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All you need is. (Love) 

feat. ばる (闇市の少女人形)(Thx a lot!!)
 ふまじめな自分。
 軽い自分。
 舌がよく回る自分。
 笑顔だけは上手な自分。
 
 世界はそんな俺にも優しくするほど余裕のある奴じゃない。
 
 
 冒険者、という職業はこっちから選んだものではない、と思っている。
 ただ旅をしてみるつもりだった。
 しばらくは気ままな日々を送っていてもよかったけれど、革袋の重みは、減る一方の路銀の量を主張してくる。
 なんの仕事もしていないのに貰えた金だった。
 いつか使い切ってしまうのが怖い金だった。
 そんなに財布に痛くない宿を探していたら、それが、冒険者の宿というものだった。
 
 しばらく逗留して、それなりの作法を見聞きしてから仕事にありつく。
 そう、何ごとも始めるときは作法というものが必要だ。
 しかし、気持ちの中には何にも縛られたくない自分が大きく育っていて、せっかく作り上げたムードを壊すような振る舞いも時々やった。
 結果的に周囲の人間を試すようなこともしたと思う。
 
 そうして学んだ冒険者という世界は、予想とは大きく異なっていた。
 遺物を探しては路銀に変える仕事だと思っていた。
 そういった物と同レベルに、我が身を取り引きされたこともあったから。
 お抱え冒険者、といった類の人間となら顔も合わせたこともある。
 でも飛び込んだ世界ではそうでなく、困っている人たちの声を聞くのが格段に多かった。
『お願いします』、
『ありがとう』、
 と。
 こんなにも言われる仕事だとは、思わなかった。
 
 
 冒険者と呼ばれるのも悪くないかも知れない、と思い始めた頃、懐かしき闇市の街で言葉の形を借りた錐が心臓を突き刺した。
 
『ハーフエルフの人形ならいくらで買うか、とね。こっちとしては倍ぐらいの値段を付けてほしいのだが』
 
 ああ。
 
 母と、妹と暮らした街だ。
 売るだとか買うだとかいう話は、正直、聞き飽きている。
『ハーフエルフだから、高値で買ってほしい』
 それこそは、自分が何度も舌に乗せた言葉だった。
 世界に優しくしてもらう価値がなくても、お金だけは裏切らない。そう思っていた。
 でもどうして今、見ず知らずの娘達のために親身になっている?
 事件を解決して金銭をもらうため?
 だったら、いなくなった娘がハーフエルフだろうがドワーフだろうが、関わりないはずではないか。
 どうして?
 
……その少女と目が合ったとき、わかった。
 赤の他人、だ。   でも別れたころの妹と同じぐらいの年格好だ。
 もし、妹だったら。
 お願いしますだとかありがとうだとか、自分のほうが言う羽目になっていたら。
   いや、もしかして、俺が知らないだけで、実際に妹はどこかで誰かに助けられているのかも知れない。
 
 
『ありがとう、お兄ちゃん』
 
 少女を見送って、顔を上げる。
 母と妹と暮らした、思い出の残滓が街並みにこびりついている。
 あの頃も今も、世界は俺に優しくなかった。
 それでも、誰かが妹に優しくしてくれていることを願う。俺の代わりに。
 それなら、誰かにそいつの兄の代わりに、優しくしてやってもいいんじゃないか。
 
 
 ふまじめな自分。
 軽い自分。
 舌がよく回る自分。
 笑顔だけは上手な自分。
 冒険者業、とやらを始めた自分。
 
 世界が俺に優しくなくても。
 俺が世界に優しくしてやることはできるだろうか。
 まだそれの、名前は見つからないけれど。
あれから一年。
GMが合唱ネタのノリで出してしまった13歳長耳妹が、ひっそりと波紋を呼びます……。
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紫嶋桜花@ディルウェン SWRPG