集することが定められている。
平兵衛は次郎兵衛が殺されたにもかかわらず平然と参集に応じる父下山甲斐らの姿を見て、体中の力が抜けた。
―――この者どもは人間ではない。
十二家評定では伊勢を押さえた織田軍の軍門に下ることを決定した。織田家はちゃんと銭を寄越すのか、下人たちの心配はそれだけである。
伊勢へは平兵衛を使者として放ち、意向を伝えることとなった。
家へ帰った無門のもとへ平兵衛とともに伊勢へ向かったはずの文吾が血だらけで現れ昏倒した。下山平兵衛に斬られた。 文吾の舌の動きはそう訴えた。
平兵衛は三郎左衛門をつてに信雄に目通りし、伊賀攻めを進言。 信雄は信長より伊賀に手をだしてはならないと命じられていたが、三郎左衛門に丸め込まれ伊賀攻めを決定。
伊賀を攻める拠点として 北畠具教が伊賀攻めの際、途中で築城を放棄した丸山城を再築する為、三郎左衛門と大膳が使者として伊賀へ向かう。
だが伊勢の軍勢を伊賀に攻めさせるのは百地三太夫、下山甲斐らの術中であった。伊勢の軍勢を打ち破れば伊賀の名は全国に轟く。 下人の注文が増えるのだ。そのため平兵衛を裏切るよう仕向ける必要があった。
三郎左衛門、大膳らが伊賀を訪れた。三郎左衛門は伊賀の全てを織田家の給人として迎え入れたいとしたあと、丸山城の再建に助力する と言った。
当然断る十二家評定衆。そこで三郎左衛門は金銀塊をちらつかせると評定衆の面々の態度は一変し、飛びついてきた。 三郎左衛門にしてみれば城などやるつもりはないのだが、このときは三郎左衛門と大膳も、伊賀者らの芝居に騙されていたのである。
丸山城の築城は進んだ。信雄は城が完成すると、予定通り掌を返した。数千の軍勢を徐々に送り込み、伊賀者らを追い出しに掛かった のである。三太夫は最後に三郎左衛門から金銀を受け取ると大手門から出た。城門の閉まる音を聞きながら、
「さて、焼くか」
もはや城に用はない。天守の格子窓が一斉に火を吹いた。文吾が仕掛けた火薬によって丸山城は瞬く間に炎に包まれた。
三郎左衛門らは伊賀者らの襲撃を振り切り、逃げた。
知らせを受けた信雄は激怒し、伊賀攻めを喚きたてる。大膳は伊賀を力なき者として伊賀攻めを拒否。だが一年近く信雄は諸方の攻略へ 駆り出され、伊賀攻めどころではなかった。
ようやく信雄は伊勢に戻った。十二家評定衆は信雄を大膳なきままに攻めさせるための策があった。
評定衆は下人たちへ、信雄の軍勢を迎え撃つことを伝える。自国を守る戦、銭は出ない。下人どもの半数は伊賀から逃げると言い始めた。 ただ働きではお国の機嫌がとれない無門は、伊賀攻めをやめさせようと掛け合う為、過去に雇われ顔見知りの大膳のもとへ向かう。
当然断る大膳。無門は直接信雄を脅すため田丸城へ。大膳は無門を追う。
信雄の寝所へ忍び入った無門は信雄を脅すが、交渉決裂。無門は信雄に必ず地獄へ落とすと宣言し去った。
大膳はようやく信雄のもとへ着いた。信雄がまたも伊賀攻めを喚いているところ、大膳は閃いた。
いま伊勢の軍勢は、丸山城を焼かれ伊賀に攻め込む状況にある。事の発端が伊賀の小競り合いにある以上、その意図は伊賀にある。 伊賀は信雄に自領を攻めさせようとしている。負けるとわかっているのに・・・・・・。なぜなのか。だが大膳は気づいた。
伊賀は大膳が参戦を拒むと踏んでいたことにである。大膳が戦に出なければ伊勢は負けるという見立ては正しい。 全ては十二家評定衆の術中であった。
大膳は参戦を宣言するが、いまさらである。ぶつかり合う信雄と大膳。信雄は突然涙し、心中の自責の念を語り始めた。 偉大すぎる父に無視され続けてきたその思いが伝わったことによって、伊勢の軍勢は大膳をはじめ一致団結した。
十二家評定衆の見込みは外れ、意をひとつにした伊勢の軍勢は怒濤のごとく伊賀へなだれ込む。
無門は田丸城を抜け出した後、修験道の零場で祈願していた北畠具教の娘、凛を見つける。無門は信雄を討つことを約束し、小茄子を 受け取った。(これをお国に見せて京に逃げよう)凛の期待など眼中になかった。
戦は始まった。半数の下人が逃げた伊賀は劣勢となる。その様子を無門らは峠から見下ろしていた。お国は不機嫌だった。 なぜ逃げねばならぬのか。武家の娘らしい考えである。このまま逃げれば不機嫌のまま、このことをぼやき続けるだろう。
(やるしかねえだろうな)無門は小茄子を掲げ、同道していた下人らに宣言した。雑兵首一つにつき十文、兜首に十貫、信雄の首には 五千貫を払うと。小茄子には一万貫の価値がある。
「死んではなりませぬぞ」お国の心を掴んだ無門は、金に目の眩んだ下人らと供に伊賀の地へ舞い戻った。
無門らが戦線に加わることにより形勢を逆転。信雄ら伊勢の軍勢は三郎左衛門を殿(しんがり)とし退却する。
辛くも城内へ逃げ帰った信雄らであったが、城兵に変装していた無門ら伊賀者に囲まれる。 無門はこのときを待っていた。信雄、大膳、左京亮、平兵衛らが揃い、一挙に全員を殺すこの時を。
信雄を見つめる無門の前に平兵衛が一歩踏み出し、土の上に一線を引き跨いだ。伊賀者同士が勝負を決する時に行う決闘宣言である。
応ずるなら、四尺離れたところに線を引き、その四尺の間合いで戦う。線を踏み越せば、検分の伊賀者たちがよってたかって惨殺する 掟である。
どちらか必ず一人は死ぬ。無門は線を引き、跨いだ。 平兵衛は十二家評定衆のもくろみを無門に語り、供に術中にはまっていたことを伝えるが、無門は眉ひとつ動かさない。 平兵衛は説得を諦めた。
「わしが死んでも、伊勢の者たちには手をだすな」
無門はうなずいたが、そんなつもりは毛頭ない。刹那、平兵衛が太腿の二刀を抜くと同時に無門も腰板の二刀を抜き放った―――!!
本当におもしれぇのか?半信半疑でページをめくる俺であったが、俺はあのオッサンに感謝しなければならない (忍者日記2008.6.1参照)。
俺をここまでのめり込ませるとは、なかなかやるじゃねぇかオッサンよ。 面白いのはオッサンの功績ではないが、とりあえず礼だけは言っておこう。
まず読みやすい、やさしい設定といえる。時代小説にありがちな長ったらしい時代背景の説明はなく、心なしかページ数も少ないような 気がする。
あとセリフに「ござる」がでてこない。よくよく考えてみれば、「ござる」は武士の使うセリフであって、 忍びが使うものではないのではないか、ということに気がついた。
これは俺の世代では、忍者ハットリくんの影響が大きいと思われる。 ハットリくんがなんでもかんでも語尾に「ござる」をつけるから、それが普通だとインプットされてしまっていたのだ。
たしかにそうだ。 他の小説でも「ござる」を使用している忍びは多いが、階級の低い人間が普段の会話で、かしこまって「ござる」などと付けるはずがない。
お前らがまともに敬語とかを使えないのと同じだ。 でもそれをわかっていながらも、俺は今後も使っていくけどね。そのほうがおもしろいからな。
では本題に入ろう。 伊賀の社会構図に今の社会構図を見た。今も昔も変わらない、人間臭さがよく描かれている。下人から搾れるだけ搾り取って、たいして なにもしない上忍。少ない給料でぎりぎりの生活をしながら、やたらと金に執着する下人。
下人は忍び働きがないときは、田畑を耕して 生活のたしにする。今で言えば、本職がありながら、バイト・内職・副業などをやっているのと同じだ。わかる、わかるぞ、その苦労。 涙がでてくるぜ。
伊勢軍の伊賀攻めの際、賃金が出ないなら逃げると言って、大半が逃げ出し、半分は残るという集団心理。結局それで体制を崩してしまい、 なにも出来なくなる上忍。そこら辺の企業の形がここにあったんだなぁ〜って感じかな。
まあ、伊賀の考えは特殊だけどね。丸山城再建の際にも、雇われて築城したけど、建て終わってその分の給料貰ったら、 もう用は無いから焼いちまえという考えは好きだな。この辺は時代を象徴してるかなって感じだ。
今だと、とんでもない大ニュースに なっちゃうからね。会社なんか簡単に潰れちゃうよね。ある意味伊賀もこれがきっかけで潰れたようなもんだけど。
やっぱりここでも出てきた、信雄を脅した無門が城を抜け出すのに曲者の侵入を知らせる伝令に変装して大膳の前を平然と駆け抜ける。 もはや定番の脱出法である。「夜の戦士 下」にも出てくる。 覚えておいたほうがいいって。人生どこで、何が役に立つかわからんぞ。
それから、無門には決め技的なものがある。一歩間違えると安っぽくなってしまうのだが、あえてそこに挑戦するという意気込みが買える。
敵の繰り出す槍の穂先を、高く掲げた足で踏みつけ押さえつける。そのまま槍の柄を登っていき敵の首を狩るという。 有り得ねえ、けどかっこいいから許す。無門の不気味さをうまくかもし出した良い技だ。想像力の高い人ほどかっこいい無門を脳裡に 描けたはずだ。
そんなの無理だろうというところと、なんか頑張れば実際になんとか出来るんじゃないかという、ギリギリのラインというところが 絶妙である。
「かめはめ波」とか体から光線出す系などは、物理的に無理だから時代小説(山田風太郎作品を除く)では御法度なんだけど、この技は 物理的には可能だ。中学生くらいの時までは「かめはめ波」は頑張れば出来ると思ってたけどな・・・・・・。
終盤、無門はお国を失うことによって、伊賀を見限る。物心つく前から伊賀の道具として生きてきた無門にとって、お国はもっとも 身近な人間だった。情というものを覚えてしまった無門はもう伊賀には居られなかったんだろう。
一概に人間らしくなることが忍びにとって良いこととは思えないが、無門は最後に人間らしさを取り戻すことが出来たのだろうか。
| なんか手裏剣とか売ってたよ!伊賀流忍者店! |
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