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〜とある少女の物見遊山 おねーさまリスペクト〜
「ちっとも甘くも辛くもない話をしよう。あれは今から―」
 
 
 
つい最近のお話、ある集落にひとりのルーンフォークが生まれました。
少々ワケありで妙…いいえ、特殊な掟を敷いていたその集落では
【現世代】の途中からその掟を一新する事になっており
先のルーンフォークはその新たな掟の元に生まれた
【新世代】のうちの一体だったのですが…
 
 
「今日はおそとで武器のすぶりなんよ〜」
長年使っていると、ジェネレーターといえどいわゆる一つの
不具合というものが起こります。ええ起こりますとも。
外見データこそ入力期待値通りに生まれたその愛らしい
少女型ルーンフォークは、ちょっぴり残念なおつむと語尾を持っておりました。
 
 
「みんな自分に向けて撃つとケガが治るんよ、うらやましいんよ…」
少女―ガードベリーはみんなが出来て自分だけ出来ないそれを、実にうらやましそうに
―それこそ文字通り指をくわえてみています。
「――ガーリー」
そんな彼女の後ろ姿に声をかける姿がありました。
最近集落の外から帰ってきた【現世代】に区分される者では最年少、一番下の“おにーさま”。
集落の掟を一新する発端となった、集落内でも色々と畏れられているお人です。
“おにーさま”は長いロングスカートの裾を翻し、威風堂々といった風情で若い妹に問いました。
 
 
「ならば、まだ集落の誰もその先を知らぬ未知なる技を修めるつもりはないか、我が妹よ」
―練体術。集落の者達に魔動機術以外に己がマナの使途を見出させた
外から持ち込まれた技の一つであり、集落に知識を持ち帰ったのは他ならぬ“おにーさま”です。
“おにーさま”によく懐いていた少女は二つ返事でそれを承諾したのでした。
 
 
 
 
 
「『おにーさまへ。あたしはたびにでるんよ、さがさないでほしいんよ』
…うん、これでいいんよ、この前読んだおてがみの書き方どおりなんよ」
そう言って少女は兄宛の手紙に、近くにあった本を重石として乗せました。
【世代別優秀機体目録】―【現世代】以前の個体の中でも実力者と
認められた者が記録される、集落の年鑑的な意味を持つ分厚い書。
基本的に機能停止した者が記録される集落の墓碑とも言える
その書のあるページが少女の心の何かを惹きつけたのです。
 
 
「本に書いてあった“おねーさま”が行った所に行って
“おねーさま”と同じものを見て、“おねーさま”みたいに強くなるんよ。
強くなったら集落に帰って、おにーさまにほめてもらうんよ」
 
 
 
「行ってしまったか。行動から予測してそろそろではと思っていたが」
妹が置いていった手紙に赤いインクで添削を行いながら
“おにーさま”は何事か思案を巡らせます。
「少しばかり急がねばなるまいな」
そう呟く彼のの背後では、新たな命を生成すべく
母なるジェネレーターがうなりをあげていました―
 
―少女の冒険は、まだ始まったばかりです―
Atelier@ガードベリー SW2.0