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僕の唯一の家族
 ばっちゃの話?いいよ!聞かせてあげる!僕が初めてばっちゃと会ってから暫くの話だけどいいよね?
 
ばっちゃはね、兎に角凄いの!
髪の毛白いんだけど、デスサイズを芝刈りに使ったり、ボールメイスをすりこぎに使ってた!僕が持とうとしても地面から持ち上げることもできなかったよ!
一回、「どうしてそんな重いの使ってるの?」ってばっちゃに聞いたら、使い慣れてるからだって言ってた。
そんなばっちゃと僕が出会う切っ掛けになったのは、本当に偶然
いつの頃からか、気がついたら一人で気がついたらラクシアに居た。
だけど、そんなことが気になるグラスランナーじゃないよね?
直ぐにヒラヒラ飛ぶ蝶を見つけて、それを追いかけ始めたよ。暫くしたらお花見つけたからそっちに興味が移って、暫く眺めてたら商隊のキャリッジが通りかかったんで、それを追いかけてた。
そんな感じに風が向かずとも気の向くまま。あっちこっち渡り歩いて何年くらいかなぁ?
蛇を追いかけてたら、気がついたら山の中。右も左もわからないくらい深い山で、おまけに食べられそうな草もなかった。
まあ、そんな状況を危機的に思うはずもなく、さっき見失った蛇を探してたら、ガサガサって音がした。
「なんだい、獲物かと思ったらグラスランナーかい」
「……おばちゃん、だれ?」
「誰でもいいよ、好きに呼びな。で?なんでお前さんはこんなところにいるんだい?ここは危険な場所だよ。離れたほうがいい」
「そうなの?」
「ああ、そうさ」
「ふーん……じゃあ、おばちゃんについてく」
「……ハハハ!いいだろう、着いて来な」
「わーい!」
先行く武器を背負った背中を追いかけて山を降りる。
その道中、巨大な咆哮が聞こえてきたけど、その時の僕は気にかけることはなかった。
だって目の前の大きな武器二つの方が面白そうだったし。
 
 
ばっちゃについていった僕は、そこで味をしめた。
遊びに行けばご飯が貰えたからね。あちこち遊び回って、日が暮れたら決まってばっちゃの家に帰ってご飯を食べた。
罪悪感は皆無だったけど、ある日、それこそふと気が向いたから、ばっちゃのお手伝いをしてみた。
00:44:55 *** minamina has left IRC(Ping timeout: 121 seconds)
思った以上に重労働。ばっちゃがホイホイやっていく作業を見ながら必死に手伝って。
それでも、気がついたら日が暮れる程度には熱中して。その日食べたご飯は凄く美味しくて。
それからはよっぽど興味があるもの以外追いかけることはなく、ばっちゃのお手伝いをすることにした。
そんなある日。ばっちゃの家にあった僕の寝床から覚めたら、ばっちゃがいなかった。
お仕事かなって思ったけど、畑にもいなくて。探して回っても見つからなくて。
そんな中、蛇が一匹、ばっちゃと初めて会った山の中に入っていったのを見かけたから、そっちに入った。
前と同じくらい深い山。あれから一度も入ったことはなかったその場所は、前と全然変わっていなかった。
「蛇〜♪」
ニョロニョロって先を行く蛇を追いかける僕。
だけどそのうち、蛇は僕じゃ登れない木の上に登って言って追いかけられなくなって。
諦めて帰ろうとしたら、自分がどこにいるのかも分からなくなった。
「あれ?あれ?」
右を見ても左を見てもわからない。草や虫がたまに教えてくれるけど、この場所は危ないって言ってるだけだった。
完全に困って、どうしようもなくて。その時、あの時も聞こえた咆哮が聞こえてきた。
その瞬間に湧いた好奇心。何者なのかと、咆哮の導くままに山を進んで。
出た先に居たのは巨大な影。
後で知ったその名前はガルーダだった。
響く咆哮。近づいた結果、奇声とも呼べそうな甲高い声。
その瞬間、初めて僕は恐怖を覚えた。
怖い、怖い、怖い。
何が怖いのか、それすらも分からない程に。
やがてガルーダは近くにいる小さな僕に目をつけた。
その目に僕は獲物としてしか映ってなく、手始めにと再び上がる奇声。
完全に腰が抜けて、膝が曲がった。力なく座り込んで、ガルーダを見上げることしかできず。
ガルーダがいざ僕を食べようと、一度飛び上がり、僕めがけて滑空してきた。
落ちた腰じゃ避けることもできず、迫り来る畏怖から逃避しようと僕は目を閉じて。
だがいつまで経っても衝撃は来ず、代わりに甲高い金属音が聞こえてきた。
「え?」
訳が分からず、ゆっくりと目を開けると、そこにいたのは見慣れた布装備、アストラルガードに身を包んだばっちゃの姿。
その手に持ったミスリルシールドでガルーダの突進を止めたばっちゃは、逆の手に持ったミスリルアックスをゆっくりと振り上げる。
「あたしの可愛い家族になにしてるんだい」
神々しい武器の輝きに反して、薄ら寒い地の底から響きそうな怒声と共に、斧が勢いよく振り下ろされる。
振り下ろされた斧はガルーダの頭部に当たり、地面へと叩きつけ。
地面へとクレーターを作ってみせた。
「うわぁ・・・」
「上等だよ。アンタがうちの子食おうってんなら、あたしがアンタを食ってやる」
『GYAAAAAAA!!!』
ばっちゃのその言葉が開戦の狼煙になったのかは知らないけれど。
その言葉の直後にガルーダは斧を振り払って飛び上がり、空からばっちゃを睨みつけ。
ばっちゃもまたどっしりと斧と盾を構えてガルーダを睨み上げる。
「ほれ、少し離れな。ここは危ないよ」
「う、うん・・・」
ばっちゃの言葉に頷くしかなく、僕は慌ててその場を離れたから、戦いの過程は知らないけれど。
一時間くらいして、ガルーダを引きずって現れたばっちゃを見れば、どちらが勝者かは一目瞭然だよね?
 
 
 
「この、バカタレ!」
言葉とともに、げんこつが振り下ろされる。
すごく痛くて、頭を抑えて屈みこんだ僕に、ばっちゃは言葉を続けた。
「なんで山に入ったんだい!おとなりさんが教えてくれなかったら、間に合わなかったかもしれないいんだよ!」
「・・・ごめんなさい」
痛みで目尻に浮かんだ涙で見慣れたばっちゃの姿やばっちゃの家がぼやけて行く。
それでも涙が流れないのは、多分グラスランナーとして興味あるものに近寄っただけだと考え、深く反省していないからだった。
「全く、アンタは……。どれだけ心配したと思ってるんだい」
そういったばっちゃは、ゆっくりと僕を抱き上げ、抱きしめた。
「アンタが山に入ったって聞いたときは生きた心地がしなかったよ。もう会えないかと思ったじゃないか」
「・・・」
ばっちゃの言葉。
もう会えないとそう言われ、再び生まれる恐怖心。
ガルーダと対峙した時と同じその恐怖心が、何に対しての恐怖なのか僕はようやく分かった。
死んじゃうことは怖くない。だけど、死んじゃってばっちゃに会えなくなることは凄く怖い。
それが分かり、ダムが決壊したように涙が流れた。
ああそうだ。ばっちゃも僕と同じなんだ。
会えなくなることが怖くて、だから怒ってるんだ
それが分かると、再び「ごめんなさい・・・!」と言葉が漏れる。
心の底から、本気の。初めての謝罪だった。
「ごめんなさい!ごめんなさい・・・!」
「いいのよ、もう。あたしもちゃんと説明してなかったし。でも、今度からは気をつけてね?」
「うん!うん!」
頬を伝う熱い雫。自分の物だけでなく、上から垂れてきたばっちゃの雫も混じっていることにも気がついたら、また泣いて。
結局、その日は泣き疲れて寝入るまでずっと泣いていた。
  
 
翌日。
目が覚めるとまたひとり。慌ててばっちゃを探すと、今度は畑仕事をしていた
僕に気がつくと、笑顔を向けて「おはよう」と一言。
「おはよう。ばっちゃ」
「ばっちゃ?」
「へ?・・・あ、そうじゃなかった。おばちゃん」
喉が枯れててうまく発音できなかった舌っ足らずなその言葉だったけど、ばっちゃは笑ってこう言った。
「いいじゃないか。ばっちゃ。気に入ったよ。これからはそう呼んでおくれ」
「・・・まあ、ばっちゃがそう言うならいいけど」
「なら頼むよ」
「うん。あ、道具持ってくるね。畑仕事手伝うから」
「お願いね」
「分かった」
なんとなく照れくさくて、慌てて家の方に駆け戻って僕は農具を取りに行った。
僕が、リーシェ・エルソワーズって名前をもらうのはまだ先の話だけど、この日から僕とばっちゃは家族になったってそう思うよ。
 
 
END
みなみな@リーシェ SW2.0