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エクレア
ボクは牧場に来ていた。それも家畜を育てるものでは無く、軍やライダーギルドに卸す騎馬を育てる牧場に。
自分の馬が欲しい、と思ったのは大層なこだわりがあるわけじゃなく、単に一々ギルドに顔を出して、面倒な手続きをしなければいけないのが煩わしかったからで。
だから何でも良かった。丈夫で言う事を聞く馬なら何でも良かったので、牧場で馬を眺めていた。
 
「…なあ坊主、もうすぐ日が落ちるしよ…家に帰ってくんねえか?」
柄の悪い厩舎員が、柵の前で座り込んでいるボクに声をかける。
「ずーっと馬見ててよお、何が楽しいのかわがんねえがよお、ずっと居られても困るんだよ」
冷やかしだと思われている事は理解したので、彼の目の前に金貨袋を突きつける。
「買いに来た」
「…最近の親ってのは、こんな子供に大金持だせるんだなあ」
怪しく思われるのは慣れているし、無視することも慣れてきた。
 
いよいよ夜の帳が落ちようという頃、一頭の小柄な馬がボクの所に近づいてきた。
柵越しに顔を近づけ、鼻を寄せる。
そいつはちょっと気になってた馬だった、伸び伸びと気持よさそうに走る栗毛の馬。
近くで見たら牝馬であることも分かった。
「見られてるって分かったのかな、わざわざ近づかなくてもいいのに」
「こいつは変な奴だがらな」
厩舎員はそう言ったが、五体満足、健康そうに見えたのだが、
「め゛〜」
「……」
「な?変だろ」
「うま゛〜」
なるほどと思った。
「この子を買うよ、いくら?」
「いいのか?」
「気に入った」
はあ…と嘆息していた男も、金貨袋を渡してやると中身の勘定に夢中になった。
 
「すぐ終わっちゃうかも知れない。案外、長い付き合いになるかも知れない。
 この子はカエルのキルケー。仲良くしてね」
「ギゴギゴ」
「ま゛ー」
「君の名前はエクレア、雷の名前。ボクの魔法と一緒に、頑張ろう?」
「ま゛ー♪」
 
別に、変な鳴き声だったから選んだわけではない。

おしまい
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