──拙者には友がいる。
 種族や戦い方など正反対な彼女だが、出会った頃から妙にウマがあった。
 今となっては実力も名声も、かなり引き離されてしまったが、友情は変わらず続いていると思う。
 ただ……
 
「というわけで着ると良いのでございますよ。」
 
──事あるごとにメイド服を持ってにじり寄るのは勘弁して欲しい。


×
38,000G



「何度も言ってますが、拙者にはそういうのは似合わないと思うんですよ。」
「ふふふ。冗談は回避力の高さだけにしておくべきでございますね。」
「その回避も最近は後進に抜かれてるので…」
 
──山に篭っていたら色々変わってて吃驚したものです。
 
「そんな貴女にオススメの回避力が上がるメイド服があるのでございますよ。」
「それ38,000Gするじゃないですか。そんな蓄えはありませんよ。」
「山篭りばっかりしてるからでございます。こうなったら一緒に適当なナマモノ狩りの仕事でも…」
「貴女がそういうの請けると駆け出しとか一人前程度の人たちの仕事が無くなるから却下です。」
 
──偉くなっても殲滅好きは変らない様で安心する。
 
「それにですね。」
「なんでございますか?」
「そのメイド服、拙者には重いので着れないですよ。」
「…私の気持ちがでございますか?」
 
──いやそうではなくて。
 
「重量的に。」
「回避ばっかり鍛えているからでございますよ。」
「そういう剣なんですから諦めてください。」
「むむむでございます。」
 
──出会ったから変らないやり取り。
 
「じゃあやはりここは私が昔着てたシャンデル製のメイd」
「だから似合わないと。」
「もう、どうしたいと言うのでございますよ。」
「ええ〜、拙者が悪いのですか?」
 
──ああ、そうだ。折角だし聞いておこう。
 
「といいますか、何で拙者なんです?」
「?」
「貴女が誰かに直接メイド服を渡すのって、要するに貴女の系譜に迎えるってことでしょう?」
「そうでございますよ。なので、いい加減受け入れて欲しいのでございますが。」
「拙者なんかより強くてメイド服が似合いそうな人がもっと他にいるじゃないですか。」
 
──拙者は所詮”ベテラン”の領域。
 第一線で戦い続ける彼女の身内となるには役者不足だ。
 
「出会った頃とは違いますし。貴女の格に合わないでしょう?」
「……なるほどでございます。」
 
──友情は変らない。
 だけど、拙者では彼女の戦力にはなれない。
 そういうところを気にする拙者が少し嫌になる。
 
「まったく。何度も言うのでございますが、冗談は回避力の高さだけにしておくべきでございます。」
 
──だけど彼女は
 
「私は貴女が欲しいのでございますよ。”クー・ルナイト”」
「私の友人であり、常に高みを目指す剣士である貴女が。」
 
──照れもせず、真顔でそんなことを言う。
 
「拙者は……そんな良い者じゃないですよ。」
「私の主観ではそんな感じでございますから、仕方ないのでございますよ。」
 
──まったく
 
「……はぁ、分かりました。考えておきますよ。」
「よろしい。では買い物でございます。」
「またいきなりですね。」
 
──敵わないな。
 
「いいメイド服を見ていたら、その気になるのが早まると思うのでございますよ。」
「それを言ってしまうのはどうかと思います。」
「いいからいいから。では出発でございますよ。」
「はぁ……承知。付き合いますよ。」
 
──でも
 
「拙者は見るだけですからね。」
「ついでにカードとか買うつもりでございますけど、必要ないのでございます?」
 
──そんな彼女の友人に相応しい自分でありたいと思う。
 
「38,000G貯めないといけませんからね。無駄遣いはできません。」
キャスター@クー&SSたん SW2.0