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水木しげると海外怪奇小説 PART 3

 

■「地底の足音」(「貸本漫画傑作選8 墓の町/地底の足音」朝日ソノラマ 昭和61年)135pp

 初出 「地底の足音」 文華書房(発行)、曙出版(発売)  昭和38年3月13日 

→「ダンウィッチの怪」HP・ラヴクラフト (「世界恐怖小説全集5 怪物」東京創元社)

"The Dunwich Horror"   Howard Phillips Lovecraft (1890-1937)

原作者ハワード・フィリップス・ラヴクラフトは、1928年の8月、本作を執筆。米国のパルプ雑誌「ウィアード・テールズ」1929年4月号に掲載され、ラヴクラフトとしては過去最高の240ドルの小切手を受け取った。

「地底の足音」は昭和38年、貸本向けの単行本として出版された。冒頭の数ページから引用しよう。「山陰を旅行する人があの鳥取の砂丘で・・・」「ちょっと道をまちがえると」「あるさびしい奇異な地方にふみこんでしまう」 ・・・大西訳と比較してみよう。「マサチュセッツ州の北部中央へんを旅行する人が、ディーンズ・コーナーのちょっと先で、エイルズベリーの尖った峰の、道がいくつかにわかれているところで、ついまちがった道をとってしまうと、人里離れた不思議なところへひょっこりと出る。」

 水木作品では、ダンウィッチが八つ目村、ミスカトニック大学が鳥取大学、ネクロノミコンが「ペルシャの狂人ガラパゴロスが八百年前に書いた『死霊回帰』」に置き換えられているが、ほぼ忠実な翻案作品となっている。

しかし、ヨグ・ソトホートから、「ヨーグルト!」への飛躍はいかがなものか(笑)。

 ラヴクラフト研究者S.T.ヨシは、浩瀚な伝記 'H.P. Lovecraft: A Life' (1996) の中で、「ダンウィッチの怪」そのものについても、先行作品 マッケン「パンの大神」(神あるいは怪物との性的関係)、ブラックウッド「ウェンディゴ」、モーパッサン「オルラ」、オブライエン「あれは何だったか?」、ビアス「怪物」、(目に見えない怪物)― からの影響を指摘しているが、同時に、借用したものは徹底的な改変を加えているので、批判にはあたらないとしている。(2005.5.5記)



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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                 アーカムハウス版(旧版)      ビアス「怪物」箱絵、だけど

                 「ダンウィッチの怪」表紙      ダンウィッチ! 

                 リー・ブラウン・コイ                                                                                                               

                                               

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 

 

 

 




 

 

 

 

 

■「手袋の怪」(「墓をほる男」太田出版 平成11年)29pp

 初出 「劇画No.1」A 東考社 昭和39年

→「白い手の怪」 レ・ファニュ (「世界恐怖小説全集1 吸血鬼カーミラ」東京創元社 昭和33年)

"Narrative of the Ghost of a Hand"  Joseph Sheridan Le Fanu (1814-1873)

 

原作者レ・ファニュは1861年に「ダブリン・ユニバーシティ・マガジン」を買い取り、編集長を1869年まで務める。「白い手の怪」は、1861年から連載された長編小説 'The House by the Churchyard: A Souvenir of Chapelizod' (「墓地に建つ家」榊優子訳 河出書房新社 平成12年)の第12章を抜き出したもの。チャプター・タイトル 'Some odd facts about the Tiled House - being an authentic narrative of the ghost of a hand' の示すとおり、手(だけ)の幽霊が登場するのだが、水木版では目に見えない幽霊の手に、手袋をさせている。目玉の親父、髪(だけ)の怪物など、水木にはパーツだけの化け物にこだわりがあるようだ(?)。なお、作中、和服姿の「怪奇作家五味氏」とは、小説家の五味康祐がモデルであろう。(2005.4.30)

 

                                

五味康祐(ごみ・やすすけ)

                                1921〜1980 

 

■「墓をほる男」(「墓をほる男」太田出版 平成11年)143pp

 初出 「墓をほる男」昭和37年 文華書房

■「怪骨」(「悪魔くん」SUN SPECIAL COMICS 朝日ソノラマ 平成4年)31pp

 初出 「少年キング」昭和42年2月12日 少年画報社

→「十三階の女」フランク・グルーバー 「SFマガジン臨時増刊号・怪奇小説集」昭和36年

                   「アンソロジー・恐怖と幻想 第2巻」月刊ペン社 昭和46年

"The Thirteenth Floor"  Frank Gruber (1904-1969)

"The Supernatural Index" にあたったところ、原作者フランク・グルーバーは1940年代に米国のパルプ雑誌「ウィアード・テールズ」に、たった3作の短編を発表しただけで、完全に埋もれてしまった作家のようだ、と思ったのは間違い<(_ _)>  自伝 "THE PULP JUNGLE" (Sherbourne Press, 1967) ほか、50冊以上の著書がある。ミステリー、ウェスタン小説の分野で多数の作品を残した偉大なパルプ作家。

本作について、前述の自伝から引用しておこう。'A fantasy, "The Thirteenth Floor," has gone into eighteen anthology printings and is currently in a Harper & Row High School English Reader.'

 

原作の初出は「ウィアード・テールズ 49年1月号。(2005.4.16.追記)

 

 

「ウィアード・テールズ」49年1月号      

 

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■「死人つき」(「死者の招き」朝日ソノラマ サンコミックス 昭和42年)21pp

 初出 「少年画報」昭和44年(69年)9月号 少年画報社

→「妖女(ヴィイ)」ゴーゴリ 世界恐怖小説全集(東京創元社)第10巻 「呪の家」

"Viy"   Nikolai Vasilyevich Gogol (1809-1852)

原作は1835年の短編集 Mirogorod 所収。水木ヴァージョンでは舞台を越前の国に移しての翻案作品となっている。

「卒業制作、深夜放映、13年後の一般公開。伝説のカルト・ムービー!この映画は、1967年、監督高等課程の卒業制作としてモスフィルムで製作され、日本では1971年、テレビの深夜番組として放映された。怪奇と幻想に満ちた、あだ花的ソビエト映画として熱狂的なファンの支持を得てテレビ放映を重ね、その後、ビデオも発売された。1984年に日本登場以来13年ぶりに一般公開され、今なお新世代のファンを魅了し続ける伝説のカルト・ムービーである。」(RUSSIAN CINEMA COUNCIL COLLECTIONホームページより)

 ソビエト(!)映画「妖婆 死棺の呪い」との前後関係が気になっていたのだが、1971年(昭和46年)テレビ放映とのことなので、水木センセイの方が先だったことが確認できた。

 




■「水晶球の世界」

 初出 (「黒のマガジン 2」東考社 64年(昭和39年)

→「卵形の水晶球」HG・ウェルズ 怪奇小説傑作集U(世界大ロマン全集 38) 昭和33年(1958)

"The Crystal Egg"   Herbert George Wells (1866-1946)

ゲゲゲの鬼太郎「地獄流し」の巻では一部アイデアを借用していただけだが、それ以前の本作品は全面的な翻案

ものとなっている。(2005.3.21)

 

 

■「鉛」(「黒のマガジン 4」東考社 64年(昭和39年)51pp

■「木枯し」(「死者の招き」朝日ソノラマ 67年(昭和42年) 10pp

 初出 漫画サンデー 実業之日本社 66年(昭和41年)

→「泣きさけぶどくろ」FM・クロフォード 怪奇小説傑作集U(世界大ロマン全集 38)昭和33年

"The Screaming Skull"   F. Marion Crawford (1854-1909)

「水木しげる叢書 第二巻 黒のマガジン傑作集I」(青林堂 92年)の解説「『黒のマガジン』と桜井昌一」(伊藤徹)によると、「当初、「泣き叫ぶドクロ」とタイトルが予定されていた本編であるが、『鉛』に改題された。」とある。後年、同じ原作を元に「木枯し」を発表するが、こちらのほうは10ページの短編。(2005.3.20)

 

 

 

 

■「血太郎奇談」(「悪魔くん」朝日ソノラマ SUN SPECIAL COMICS

 初出 希望の友(潮出版社) 72年(昭和47年)

→「血の末裔」 リチャード・マシスン (訳本捜索中m(_ _;)

"Blood Son"    Richard Matheson (1926-)

ストレートな翻案作品。扉絵にはちゃんと原作名入ってます(笑)。(2005.3.19 )

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■「終電車の女」(水木しげる作品集I 異界への旅 中央公論社)

 初出 週刊女性(主婦と生活社) 70年(昭和45年)1月3日号

→「白い粉薬のはなし」 アーサー・マッケン(「世界恐怖小説全集3 怪奇クラブ」東京創元社)

"The Novel of the White Powder"   Arthur Machen (1863-1947)

友人の「赤鼻」の家で薬を飲んだ主人公は、幽霊の女が見えるようになる・・・。ストーリーは牡丹燈籠風な展開だが、謎とき部分は明らかにマッケンからの借用だろう。

少々長くなるが、マッケンから引用する。「・・・あの粉薬は、君の手でどう分析しても、まるでなんの結果も出ないという話だったが、それはむりもないことだと思う。あれは何百年も昔に知られていた薬で、あんなものが今時の薬屋の店にあるなんて、ぼくなどまったく予期もしないことだったよ。薬屋のおやじの話を疑う理由もなさそうだし、おそらく、おやじが言うとおり、問屋からちっとばかり不純な塩剤を仕入れたのにちがいなかろう。それが二十年も、あるいはもっと長く棚ざらしになっていたのだろう。ここで、いうところの偶然とか暗号とかいうものが働きだすのだが、つまり、そういう長い年月の間、罎のなかの塩剤は、おそらく摂氏四十度から八十度を上下する、その時々で違う温度にさらされていたわけだ。その間に、いつとはなしに偶然になんらかの変化が生じ、その変化が一進一退して、さらにそこに複雑微妙な、― はたして近代科学の実験装置で精密に実験操作をしてみても、それと同じ結果が得られるかどうか分らない、と思えるほど複雑微妙な工程が構成されたわけだ。・・・」(平井呈一訳) 水木のテキストと比較してみてほしい。(2005.3.13記)


 

  

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