Home | Back |

蕎麦の話 1999.08.29、 2000.03.30


皆さんは、蕎麦というものにどういう印象をお持ちでしょうか?まあ、「どこかに行った時に、深く考えずに食べる軽食」というイメージが強いのではないでしょうか。私は仙台出身ですが、蕎麦とは美味くも不味くもないものと何となく思っていました。ラーメンの美味い店というのはあっても、蕎麦屋というのはどこでも同じような味という認識もありましたね。

その後、家が山形に引っ越しまして、東京の大学に行っていました私は初めて山形に帰省し(それまでは、数回行った記憶があるくらい)、ご馳走をまとめ食いしようと張り切っていた所、父に「蕎麦を食いに行こう」と言われて、内心「え?何も蕎麦なんてわざわざ食いに行かなくてもいいじゃん」と不満を覚えました。「山形の蕎麦は美味しいから」と言われても、「たかが蕎麦だから...」と期待していませんでした。

しかし、その日私は蕎麦という物への認識を改めました。山形の蕎麦は、それまで別に不満を覚えずに食べていた仙台や東京の蕎麦とは全く別のものと言って差し支えのないほど美味かったのです。それ以来、私は山形に帰省するたびに蕎麦を連日食べ歩き、東京にいる間は蕎麦は食わないようになりました。例外としては、「マルちゃんの緑のたぬき」があります。あれはあれで美味しいですね。


そこで、美味い蕎麦の条件というのを提示してみたいと思います。

1. 蕎麦が細い
太い蕎麦は素人でも作れるようですが、細くなるほど難しくなるようです。
細い蕎麦を作れる蕎麦屋=修業を積んだ蕎麦屋
と考えてもいいみたいですね。また、一定以上に細い蕎麦は、機械では打てない模様です。

2. 席数が多くない
店主が打つことのできる蕎麦の量には当然限りがあり、一日の客数にも限度があります。それ以上の客に蕎麦を提供するには、当然機械打ち、製麺工場からの仕入れなどに依存する必要が生じ、味に対してはマイナス要因です。なお、今の所「個人経営でないが、美味い蕎麦屋」というのにはお目にかかったことがありません。蕎麦というのは、店主が自らの手で作らないと美味くはならないようです。

3. 品数が少ない
メニュー一杯に、これでもかと品目を並べているような店では、美味い蕎麦は期待できないでしょう。まあ、これは他の食物にも言えることだろうと思います。

4. わさびが天然ものである
最近は、家庭でもチューブ入りの「生わさび」が普及していますね。蕎麦屋で使う生わさびは本物が要求されるでしょうが、そんなに目の飛び出るほど高いわけではないでしょう。その程度のコストも惜しみ、粉わさびを使うような店で美味い蕎麦が食えるわけはありません。蕎麦自身のコストも惜しんでいるに決まっています。なお、山形の「みねた」では、生山葵を自分で摩り下ろしながら食べるというシステムになっていて、非常に気分がいいです。

5. 盛り蕎麦のツユが冷たい
蕎麦というのは熱いと弾力が減ってしまうもののようで、いかなる名店でも熱い蕎麦は冷たい蕎麦より味が落ちます。まあ、熱い蕎麦には盛りとは違った魅力があるわけですが、私は蕎麦屋の味というのは盛り蕎麦の味で判断します。この時に、冷やしていない常温のツユを出してくる店があります。その場合、その蕎麦が不味いことは確実ですね。

これは、
* 店主が美味い蕎麦を食ったことがないので、ツユがぬるいとそれだけで満足度が落ちることを知らない
* 知っているが、冷やすのが面倒、もしくはコストがかかるので省いている
ことを意味するわけですので。


以上の条件は、私が帰省するたびに通っている、山形市内の名店

では、全てを満たしています。山形であれば不味い蕎麦屋の方が少ないくらいですが、この二店の味は格別です。うれしいのは、決して安くはない価格でひたすら味を追求しているこの二店が、いつもお客さんで賑わっていることですね。

また、上記二店よりぐっと庶民的な価格ながら、

も、洗練された味を楽しませてくれます。この店は、蕎麦本体もさることながらタレの美味さが特筆されます。

東京では、何軒か回ってみましたが、

がベストだと思います。私は、ざる蕎麦+けんちん汁のセットを頼みますが、味・量・値段・栄養いずれも満足できます。天ざるは、2千円超と高価なのですが、専門のテンプラ屋並みの天麩羅が出てきますので満足感が高いです。テンプラ屋であれば、2,000円を越すのは普通ですからね。

他にもまずまずの店はあるのですが、やたらに高いもので...上野に「池之端藪蕎麦」という有名店があり、確かに美味いとは思うのですが、満腹するには盛り蕎麦4枚、2,400円かかるというのではちょっとねえ。

なお、山形の店はどこでもツユをたくさん出してくれ、蕎麦湯を飲む時も余裕があるのですが、東京の店はなぜか塩辛いツユをほんの少ししか出しません。このツユはやたらにしょっぱいので、蕎麦にたくさんつけると辛くて不味く、かつ量が少ないので途中でなくなってしまう恐れがあり、慎重さを要します。なくなった場合に、ツユの追加を頼めるのかどうかは分かりません。

よく「江戸っ子ってのはよう、ちょこっとタレをつけて啜り込むもんでえ」などと言うことが言われますが、そうせざるを得ないように仕組んであるわけですね。私は、適度な濃さのツユを蕎麦にたっぷりつけて食べるほうが美味いと思うのですが....