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陽炎

with Shijima
それは、あれから何回目の春だろうか。
 
わたしは紗と護剣を纏い、幾度目かの舞を舞う。
胸に一つの決心を秘め、決してそれが外に出ぬよう。
 
外から見た私と、自分で思っているわたしは、恐らく大分違うのだろうから。
 
 
『おねえちゃん、どっかいっちゃったら、やだよぅ』
(……そう言っていた貴女が居なくなって、どうするつもりですか)
妹を失ったまま進む毎日は、失意の日々だった。
何も変わらないように振舞う日常、そして何も変わらない世界。
かつて聞こえた「声」は霞み、必死で踏み締めた道もどこか頼りなく映る。
 
それでも、わたしだけがこのぬるま湯のような常世にいる訳にはいかない。
それは悲壮なまでの使命感であり、身を焼き焦がす怒りであり、魂の半身を失った絶望であり、そして―――炎。
 
 
人間とは便利なもので、考え事をしていても身体は習った通りに言う事を聞く。
護剣を突き出して身体は静止、左手だけが紗を手繰るように動く。
 
『……神さんの声、聞こえるんだもんなあ』
(……いいえ、違います。わたくしにとっては、妹を守っていたうちに聞こえるようになったものでしたから)
目的ではなく結果、彼にそう言わなかったのは何故だったろうか。
その場の気まぐれかもしれないし、そうでもないかもしれない。
 
今自分が着ているような華美な神官服は、あまり好きではなかった。
重いし動き辛いし、何より幾重にも手間をかけられたそれの価値、その意味する所の様々を知っていたから。
そう遠くないうちに、旅に出るだろう。
身に宿った炎が、出口を求めてわたし自身を焼き尽くしてしまう前に。
 
 
最後に、剣を掲げた。
神殿のあれこれはこの日になっても好きにはなれなかったけれど。
手に握った紗の滑らかな感触や、
今のわたしと似たような格好の、トーガを纏った騎士神の似姿は、憎からず想っていたから。
arch@アイリーン SW2.0