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十五の日、風雪激しく
「今帰ったぜ」
告げる野太い声に黒髪を靡かせると、
その人は立ち上がった。
「いやいや、本格的に吹雪いてきやがったな……まず酒、んで飯頼む」
「……レッド、まず何か言う事は?」
「あー、明日見回り減りそうだ」
……髪を揺らし、溜息をつく女性。
「……いなくならない程度にしてね」
「ありゃあ、あいつらがヤワすぎるのもいけねぇな。ま、気を付けるけどよ」
悪びれた様子も無く答える。
「で、レディオ?」
「あん?」
「他に、何してきたの?」
   袖口に返り血、胸下辺りに鉤裂きのある法衣。
頬の下辺りに出来た青痣。
そして何より。
「……誘拐は大罪よ?」
……産着に包まった、赤子。
「……あのな、セフィリア。仮にも旦那、しかも三人ガキ作った相手に言う言葉か?」
肩からずれる負ぶい紐。
「たまには、仕返しをする権利もあると思うけれど」
鈴を転がした様に笑う、セフィリア。
「ったく……」
「……それで、どこから攫ってきたの?」
一しきり笑うと、済んだ青い視線を、レディオのそれに絡ませた。
 
   って、訳だ」
「そう……」
暖炉の前。
食後酒を傾けながら話す二人。
「奴らの風体から言って、金目当ての勾かしじゃなさそうなんだがな」
「そうね……金銭目的なら、この宝石袋を手に入れた時点で解放していてもおかしくない」
そう言って、黒装束から手に入れた物の一つを手にする。
「むしろ、仕事の報酬と考えるのが正しいかしら」
「報酬だぁ?」
「ええ……っと、ほーらよしよし、お着替えしましょうねー」
そう言って、慣れた手つきで産着を着替えさせていく。
「おい……?」
「ね、これを見て」
薄桃色の衣を着換えさせ、卓上に広げる。
「……妙にいいもん巻いてると思やぁ、紋付きか」
「そういう事。 多分、家督関係で何かあったんでしょうね」
「ったく、きな臭ぇ話だ」
「問題は……親元へ戻すのが難しい事ね」
「そりゃお前、んなゴタゴタしたとこに返す訳にゃいかねぇだろ?」
「そういう事じゃなくて、ね。 ……多分この子、この国の子じゃない」
「なにィ?」
「私も職業柄、ある程度は貴族の紋も見知っているけれど……基礎的な紋が多い、オーファンの物でないのは確か。
 それに、これは多分だけれど……旧ファン王国、ファンドリアの紋章にも、当てはまる心当たりが無いのよ」
「んじゃ、どっから来たって事になりそうだ?」
「確証はないけれど……帰り道って事は、東門。 西は考えにくいわね。
 それと……絹の薄紅は、東方の樹木で染色する物だった筈」
再び紅絹に目を落とし、言葉を紡ぐ。
「つまり、東で樹木が育つ所……エレミア以東、って事か。
 またえらい逃避行してきやがったんだな、あいつら」
「無論、ロマールへの貿易品だった可能性もあるけれど」
「どっちにしても、そうほいほい探しに行けるとこじゃねぇ事だけは確か、ってか」
「それで、どうするの?」
「めんどくせぇが、資料漁りするしかねぇだろ」
「そうじゃなくて、ね?」
獲物をいたぶる、猫の様な眼で尋ねる。
「……しょうがねぇだろ。
 猫じゃあるめぇし、今更捨てる訳にもいかん」
苦虫を噛み潰したような顔で、頬をかく。
「ふふ、そうね。 まずは……乳を分けてくれる人ね」
「重湯じゃ駄目か?」
「完全に切り替えちゃうのはね」
「そうか、その辺は俺にゃ判らんとこも多いからな、任せた」
「後は一つだけね」
「何かあったか?」
顎に手を当て、考え込む素振りをする。
「そういう何かじゃないけど。 名前」
「何だよ、そんな事か」
安堵の吐息。
「そんな事とは言うけど、大事な事よ? 一生ついて回る物だし。
 できれば、本当の親御さんにも所縁のあるものにしてあげたいけれど……」
「そこまで義理立てするようなもんか?」
吐き捨てる。
「家と、家族である事は別よ」
一瞬の静寂。
「……判ったよ」
節くれ立った手が、短髪を掻き回す。
「産着よこせ、手掛かりでも探すわ」
「ええ」
凪の海のような目が、緩やかに細められた。
まぁ日記ネタは他にも幾つかあるんですが……詳細書いて面白そうなのは多分これくらいかなーとか。
NO@アリア SWRPG