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渡辺玲子 インタビュー
「音楽の友」2001年11月号より

Last Updated Nov 24, 2001

2001年10月のバッハのCDのリリース、バッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ&パルティータ 全曲演奏会に合わせて、音楽之友社の雑誌「音楽の友」の2001年11月号に玲子さんのインタビューが掲載されました。既に新しい号が出ましたので、抜粋を掲載させて頂きたいと思います。音友さんの商売を邪魔しない配慮ということで...ご賢察下さい。インタビュアーは濱田滋郎氏です。


渡辺さんの演奏は以前にいくつかコンチェルトをうかがっておりますが、バッハはまだなんです。演奏会で既に取り上げていらっしゃるのでしょうか。

ええ、バッハはいつも心の中にありましたけれど、実際にコンサートのプログラムに取り上げたのは、昨年のバッハ・イヤーからなんです。やはり私が主に弾いてきた古典派からロマン派の音楽とは、技術的にも内容的にも違った音楽ですから、公に弾くことには怖さもありました。

でも、弾いていくうちに、とてもバッハに対する愛情が深まってきました。新しく教えられるところ、また新しく発見できることが、弾くたびにありまして。それで、「無伴奏」のうちの3曲ですが、このたび録音いたしましたし、また、1日のうちに6曲を弾くというリサイタルもやってみたいと思うようになりました。


CD録音はこのたび3曲を選んでなさいましたね。これは、今現在、より深く自分のものになっている作品、ということで先に選ばれたのでしょうか。

ええ、パルティータ第2番とソナタ第3番をぜひ入れたく思いまして。あともう1曲、バランスの上でソナタ第1番がいいかなと。


バッハとの関わりは、渡辺さんの場合、いつごろから始まったのでしょう。

5歳のとき、シェリングの演奏会に連れていってもらったんです。すごく強烈な印象があって。

ふつう、5歳くらいだと、覚えてもいないんじゃ...と思うんですが。

そうでしょうか。日本に戻ってから何回かバッハを弾いていますが、その時、子供さんたちがたくさん来られたコンサートもあったんです。自分のことも思い返しながら「どんなふうに聴いてくれるのかな」と思ったんですが、みんなとても集中して退屈した様子もなく聴いてくれたので、やはりバッハの音楽が持っている力というのはすごいな、と改めて思いました。


誰でも、言わば本能的に「いいなあ」と思ってしまうような、根源的な力がバッハにはあるんですね。「無伴奏」の6曲にしてもそれぞれが魅力的ですし、どの曲を見ても、全部違った構成をとっていながら、それぞれ、実にバランスよく書かれていますね。

ええ、バルトークが作曲に当たって「黄金分割」の比率を参考にしたと言われますけど、バッハも、すでに充分そういう最上のバランス感覚を持っていたと思うんです。あの「シャコンヌ」が入っている曲を4番目に置いたのもそうでしょうし、次にまた、ハ長調の独特な雰囲気を持ったソナタを置いたのも、そのような感覚からだと思います。ですから、この2曲だけは必ず切り離さずに弾きたいんです。


なるほど、CDでもそうしていらっしゃいますね。ところで、最初にシェリングを聴かれ、その後は特に感銘を受けられた名ヴァイオリニストのバッハ演奏はありましたでしょうか。

ええ、いろいろありますが、特に惹かれたのはミルシテインですね。演奏会のアンコールに、必ず「パルティータ第3番」のプレリュードを弾かれたのも思い出に残っています。シゲティの演奏も、独特なロマンティシズムを感じて惹かれます。彼の場合、音に「意味」があり、それ故の「パワー」があるんですよね。