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かぞく
   − 家属 −

……物心ついた時には、もう、そういうものなんだと思っていた。
 
何でもやらされたし、出来なければ殴られたり蹴られたりした。
出来ても、殴られたり蹴られたりした。
罵声を浴びせられるのは当たり前だった。
 
村の大人達は目を合わせようとせずに僕を避けた。
子供達は「悪魔が来た」と嘲笑い、囲んで暴力を振るったり服を脱がしたり汚物をぶつたりした。
父や兄(そんな風に呼ぶと、また殴られたが)には「親殺し。母さんの代わりにお前が死ねば良かったんだ」と言われた。
 
でも、そういうものなんだと思ってたんだ。
痛いのや苦しいのは我慢できたし、その当時の僕は悲しいとか寂しいとか感じる事も無かったと思うから苦じゃなかった。
嬉しいとか楽しいとかも感じなかったけど。
 
僕が生まれる時、この角で母を傷つけて、母はその傷が元で死んでしまったらしい。
ひどい事だと思う。そんな事をした奴は許せないと思う。
なのに、父と兄はご飯をくれるし、僕を殺さないでいてくれた。
だから、父と兄は憎みながらも僕を家族と認めてくれてるんだと思ってた……。
 

   − 過族 −

……肉の焼ける匂い。
 
右目は痛すぎてどうなってるのか判らない。
辛うじて動く左腕を突っ張っても、圧し掛かった柱は少し傾くだけで、それ以上はどうにもならなかった。
左目に涙で滲んでいたのが、煙のせいだったのか、痛さのせいだったのかは、感覚が麻痺していたから良く判らなかった。
耳も、もう良く聞こえてなかったから、自分がどんな声を出してたのかもよく判らなかった。
でも霞んだ視界で見た物は覚えてる。
こちらを一瞥もせずに、家財を運び出して行く父と兄の後姿はしっかりと覚えてる。
家財を持ち出して外に出た行った父と兄は、いつまで経っても戻ってこなかった。
家中が全て炎で覆われ、視界が全て炎で覆われ、血色の炎になっても戻ってこなかった。
 
初めて悲しいと思った。
 
 
  − 家族 −

……からかうような声。「ルスファは甘えんぼだねぇ」「ほらほら、それじゃ当たらんぞ」
 
何度もあの日の夢を見た。
最初のうちはベッドで震えているだけだった。
ある時、お母さんが震えてる僕に気づいて、黙って抱き締めてくれた。
その日から、悪夢を見た時はお母さんに抱き締めてもらいにいった。嬉しかった。
次の日から、お父さんが剣の使い方を教えてくれるようになった。楽しかった。
しばらくは焼いた肉を見ると吐き気がして食べられなかった。
そうしたら、ちょっと焦げたオムライスが出てきた。
「初めてだから、少し失敗しちゃった」「動物のもん食わねえと強くなれねぇからな」
焦げてた上に何故かしょっぱかったけど、こんなに美味しい物は無いと思った。
 

   − 華俗 −

……どうも、僕の服装はちょっとおかしいらしい。
 
痕は残ったけれども、お母さんの魔法のお陰で火傷は程無く良くなった。
それまではダブダブのパジャマを着せられていたけれども、外にも出れるように服を用意してくれた。
最初は、外に出るとまた昔みたいな目に合うんじゃないかと思って怖かった。
外は村とは比べものにならないくらい人がいっぱい居て、ますます怖かった。
「一緒に買い物に行こう」と言うお父さんとお母さんの後ろで小さくなってると、声をかけられた。
「おやまぁ、可愛いお嬢ちゃんだねぇ」
首を横に振って否定したけども、お母さんがちゃんと説明するまで信じてもらえなかった。
 
……今では、そういう服以外を着ると落ち着かない。
 
犬樹@ルスファ SW2.0