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秋田魁新報Web掲載記事より

Last Updated Jul 24, 2008


地方点描:ヴィルトゥオーゾ[秋田支局]

「来た、見た、勝った」という古代ローマの将軍カエサルの名言をもじって言えば「見た、聴いた、感動した」だった。秋田市のアトリオン音楽ホールで先日開かれた「ワンコインコンサート」。バイオリニスト渡辺玲子さんによる解説付きのコンサートである。普段はニューヨーク在住だが、毎年春学期だけ国際教養大で講義を担当していることが縁になっている。

演目はベートーベンのバイオリンソナタ3曲の抜粋。エピソードや聴きどころをあらかじめ説明してから演奏するため分かりやすかった。それにワンコインといっても演奏は本格的で気迫十分。佳境に入るとシャンパンゴールドのドレスに包んだ体をぐっと前に傾けて、脚を踏ん張って没入する姿が印象的。鬼気迫るものがあった。途中2度も弓の毛が切れ、弦も切れるのではとハラハラした。

演奏の合間に披露するエピソードも「いいことを聞いた」とちょっと得した気分。何か大切なことを決めるときは自分自身にあてて電子メールを送っているという。「ヴィルトゥオーゾ(名手)はそんなふうに自分の考えを整理しているのか」と感心しきりである。

渡辺さんのような著名な音楽家がワンコインのコンサートに出演するなんて、他の地域では考えられないのではないか。これもひとえに毎年秋田に滞在している縁があってのこと。せっかくの縁である。ここはしっかり渡辺さんを支援したいところだが、県内にはそういった団体やサークルがないというから残念。秋田を渡辺さんの第2、第3の古里にするために何かできないだろうか。そう考えながら会場を後にした。

(2008/07/24)