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冒険者を志した理由
俺がまだ実家……小さな宿場町で冒険者や旅人向けの宿なんだが、そこで手伝いをしてたんだ。
そのころ兄貴は泊まりに来た冒険者のパーティーにくっついてあちこちに行って、手伝っていた。
俺はそのとき13,14くらいで、親父も許してくれなかったし、別段冒険者に憧れというものは持っていなかった。
 
その日、兄貴はいつものように、街道を通る商人の護衛にくっついていって、店には俺と、親父しかいなかった。
確か、母親はそのとき、遠くの町に用事があるとかで出払っていた。
2人で4人分の仕事をしていたので、毎日大忙しだった。
だから、親父の顔色が悪いのも、疲れているだけだろうと思った。
実際、大丈夫?ときいてみても、大丈夫、という答えしか返ってこなかった。
そんな親父がいきなり倒れたときも、過労だと思った。

でも違った。
翌日、親父は目を覚ましすらしなかった。
俺は一人で客の朝食を用意した。
泊り客はすぐに旅立っていく。
親父が起きないなら仕事どころじゃない。
客が出かけると、『CLOSE』の札を作って店の前におき、町の医者のところへ出かけた。

正直、どうすればいいのかわからなかった。
医者が諸手を挙げて投げ出してしまったのだ。
症状はただ眠っているだけ。
それ以外はまったく正常なのだそうだ。
困った。
頼れる人がいない。
自分には何もできない。

途方にくれていると、店の戸を叩く音がした。
閉店の札は出ているはずなのに。
今日は無理だよ、と声をかけようと戸を開けた。
どうやら冒険者のようだった。
3人組みで、見たところ戦士、神官、精霊使いだろうか。
無理だ、と声をかけようとして、言い直した。
すまないが、力を貸してくれないか?

事情を説明した。
彼らはどうやらいい人のようで、親身に話を聞いてくれたし、親父を診てくれた。
神官、マーファの信徒らしい、は病気を治す奇跡は使えないんだ、と悔しそうに言った。
精霊使いの女性も、同じようなことを言った。
精霊使いは、しかし、病気の原因はわかる、と教えてくれた。

戦士はこの病を治す薬を知っていた。
どうやら戦士としてだけではなく、賢者の知識も持っていたようだ。
彼らの話を聞いて、何とかして薬を用意した。
無理やり、寝ている親父の口に流し込んだ。
 
しかし、親父は目を覚ましてはくれなかった。
もう、できることはないのだろうか。
その時、精霊使いが、魔法を使ってみる、といってくれた。
とても張り詰めた顔をしていた。
なぜ、最初から使ってくれないのか、すこしの苛立ちとともに部屋の外で待っていた。

しばらくして、精霊使いが出てきた。
つかれきった顔をして、もう大丈夫だよ、とだけ言って気絶してしまった。

次の日親父は目を覚ました。
こっちの苦労なんて知らないかのように、ぴんぴんしていた。
冒険者たちにお礼をし、見送ろうとしたとき、神官が耳打ちしてきた。
彼女は本当は病気を治すような魔法は使えない。
限界を超えて、ともすれば精神が壊れるかもしれない危険を冒していたのだ、と。

俺は恥じた。
彼女はできることをしなかったのではなった。
できないことをしてくれたのだ。
俺のために。親父のために。
 
俺は、この日、冒険者を志した。
誰かを、救えるようになりたかったから。
誰かのために。
ばる@ハーク SWRPG