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渡辺玲子 録音一覧

Last updated Sep 11, 2011


5. 「カルメン・ファンタジー」
AVEX CLASSICS AVCL-25197 2008年6月25日発売
ピアノ:江口玲、録音:2006年12月5日〜7日 軽井沢大賀ホール

副題として"Virtuoso Recital"と書かれています。なお、このCDの録音では玲子さんご自身の楽器と伺っている Giovanni Maria del Bussetto 1680, Cremona が使われております。今までは、CD録音時には日本音楽財団から貸与されたストラディバリウス 「エングルマン」や同じくストラディバリウス「ドラゴネッティ」を使っておられましたが、CDでブゼットの音を聴くのは今回が初めてです。私の耳ですと、「どちらでも玲子さんの音」としか分かりませんが…

ブックレットに玲子さんの挨拶が載っていますのでご紹介させていただきます。

このCDによせて
渡辺玲子

前回の録音から3年ぶりとなるこのアルバムでは、この数年のリサイタル・プログラムで、私が気に入って頻繁に取り上げた曲目の中から、選曲しました。結果として、有名な曲から少し通好みのものまで、ヴァラエティーに富んだプログラムになりました。

「カルメン幻想曲」と「ツィゴイネルワイゼン」は共に、ヴァイオリンの魅力である奔放な叙情性と超絶技巧的な見せ場、この2大要素を最大限に盛り込んだ名作です。<カルメン>のヴァイオリン用の編曲には有名なものが幾つかありますが、ワックスマンはよりオペラティックなオーケストレーションに仕上げているので、私は好んで取り上げています。サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」も数え切れないほど多く演奏していますが、この曲の自由奔放な歌心は、心を突き上げてくる慟哭のような強い感情を毎回私の中に惹き起こします。

クララ・シューマンは作曲家の夫ロベルトを支えながら大勢の子供も育て、また時代の流れの中で女性としてのハンディにも耐えながら演奏・作曲活動をこなした天才でした。「3つのロマンス」は、彼女が最も幸福だった時期に書かれ、豊かな才能と温かい人間性にあふれています。

シマノフスキは、その少々難解なハーモニーのため、通好みの作曲家ともいえますが、「神話」では、多彩な音の効果を用い、まるで目に見える絵画のように3つのギリシャ神話の場面を描いています。官能的で神秘的なシマノフスキの響きは、エロティックなギリシャ神話の世界と見事に溶け合っています。
それでは、そのシマノフスキが、パガニーニの有名な独奏ヴァイオリンの為の「カプリース」に、ピアノ伴奏を加えてアレンジすると、いったいどのような響きになるでしょうか?これはお聴き頂くと分かるように、オリジナルとは全く別の、見事に独自な音の世界を展開しています。

このように厚みのあるプログラムとなりましたが、今回は作曲家でもある江口玲さんにピアノを受け持っていただきました。シマノフスキやワックスマンでは、彼独特の解釈で音が少し付け加えられているところもあります。
皆様に音楽の多彩な世界を楽しんでいただければ、大変うれしく思います。

(曲目)
* ワックスマン/カルメン幻想曲
* サラサーテ/ツィゴイネルワイゼン
* クララ・シューマン/3つのロマンス
* シマノフスキ/神話−3つの詩
I アレトゥーザの泉
II ナルシス
III ドリアデスとパン
* パガニーニ/シマノフスキ編 カプリース 第24番(ピアノ伴奏版)


4. ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲、チャイコフスキー/同
アレクサンドル・ドミトリエフ指揮サンクトペテルブルク交響楽団<ライブ録音>
ワーナークラシックス WPCS-11694 2003年9月25日発売
(録音:ショスタコーヴィチ 2003年6月23日 札幌コンサートホールKitara、チャイコフスキー 6月13日 岡山シンフォニーホール)

日本音楽財団から貸与された、1700年製ストラディヴァリウス「ドラゴネッティ」を使用しての演奏です。


3. バッハ/無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ集
ワーナークラシックス WPCS-11001 2001年10月11日発売、WPAS-10025 (DVD-A) 2002年8月21日発売
(録音:秩父ミューズパーク音楽堂、2000-12/2001-01)

* ソナタ第1番ト短調 BWV1001
* パルティータ第2番ニ短調 BWV1004
* ソナタ第3番ハ長調 BWV1005

玲子さん自身による紹介文がありますので、掲載させて頂きます。

私にとってのバッハ−レコーディングを終えるまで
渡辺玲子

J.S.バッハは30代、ケーテンの宮廷楽長時代に《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》を作曲しています。ケーテンでのバッハは、若い領主レオポルト侯の音楽に対する深い理解と増えていく家族のもとで器楽曲・室内楽の名作をたくさん残しました。今更言うまでもないことですが、6曲の「無伴奏作品」はヴァイオリニストにとっての聖典、全ての基本であると共にゴールでもあります。

私がこの素晴らしいソナタに初めて接したのは5歳の頃で、来日したシェリング氏の全曲演奏会でした。彼のヴァイオリンからつむぎ出される和音の無限の色彩変化に夢中になって聴き入った記憶がなお鮮明に蘇ってきます。そののち数年経って、私自身の練習プログラムにもバッハの無伴奏ソナタが加えられ、和音を弾く時の技術的に特殊な難しさやそのスタイルを学ぶにつれ、ストレートに感情表現のしやすいロマン派以降の曲の方をより好んで演奏するようになって行きました。しかし、心の中ではいつかバッハを自分のものにしたい、《無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ》が放つ色彩の驚異的な豊かさや感情の深さを理解し自分自身の言葉=演奏で表現したい、との思いをずっと持ち続けていました。

昨年がバッハ没後250年ということもあり、この1年ほどリサイタル・プログラムにバッハの無伴奏を加えるようになり、それが今回のレコーディングにつながることになりました。それに私自身30代に入り当時のバッハの年齢になりつつある今、このモニュメンタルな作品に正面から向き合う事はこれまでの私の演奏を総括し、またこれからの指針を見つけて行くうえで最も妥当で必要なことに感じられたのです。

今回の録音では6曲の中から演奏時間、全体のバランス等を考えてソナタの1番と3番、シャコンヌを含むパルティータの2番を選び録音しました。

バッハの無伴奏曲、その中でもとりわけ対位法的なフーガなどは、演奏する時に他の作曲家の作品では必要とされないほどの肉体と精神のコントロール、バランス感覚を求められるものです。その点に関してはコンサートで演奏する度に技術的にも表現の上でも新しい発見がありましたし、またレコーデイングを行う過程においても、私のバッハの音楽に対する感じ方がより自由になっていきました。今回のバッハ録音は、現在の私が感じているバッハ=私なりの等身大のバッハ=ロマンティックな傾向を持った繊細で色彩豊かなバッハに仕上がったと思っています。

バッハの音楽はその演奏に払った努力に見合った充実感と喜びを演奏者に与えてくれます。見事に構築されたフーガの中に流れる暖かな叙情性や舞曲に涌き出る生命力、ラルゴの優しさに溢れた美しさなど、その無限に力を与えてくれる情感の深さを理解し表現するにはもっともっと多くの時間が必要に思われてくるのです。残りの3曲は、もう少し先になってまた新しい境地を感じられるようになってから録音したいと思っています。

最後に、今回の録音に際し、私のわがままを受け入れ忍耐強くサポートしてくださったスタッフの方々に心から感謝いたします。また日本音楽財団のストラディヴァリ「エングルマン」(1709年)の陰影を持った音色が私の表現に多くの新しい道を広げてくれました。日本音楽財団と塩見理事長に心より感謝申し上げます。
(2001年8月)


2. 小品集 "My Favorites" ワーナークラシックス WPCS-6252
(ピアノ:サンドラ・リヴァース<ナージャの伴奏者>、新潟県/見附市文化ホール「アルカディア」他、'97/10)

曲目は、

* ヴィエニャエフスキ/創作主題による変奏曲
* グルック, クライスラー編/メロディ(精霊の踊り)
* タルティーニ/ヴァイオリンソナタ「悪魔のトリル」
* パガニーニ/ネル・コル・ピウ変奏曲
* コルンゴルト/組曲「空騒ぎ」
* マスネ/タイスの瞑想曲

こちらのCDの方は馴染みやすい曲で構成されており、私としても一安心です。

このCDは、玲子さん自身がインストア・イベントで話された表現ですと「小品集と言うより中品集ですね」ということで、パガニーニが得意としたような特難クラスの技巧を要する曲が集められているのですが、当代随一と言える彼女の技巧を堪能することができます。彼女は、コンサートに行くと分かるのですが、表情も変えず体も動かさずにスラスラと信じ難い音を紡ぎ出して行きます(その裏には、血のにじむような研鑚が秘められているわけですけど)。普通の奏者であれば、顔を真っ赤にして舞台狭しと奮闘してもできない演奏なんですけどね。

彼女の演奏会に行けば、アンコールで実際に聞ける曲が多いと思います。


1. ベルク/ヴァイオリン協奏曲、同/室内協奏曲 輸入盤: 0630-18155-2 国内盤: ワーナークラシックス WPCS-5743
(シノーポリ指揮ドレスデン・シュターツカペレ、'95-6/'96-11、ドレスデン)

記念すべきデビュー録音ですが、曲が難解で、「ペガサスの会」の会員の間でも「このCDはちょっと人に勧めにくい...」というボヤキが聞かれるのが難点ではあります。私もそう頻繁に聴くことはできません。なお、このCDのうち、Vn協奏曲の方は彼女の自前の楽器のブゼット(1680)、室内協奏曲の方は、現在使用しているストラディヴァリウス"Engleman"で弾かれているそうです。

国内盤が出てから1年半くらいして、独テルデックよりインターナショナル・リリースされました。国内盤のカバーは、シノーポリと渡辺玲子の写真をあしらった、よく言えば素朴、悪く言うとダサいデザインになっていますが、輸入盤の方はよく分からない抽象芸術の写真で、世界有数の銀行であるドレスナー(ドレスデン)銀行がスポンサーとしてクレジットされています。また、ブックレットの中には玲子さんの初めて見るやや色っぽい写真が掲載されているのが目を引きますね。

ファンとして気になるのは、ブックレットで彼女がどのように紹介されているかと言うことですが、このCDに収録されているドレスデンでのライブ録音(協奏曲)の際のドイツの評論家の言としまして、

「渡辺玲子は、ベルクの協奏曲における数々の困難を完全にクリアーしている。彼女の表現力に富んだ力強さ、及び成熟した解釈には強い説得力がある。渡辺のヴァイオリンとオーケストラの間の対話からは、完全な一体感が生み出されていた」

とあります。