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口実
ダスト=アニス=メールが旅に出る半年前。エイレンの街の神殿にて
「お師匠様、冒険者って結局。何なんでしょうね?」
分厚い法典を枕代わりにして、机に伏しながら私は聞く
「とりあえず、少女はどう思うわけよ」
お師匠様は逆に聞き返す。ちなみに彼女は私を名前で呼ばない。
《塵》なんて名前、イヤだからと言って、わざわざ少女しか呼んでくれない。
「冒険者は…腕っ節だけがとりえの荒くれ者で、金でしか動かないごろつき集団で」
「たまに、呪文使える奴とか要るけど…あんまり良い人間とは思えない」
師匠は黙って聞いている。真顔でこちらを見つめるので、ちょっと怖い。
「殺し合いが三度のメシより大好きで、その割には英雄志願の命知らずがなりたがるモノ?」
「大体あってなくは、ないかな?」
「でも、お師匠様は冒険者だったんですよね。どうしてですか?」
「シーン様は争いごとを諌めるはずなのに」
お師匠様は頭を掻いた後、少し恥ずかしそうに答えた
「家出の口実。そんなもんよ、私だって」
「そんなもん、ですか…」
「でも、冒険者をやってよかったって、今は心から思っている」
「どうしてです?」
「沢山の世界を見れた、仲間に会えた、ついでにお金も稼げた。これはとても、いいことだよ」
「お師匠様は3番目の理由が殆どでは…」
「いけない? でも、この街の神殿は、お金がなきゃ立たなかったわけで、神殿がなきゃ少女もここには居なかったわけで」
「だから、少女も冒険者に感謝するといい、わかった?」
いつもながら無茶苦茶な物言いだったので、「はーい」と生返事を返すだけにしたが、
冒険者という生き方も、私には合うのかも知れないと思った。
別にやりたいわけじゃないけど、お師匠様が見てきたものを、私も見られるかもしれないし。
何より、《口実》には丁度よさそうじゃない?
 
私はもう、母さんのそばにはいられないから
 
おわり
amasiz@アニー SW2.0