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声が聞こえる
てをかしてあげるから
 
「うおーい、少女起きろー。昼寝の時間はおわりだよ」
「…うあ?」
分厚い法典でポカポカ頭を殴られた私は、仕方なく目を覚ます。
「それにしてもよく寝る、そんなに勉強嫌い?」
「いや、そういうわけでは…」
今日も師匠とマンツーマンで、司祭になるための勉強中。
正直、はかどっているとは言えないが、私は司祭見習いという名目で神殿に住んでいるのだから、仕方ない事だ。
 
「師匠みたく神聖魔法が使えたら楽なんだけどなー」
「誰でも使えたら困るわよ、商売上がったりだわ」
神様の力を借りて傷を治したり蛮族を祓ったりする神聖魔法を使うためには『神の声』というものを聞かないといけない、らしい。
懸命に修行を続けても聞こえない人もいれば、司祭の魔法により聞こえるようにしてもらう人もいる、果てには魔法が使えないのに口先と金だけで司祭になる輩もいるそうだ。
うちの神殿にはそんな奴いないけど。
皆さん敬虔な月神教信者だし、真面目だし、魔法を使える人も多い。
魔法を使える人たちは、平均して10年は祈りを捧げ、修行を続け、ようやく会得したのだという。ここに来てまだ1年も経たない私が使える道理は無い。
 
「私も早く使ってみたいな、『神よ我等を守りたまえ』みたいなやつ」
「まあ気長にやっていきましょ?幸い私も少女も若いんだし」
「師匠はもう若いとは…あれ?」
不意に、今まで感じたことの無い妙な感覚を覚える。
頭が少しクラッとするというか、生気が抜けるというか、未知の感覚ゆえに上手く表現できない。
 
しかし、その正体がわかるまえにもっと妙な事象が起きた。
一瞬、私の周りが白い光に包まれた後、その光が私と、師匠の身体を薄く包むように纏わりついていたのだ。
「少女…アンタ魔法使えたんだ」
「え?嘘、これ魔法?」
ペタペタと自分の身体を触ってみても、特に変わったことは無い。
これが、私が初めて魔法を使った時、
長いこと世話になる事になる《フィールドプロテクション》の魔法を使った時の出来事だった。
唐突すぎて感動も何も無かったけど。
 
「んー…少女はナイトメアだから、マナの使い方が上手だからかな?
 少女くらいの年で魔法使える子もいるっちゃいるけど…そうだ!声!」
「なんですか?」
「シーン様の声だよ、いつ聞いてたのよ。黙っているなんて薄情だなー少女は」
「いえ、聞いていたら師匠にいいますし。でも本当に覚えが無くて」
「なんだよ、少女は天才だったのか?何か悔しいなあ」
「はあ…」
 
今にして思えば。
シーン様が私に居場所を役割を与えるために、魔法を授けてくれたんじゃないかなと思った。
そう思うことにした。
神聖魔法の力で幾度と無く仕事仲間を癒し、助けたけど、
まだ私は、ちゃんと神様の声を聞いていない気がするんだ。
だけど私は、シーン様からも、
母さんや師匠と同じくらい、返しきれないくらいのご恩を受けたという事は、間違いないんだ。
 
へべく
アニー@amasiz SW2.0