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Here and now
●セティのお話し


----------ゆらぎのはじまり
森に行き、木々の囁きや小川のせせらぎの中にいるのは好きだった
よく一人で森に行き、そして安らいだ
しかし、書の与えてくれる充実感はこの上なく魅力的であった

彼は都市(まち)に行くことを決めた
父がいることだしと、
優しい母と、明るい妹は快く見送る


----------探しものは何ですか
月日は流れ、魔術師ギルドに通う日々
おいてある書から受ける喜びは、未だにこの上無いものであった
そこにいつものように1つの便りが来た
そしていつものように「楽しくやっているよ」という慣れ親しんだ妹の字が目に入る

「……あれ…」

以前は友だちと大きな木に登ったよ、という話しばかりであった

「今日ねえ、友だちと木登りしたんだあ♪」

いつのまにか、森で精霊とともに遊んだことの話しになっている
ふと、思いだす

「やーぁい、お前はナンデ耳が長いんだよぉ」
「この災いの血めっ」

当時、彼にとってこの言葉の持つ意味より、書のもたらす喜びの方が大きかった
彼にとっては…

「……おかしいですね」

自然と妹のおかれている状況がイメージとして浮かんでくる
夢中で読んだ書には、ハーフエルフの歴史や生活について書かれたものもあった

葛藤が起きる…
村に戻り何かがしたい……

「……何ができる…?」

ワカラナイ

「差別はよく無いことです」とでも言うのか?

ソレデ、ナニガカワル?

「言われたら、言い返すといいですよ」と教えるのか?

ヨケイナオセワ、ソレハ、イエナイ

「私も、森に行き、木々の囁きや小川のせせらぎの中にいるのは好きでした」と、結局書いた

…とえりあえず村に戻ってから考える
…妹に励ましの手紙を送る
どれも彼には出来ないことであった
いや、出来たのかもしれないが、選択肢として最後に残ることは無かった


そんな折、兼ねてより声をかけてくれていた魔術師より手紙が届く
「我が研究室へ特待生として入学しないか?」と
しばらく考えてから、筆を動かし始めた
一度動き始めたそれからは、意味を持つ形が滑らかに象られていく
「……お断りさせていただきます………」
「…しかし、準特待生として門を通過した暁には………門下生として……」(*1)

元々、権力抗争などとは無縁であったその師より
ただ「期待して待っている」
と、返事をもらった


「そうですね。”トランスレイト”さえ扱えるようになれば……」
「一人でも、新しい書を読むことができそうですね」
読み込んで理解するための時間は、彼にとっては苦でなく至福の時間なのだ
カップに残っていた紅茶を飲み干すと、魔術師ギルドへ向かった
途中、草むらの影から何かの精霊が顔をのぞかせたような気がし微笑みがこぼれる(*2)
師への手紙を渡す前に、ある文献を探し始めた

「さて、寺子屋を開いた人が書いた文献はどこでしょうか……」


*1準特待生:魔術師ギルドへの試験合格者の中より、成績優秀な者へ特待生に準じて金銭面などを優遇する制度。そもそも試験を突破することが難関である。
*2彼はに精霊は見えない。

----------Here and now

りんご@フォルセティ SWRPG