偶然、というものは恐ろしいものです。
何十年と探し続けても見つけられなかった彼女。
そんな彼女に偶然と言うものはいとも簡単に会わせてくれるのですから。


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再会



「あとは…魔晶石をいくつか貰っておきましょうか」
「はいよ。ハノンさん、いっつもたくさん買ってくれるから少しおまけしちゃうよ」
「おや、ありがとうございます」
いつもの会話。いつもの風景。
そのはずだった。
「ハ…ノン?」
「え…?」
そこには…
「シャ…シャイナ…」
数十年前とほとんど変わらない彼女がいた…。
 
場所を変え、静かな冒険者の店。
店の中には私とシャイナ、そして静かに佇むマスターだけ。
「まさか、こんなところで会えるとは思ってなかったわ。40年ぶりくらいかしら?」
「…そうですね。私もまさかこんなところで会えるとは…」
「お互い変わったわね。外見はそうでもないけど」
「そうですね。昔の貴女はもっと明るい人でした」
「そういう貴方は随分と他人行儀になってしまったわ」
「お互い歳は取りたくないものです」
私は苦笑する。
「そうね…」
彼女は声を落とす。
きっと彼女は私よりもつらい人生を歩んでいる…。
「ねえ、ハノン。貴方のことを教えて?」
「私のこと…ですか?」
「ええ、冒険者になったのでしょう?噂はいろいろと聞こえてきてるわ。ハノンという名前を聞いて、貴方かもしれないとは思っていたのよ」
「それは…なんというか、すこし照れくさいですね…。私の拙い話でよいのであればお話いたしましょう」
私はシャイナにいろいろなことを話した。魔術師ギルドに入ってからのこと。旅に出たこと。冒険者になったこと。その間に出会った多くの人たちのことを。
「いろいろあったのね…」
「ええ。いろいろありました」
「私も…ね」
そういって彼女は左手を見せる。
その薬指に輝くのは金色のリング。
「…結婚されたんですね。おめでとうございます」
「正確には結婚していた、ね。あの人は…逝ってしまったわ」
そういって指からリングをはずす。
「そんな顔しないで。私は大丈夫よ。子供も居るんだから」
「子供…」
「そう。娘と息子がね。といっても、冒険者になるって言って2人とも出て行ってしまったけど。やっぱり血、なのかしらね。あの人も、冒険者だったから…」
「………」
「…ごめんなさい。また、暗くなってしまったわね」
「いえ…。あなたもがんばってきたんですね」
私は席を立って、彼女を後ろから抱きしめる。
「ハノン…」
「あの日から、貴女のことを想わぬ日はなかった…。今日、貴女に会えたのは奇跡中の奇跡です…」
自分でも意識しないうちに目から涙が溢れてくる。
「私も…あの人と結婚して、子供も生まれて…それでも心のどこかにはいつも貴方が居たわ…」
「シャイナ…」
「ねえ、ハノン。貴方がよければ…私と…」
「………」
私は彼女を抱擁から解放し、涙を拭う。
「そう…よね。子持ちの未亡人なんて…貴方にはもっとふさわしい人がいるわ」
「…すみません。今すぐには…私と貴女を隔てていた時間はあまりにも長すぎます…」
「そうね…。じゃあ、まずは…」
改めて、友達からってことで…。
そう言った彼女の笑顔はあの時と変わらぬままだった。
フロスト@ハノン SW2.0