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Would you marry me?
「ねえ、ジェシカ。ついてきてほしい所があるんですけど」
ロジャー・グライスは許嫁ジェシカ・ラングフォルドにそう切り出した。
『なぁに。改まっちゃって。ちょっと待ってね。お父様に外出してくるって言ってくるわ』
そう言って、ジェシカは一度部屋を退室した。
 
自分は今どんな顔をしているだろう。ロジャーはふと思う。
確認するのが怖いくらい、顔から火が出そうだ。
そう、自分は今、人生における大きなイベントの一つに手をかけようとしている。
――結婚。
 
ロジャーは魔術の素養(と言うよりはマナの容量)を、
ジェシカの父ウォルター・ラングフォルドに見い出され、魔導師として腕を積むとともに、
ラングフォルド家の存続ためにジェシカの許嫁となった。
半ば政略結婚的な形ではあるものの、ロジャーは少し年下のジェシカを大切に想ってきた。
ジェシカもロジャーの事を…態度から読み取る限り、憎からず思っているはずだ。
ロジャーを迎え入れたのはウォルターなのだから、相手の親の承諾は当然ある。
 
つまり、障害となるものは何も、ない。
あとは自分の決断だけ。
 
『お待たせ、ロジャー。さあ、どこに連れて行ってくれるの?』
「ええ、目的地に着くまで秘密…です」
『あら、そういう演出? 珍しい。いいわ、じゃあ任せるわね』
 
「……」
『今日はいい天気ね』
「そうですね」
街中を歩きつつ、他愛もない会話を繰り広げ…いや、いつもより硬くなっているかもしれない。
時々不自然な沈黙が混ざりつつ、ロジャーたちは目的地に向かって進む。
 
「……さあ、着キました」
なんだか、少し変な声になってしまった。
『ここって…』
リルズ神殿。
フェンディルの若い男女がここで結婚の誓いを立てるという流行があるという場所である。
 
「ジェシカ、い、今、改めテ言いマす。
 私と将来を共にすル仲に――私の妻になってくダさい」
次にジェシカが言葉を発するまで、時が止まった気がする。
本当は一瞬でしかないのだろうが。
 
『……ぷっ、うふふ。可笑しい。
 もう、ロジャーってばそんな大事な言葉で噛まないでよ』
「そ、そう言われても…」
『はい、喜んで。ずっと待ってたわよ、ロジャー』
「ジェシカ…!」
『きゃ…』
気が付いたら思わず、彼女を抱きしめていた。
周囲の目を気になんて…まあ、この周辺にいるのは誓い合うカップルばかりだろうが。
 
『さあ、行きましょう、ロジャー。ここに来たのが目的じゃなくて、ここからが始まりでしょ?』
「は、はい。式の段取りとカ、決めないとと思ってデすね…」
『でも、キルヒア式でなくていいの?』
「え、このことに関してはこちらの方が、ご利益あるかなと思ったんですが…
 神同士仲たがいもないですし、キルヒアの方式も取り入れてもらえると思いますよ」
『そう? お父様結構古風な人だから、お気に召さなかったりして…』
「ええっ? そ、それは困ります…」
2人はそんな会話を繰り広げながら、リルズ神殿の中に入っていった。
 
そう、私たちはこれから3度目の始まりを迎えるのです。
最初は初めて出会った時。2度目はジェシカが事故による長き眠りから目覚めた時。
そして、3度目、これからは夫婦として…。
 
-END-
よしの@ロジャー SW2.0