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なにみてはねる
−故郷でのこと−

「、、、いいですか?気をつけなさいと、あれほど教えましたよね?」
気がつけば、ボクはこの孤児院で暮らしていた。
「ここで騒ぐのは危ないと、言いましたよね、ジョン?」
目の前には、うつむいた人間族の男の子が一人。
語りかけるボクの声が聞こえないのか、ジッと押し黙ったまま立っている。
「聞く耳まで壊れてしまいましたか。それでは仕方ありませんね。そのままそこにいなさい。」
ジョンを放置し、棚から落ちて壊れた花瓶を拾い集める。
雑多に物を詰め込んだ物置部屋。
足の踏み場はあるとはいえ、油断すればどこから何が落ちてくるかわからない部屋。
だから、年少組にはこの部屋の立ち入りを禁じていたのですがね、、、
そんなことを考えつつ、作業を続行する。
花瓶は思いの外大きかったようで、破片の量も多い。
ぶつかれば、ただでは済まなかっただろう。
ふと見れば、部屋の隅でブラウニーが小さくなっている。あの子のことだから、花瓶よりジョンを優先してくれたのでしょう。
そういえば、貰い物のミルクが残り少なかったですね。
ケンカになってもいけませんし、あの子にあげてしまいましょう。

「イタッ、、、」
油断していたのか、集めた欠片で手を切ってしまった。
じわりと朱色が手に広がっていく。
ヒトとは違う、毛の生えたボクの手、、、

いつからだっただろうか、養父と自分の姿が違うことを認識したのは。
  「おとうさんはなんでけがはえてないの?」
いつからだっただろうか、ボクが自分の出生に疑問を持ったのは。
  「どうして、おとうさんといっしょじゃないの?」
、、、いつからだったのだろうか。
 「ねぇ、おとうさん、」
ボクが、自分の名前を疎むようになったのは。
  「どうして、ボクにこんな名前なんて付けたの、、、。」

ボクの名付け親は、ボクを拾った養父。名前の意味は「祝福された妖精」。
捨て子に祝福もないものだと思ったが、名前はもう変えることは出来ないらしい。
そもそも、何故捨て子を拾ったくらいで孤児院など始めようと思ったのかがよくわからない。
もっとも、理解する必要は無いように思えるのだけれども。

「、、、ぇんなさい、、、ごめんなさいーっ!」
ふと気づくと、傍らで鳴き声が聞こえる。
先ほど固まってしまったジョンが、いまや大粒の涙をこぼし、泣いている。
「じーにいぢゃん、ごべんなざいーっ!」
「、、、悪いことをしたのがわかったなら、いいですよ。」
反省したようなのでそう声をかける。
じっと押し黙っていたジョンが何故いま泣いているのか、よくわからないけれど。
頭を撫で、ようと手を挙げたが、右手に怪我をしていることを思い出す。
左手でなでようとすると、
「ごべんなざいーっ!」
また泣き出してしまった。叱るつもりはもうないのですが、、、。
そのまま少し考え、
「、、、花瓶を壊したのも、約束を破ったのも、もう怒ってはいませんよ。」
そのまま左手で撫でたが泣き止む気配がなかったので、ジョンの事は通りかかった養父にまかせることにした。
子どもというのはやはりよくわからない。

後日、どこかおどおどとジョンが謝りに来た。
右手で撫でると、ジョンは少し驚いた顔になってから、撫でる右手を見つつニコニコと笑う。
やはり子どもというのはよくわからない。



−旅立ちのこと−

ここ数日、養父の様子がおかしい。
ふらりと街に行ったかと思うと、暗い顔で帰ってくる。
気になったので養父の書斎に忍び込んでみた。
鍵の隠し場所などすでに知っている。
乱雑に置かれた紙や本。書斎机の上には手書きらしきノート。
そのノートには、孤児院の現状が書いてあった。
曰く、運営費が足りないらしい。
それはそうだ。稼ぎは少なく、出費だけ増えていくのだから。
先日読んだ本によれば、タビットは6歳以上で成人に扱われるらしい。
それならば、ボクが出ていくしかないだろう。
普通に働いても収入が見込めない現状では、やはり冒険者になるしかないだろうか。
こっそり教えて貰っていた魔法もある程度使えるようになった。
冒険用のものは、私物で何とかなる範囲だし、物置に古びた盾が隠されているのを、ボクは知っている。
それに、ボクが減れば一人分とは言え余裕がでて、家も長続きするはずだ。
さて、行こう。
書き置きを机に残し、誕生日プレゼントに貰った帽子をかぶる。
目標は、1万ガメルだ。
さっき思いついた設定。
彼の名前「Seelie」。
嘘を見ろ(See Lie) 彼の嘘とは内か外か?
その奥に、何があるのでしょうね。
、、、単なるデレ分だったりして(笑)
しん@シーリー SW2.0