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雛人形選び(ひな人形選び) 2002.03.10公開、2009.03.16 写真追加しました


岩槻の小木人形さんで購入した、我が家の自慢のお雛様です。画像をクリックすると拡大画像が表示されます。


二人の息子のための五月人形(兜)も岩槻の小木人形さんです。日光東照宮宝物館所蔵徳川家康公 関ヶ原御陣御着用 南蛮胴具足(重要文化財)の兜を模したものですが、銅色に輝く実に見事なものです。同じく画像をクリックすると拡大画像が表示されます。


昨年(2001年)の4月に娘が産まれ、私たち夫婦も晴れて人の親になったのですが、年末を迎える頃から、様々な人形店から雛人形のダイレクトメールが届くようになりました。封筒に貼ってある宛名シールの様式はだいたい同じですので、市役所の住民登録データを専門の業者が拾ってきて人形店に売っているようです。話には聞いていましたが、実情を目の当たりにすると感慨深いものがありました。最初の娘のお雛さまです。じょうずな雛人形の選び方を考えなければなりません。


人形店の商売について少し調べますと、以下のようなことが分かりました。

1. 人形店が商売をする機会と言うのは、ひな人形と五月人形の実質年二回しかない。12月−2月に御雛様を売り、3月−4月に五月人形(兜、コイノボリなど)を売る以外は、年の半分以上は開店休業状態になると思われる。

2. 女の子が生まれるとお雛様を買い、男の子が生まれると五月人形を買うと思われるが、その機会は一回限りである。同じ人が人形店を再度利用する可能性は低い。

3. 商売と言うのは、信用を大事にして得意客を作り、反復して取引してもらうのが基本だが、人形店にはこの原則が通用しない。口コミによる販促効果を期待する以外は「信用第一」が必ずしも店の利益にならない。

4. 人形と言うのは、別にブランドや定価があるわけではないので、値段はあって無きが如しである。その人形が正しい値段かどうかを判別するのは、買い手の眼のみである。

5. 東京周辺では、埼玉の岩槻市(現:さいたま市岩槻区)、同じく埼玉の鴻巣市が、「人形の街」として有名で、人形店が多く集まっている。理由は良く分かりませんが、それが実態です。実際、岩槻に行くと、良くこれだけの人形店が共存して行けるものと驚くばかりです。

要するに、観光地の土産物屋のような一発勝負、ボッタクリが生じる条件が整いすぎているということです。ひな人形の選び方を間違えるとエラいことになりますね。


私の家にDMを送ってきたのは、場所を考えて岩槻市の人形店ばかりでした。とりあえず、いろいろな店から送られてくるパンフレットを妻と一緒に眺めますと、傾向が掴めてきました。どの店のパンフレットも、あまり気を引くものはなくて見るそばから捨てていったのですが、二軒の人形店については、他と違うものを感じました。

一軒は、岩槻市の郊外の工業団地の中にぽつんとある、「小木人形」(こぼくにんぎょう)という店でした。岩槻市内の人形店は、東北道のインターから岩槻駅に向かう辺り、及び岩槻駅の周辺に集中しているようなのですが、この店だけが離れた所にあるので、気になりました。

パンフレットを見ますと、他の店の人形は皆似たような陳腐な顔と金ピカの衣裳なのに、この店のお雛さまだけは違った香りがするようです。これは、妻と私が写真を見て同様に感じました。パンフレットを読むと、「小木人形は顔の良さと良心的価格をモットーにしています」と書いてありますが、本当のように思えました。

もう一軒は、岩槻駅のそばですが「京人形を扱う老舗」を謳っています。こちらも、パンフレットの写真が他店と違いました。老舗A店としておきましょう。この2店を軸に雛人形を探してみようと考えました。


正月が明けて、ひな人形さがしに取りかかりましたが、まずデパートに行って相場を掴むことにしました。家から近い浦和市内のデパートで探してみますと、端の方にお雛さま特設売り場がありますが、さほどの面積ではありません。常駐している販売員も、オバさんが一人だけで、あまりやる気はないようでした。展示品を一通り探すと、さすがにデパートだけあってそこそこ良いものを並べており、値段の呼吸もだいたい分かりました。なお、オバさん店員は、さほど商品知識はないようでした。

とりあえず準備が整ったので、次の週末に車で岩槻に向かいました。途中で道に迷ったりしましたが、何とか工業団地内の小木人形をさがし当てました。岩槻駅からはかなり遠く、車がないと来店できない立地です。なお、パンフレットには「岩槻駅からタクシーで来られる場合は、タクシー代を負担します」とあり、お客の誘致には苦労しているようです。

建物は、面積の広い二階建てで、一階にはずらりとおひなさまが展示されています。年配の男性や中年の女性が店頭に立っていて、「ようこそ!」と迎えてくれました。(この点が、他の人形店とぜんぜん違うと後で分かりました)

案内に従って人形を見て回りますが、先日デパートで見た人形と同水準のおひな様が、だいぶ安く売られているのが分かりました。店の人が「デパートや駅前のお店は高いですから...」と言いますが、その通りでした。価格レンジがかなり広いですが、安価な人形も、一定以上の水準に達していて、その点もデパートの商品と同じでした。いろいろ参考資料が置いてあり、店の人も人形について詳しいようです。図書館にあるような、大きくて重い美術書を見せながら、人形について解説しているようです。さすがにデパートとは違うなと感心しました。なお、人形に触る時は必ず白手袋をはめ、下に置く場合は必ず敷物を敷いているのが印象に残りました。店頭には、白髪のご隠居のような人が座っていて、要所要所で助言してくれました。

とりあえず今日は偵察だけですので、適当に見た所で、店を辞しました。この際に「他のお店も見て比べてくださいね」と店の人ににこやかに言われたのですが、なかなか意味深長です。

いい加減疲れたので、岩槻駅の方に向かって、目にとまった「岩槻人形名店会」会員の人形店Bをさがして入ってみたのですが...並んでいる人形が、小木人形とはぜんぜんちがうのに驚きました。デパートよりは確かに安いのですが、安かろう悪かろうとしか形容できないような粗末な代物ばかりです。一階から三階まで見て回りましたが、ろくなものはないと判明したので早々に退散しました。なお、この店では、店頭に立っていたのは普通の女性で、人形自身については何も説明はありませんでした。

家に帰って考えてみまして、デパートは高いので小木人形で買うのが順当であると言う結論に達しました。まあ当然ですね。二週間後に妻の両親と一緒にもう一度岩槻に行くことにしました。


二週間後、両親が来たのでさっそく岩槻に向かいました。親には、事前にデパートに人形を見に行って相場観をつけてもらっています。本命の小木人形に行く前に、老舗Aに寄ることにしました。老舗Aは、何やら立派な店構えです。置いてある御雛様の中には良いものもありましたが、大変高価でした。小木人形の倍くらいするという印象でしたね。また、一階に置いてあるお買い得価格の人形は、人形店Bに負けずにお粗末な代物で、こんなものを良く売れるねえと妻や親と顔を見合わせてしまいました。販売員は、ここも普通の女性で、特に知識は持ち合わせていないようでした。人形は素手で触っていましたし、全体に埃をかぶって薄汚れているような感じでした。小木人形で感じたような「人形への思い」は感じられず、エセ老舗でしかないようです。

老舗Aに幻滅すると同時に、小木人形の良さがますます分かりましたので、さっさと小木人形に行きました。前回と同じ、中年女性の販売員が「この方は二回目だから」と他の人に言うので、ちゃんと覚えていると分かります。まあ、若夫婦+両親が揃っているので、今日買う気だなと分かりますよね。

途中経過は省きますが、大変良いおひな様を、リーズナブルな価格で買うことができました。なお、終始接客してくれた中年の女性は、小木人形店の娘さんであることが判明しました。道理で詳しいわけですね。白髪のご隠居は、先代ということでしょう。

その後、大安の日にお雛様が届き、さっそく飾りました。3月3日までの間は、毎日購入した人形を眺めて、見事さに嘆息しておりました。目の保養とはこのことです。


さて、小木人形で満足の行く買い物をできたわけですが、考察するとその理由がだいたい分かりました。

1. 店頭に立っていた年配の男性数人は、人形職人でしょう。恐らく、面積の広い建物の二階が作業場兼倉庫で、そこで人形のパーツを組み上げて商品にして、保管しているのだと思います。五月人形の商戦が終わると、その後の期間は人形を作って過ごし、商戦の時期になると同じ人たちが販売に当たるのでしょう。なお、私たちの購入した御雛さまは、いろいろな人形を見ている過程で、私の趣味に合わせて倉庫から探してきてくれたものでした。人形店の娘さんの見立てはさすがに見事でした。

2. 他の人形店には、作業場と思しき所はありませんでしたので、問屋から完成品の人形を仕入れているものと思われます。販売員は、商戦の期間だけ恐らくパートで雇う形態で、固定した従業員はほとんどいないのでしょう。商売ができない期間、人を雇っても仕方ないですからね。人形の知識がないのも納得できます。

3. 工場と店を一緒にして、自前で人形を企画・製造・販売している小木人形と、仕入れ販売しているだけの他の人形店では、土地代の違い以上にコスト競争力があるのは納得できますね。実際に人形を作っている職人が販売もしているのなら、人形の知識が豊富で、扱いが丁寧なのも当然です。

4. 普通の人形店では、売っている人形は他の店と同じ、値段も同じということになります。エセ老舗Aのように、イメージを上手に作って、たまたま来店したお客に買って頂くのが商売の全てになるでしょう。あるいは、TVで盛んにCMをしている「人形の*月」のような商法になるでしょうか。「*月」からは、手を変え品を変えて何回もDMが届き、ビデオテープまで送られてきたのには驚きました。

5. 一方、小木人形は駅から遥かに遠いですから、最初から知っている客でなければ来店しません。岩槻に何となく来て、工業団地まで足を運ぶ客はいませんから。名簿業者からデータを買って、DMを手当たり次第に送って見込み客にアプローチするしか手段がないわけです。実際、購入手続で事務所の中に入ったら、発送待ち?のDMの封筒がたくさん積んでありました。私にしても、DMが来なければ小木人形の存在を知る術はなかったわけですが、DMだけが頼りの商売というのも辛いですね。

信用が武器にならない人形業界で、きちんとした商売をして行くのって大変なことですね。他の業界には、想像がつかないことです。その中で頑張っている小木人形にエールを送りたいと思い、この[ひな人形選び」を書きました。お子さんが産まれた方、ぜひ岩槻郊外の工業団地まで足を伸ばしてください。そして、他のお店のお人形と見比べてください。


〒339-0072 さいたま市岩槻区古ケ場2-1-3 Tel 048-794-2964 Fax 048-795-0518


(2004.12.20 追記) 今年になって息子が産まれたので、小木人形さんでコイノボリと桃太郎の人形を買いました。コイノボリは、父が「こんな見事なコイノボリは見たことがない。絹製か?」とうなるような見事なもので、手ごろなサイズを選んだので使い勝手も良好です。コイノボリは、まめに上げ下ろしをしないといけませんので、サイズは慎重に選んだ方が良いでしょう。


(2008.03.06 追記) 雛人形の写真を差し替えました。


(2009.03.16 追記) 兜の写真を追加しました。