前回までのあらすじ
エクスデス軍の追っ手から
なんとか逃がれたセシルだったが、運悪く
その時の戦いに巻き沿いをくらった男がいた。今も大岩の下でもがき苦しむ。
放ってはおけない。
しかし、自分一人の力ではなんとも...何か良い方法はないものか。
森を歩くこと10分、さっきから、な〜んか頭上が気になるです。
「ほーほー...ほーほー...」
ふくろうなんかが飛んじゃってくれちゃっている。
はたからみれば、うっとおしい事この上ないのだが、
小動物につきまとわれるとなんか妙に嬉しい。
しかし、ふくろうかと思われたその生物は、意外にもモグ校長であった。
「意外すぎるよ!」
「これはこれはセシル君、偶然ですネェ」
校長は、バサバサと近くの枝にとまった。
「な、なんで校長先」
言いかけてやめた。
この人(?)には常識というものが通用しない。
「あなたもここに、キノコ狩りにクポ?」
「それが大変なんですよ!人が大岩に下敷きになっていて!
そうだ。校長先生一緒について来て下さいっ。
先生ならあんな大岩、一息で吹き飛ばしてくれるでしょ」
「そんな超人みたいな事出来るわけないクポ☆」
「(さっきまで羽ばたいてくせに...)」
「この近くに村があるはずクポ。そこの人達に手伝ってもらうが良いでしょ」
「村といっても、ヒトケまったくないんですけど」
「見えませんか?ホラ、あそこに」
「...な、なにーー!!」
木々の間に民家らしきものが建っているのが見えた。
気が付かなかった。
「そこの人達は親切ですからね、きっと助けになてくれるでしょ」
「ただの空き屋じゃないんですか?」
振り向くと、そこにはもう校長の姿はなかった。
いちいち不思議がってると身が持たない。
草をかき分け、セシルはその方向に足を進めた。
すると、音もなく民家の窓に明かりが灯った。
「うん、間違いない。人が住んでる」
確証が持てたことだし、後はひたすら走るのみ!
...ととと。駆け出し3歩で何故か民家に着いてしまった...
どういうことでしょう?
遠近法を無視して、家は小さいままだった。
高さにして、ちょうど膝の半分ぐらい。家はすぐ目の前にあったのだ。
更にセシルは自分の目を疑った。
同じ様な家が一面に広がっている。
家だけではない。畑もある。井戸もある。公園もある。
全てがミニチュアサイズのまるでおもちゃの村であった。
「う、うわーーーーーーーーー!」
ミニチュアサイズの村人発見。
相手もこちらには気付いてる筈なのだが、村人は至って冷静だった。
さすが、モグ校長の紹介だけある。
お見合い相手探しや、不動産屋にだけはさせたくない。
カクカク震える足の側に、いかにも村長っぽい風貌をした老人が近づいてきた。
拡声器を使い、セシルに話しかける。
「ようこそお越し下さいました。
ワタクシは、このトーザス村の村長でございますじゃ」
やはり村長だった。
馴れた話口調や態度からすると、
この村に人間が訪れたのは、これが初めてではないみたいだ。
村長に続いて、今度はよく分からない人達が。
「お泊まりは、ぜひともリリパライダス・トーザスに」
「ホテルコロボックルはどこのホテルよりもサービスいたします!」
「観光案内はうちの会社にお任せて下さい〜」
時代は変わったもんだ。
「あ、いや、別に観光に来たわけじゃないんですけど」
セシルはこれまでのいきさつを説明した。
「お願いします!」
「ダメじゃな」
いきなりのキツい言葉にセシルはずっこけた。
危うく村人達が潰れそうになる。
「つまりその大岩を動かすのに、ワシ達の力を借りたいということなんじゃろ?
残念ながら、ご協力できませぬなぁ」
「どんな小さな力でもいいんです!」
「いやいや、そーゆーことを言ってるんじゃなイんよ。
古くからの掟でな、ワシらリリパ族はこの村から出ちゃいけんのだ」
「...うぅ...」
「残念じゃが、他の手を考えるしかないのぅ」
「それではその、他の手を考える間...」
「是非是非うちへお泊まりを!」
「ホテルコロボックルはどこのホテルよりもサービスいたします!」
「観光案内はうちの会社にお任せて下さい〜」
「だ、だから僕わー!!」
引っ張りダコ。
半強制的に、セシルは<ホテルコロボックル>という場所に連れ込まれてしまった。
「急いでるのに〜...」
......。
急いでるというのに、セシルは温泉に浸かり心と体のお洗濯をしていた。
露天風呂である。
もくもくと立ちこめる白い湯気。
誰も付き添い人はいない、一人きままな自由な時間を味わい
セシルは一人旅の醍醐味を知った。
「温度も丁度良いし、虫の音は実に風流。もう言うことナシだな。
まぁ、敢えて言うなら
お湯に浮いてる巨大な小虫...が気持ち悪いぐらいか」
いつの間に、小虫並に小さくなっているセシル。
それは、村長が使った<うちでのこづち>のせいである。
原理は不明だが、すっかり村人達と同じ身長差になってしまって、
まぁそうでないと村に滞在することは出来ないが。
湯からあがったセシルは、脱衣所、扇風機近くのロッカーに向かった。
「(観光気分はここまでだ)」
セシルはそう自分に言い聞かせ、ロッカーの中の服を手にした。
そこでハっとなった。
髪から流れる水と一緒に、冷や汗がタラリと垂れた。
隣に、人がいる。
横目でこちらを観ている。
セシルが手に持っているものは...セーラー服!
「(ヤバイ!こ、これって完全に変態じゃないか!)」
男湯+脱衣所+セーラー服=変態
1年生でも分かる公式だ。
いそいそと、見つからないようにそれをロッカーの中に入れ直した。
代わりに隅の方に置いてあった浴衣を装備...
どちらにしても、冒険には不似合いな服に違いなかった。
その後一度、寝室に戻ってみることにした。
畳の上に仰向けになり、長い間天井を見つめて考えたが
しかしというか、やはりというか。
なんのアイデアは浮かびはせず、
気分転換のためフロントへ移動することにする。
馴れない浴衣は、少々歩きにくかった。
部屋と同じ色調のフロントに着くと、
まず最初に何台も並べられたマッサージチェアーが目に付いた。
ホテルということになっているが、なんだか旅館っぽい。
フロントには誰もいないと思っていたが、
一台のマッサージチェアーに、先程脱衣所で見かけた大男が座っていた。
男は、今じゃひどく懐かしく思えるミッドガル高校の制服を着ていた。
これにはセシル、
<異国の地で自分と同じ地元の人を発見>気分。
声を掛けにくい顔?そんなのなんのそので近づいていった。
勇気あります。
「...なんだもんよ?」
最初に口を開けたのはセシルだったが、声を出したのは相手の方からだった。
「僕はセシルって言います。
突然で失礼なんですけど、
あなた、ミッドガルハイスクールの生徒...ですか?」
「そうだけどよぅ...お前もじゃないのか?」
「...え?」
セシルは驚いた。
「なんで分かったの!?」
「ハーハッハッハ!やっぱそうか。
都会に出てきた田舎者みたいに、見る者が見りゃ一目で分かるって〜もんよ。
お前は、明らかにここの村のもんじゃねぇ」
ミッドガルよりこの村の方が都会なのか?
「俺は雷神だ。よろしくだもんよ」
「よろしく」
二人は握手をした。
顔の割に人当たりが良さそうで、すぐに打ち解けることが出来た。
「こう見えてもな、俺、学校じゃ風紀委員やってるもんよ」
「ん〜。あの、少人数制の?」
生徒会が大人数に対して、風紀委員は委員長の意思で少人数制をとっている。
雷神は、なぜこの村にいるか等それ以上自分のことは語らず
自然と話題はセシルの方に傾いていった。
やがて、例の大岩の話になった。
「それじゃずっと下敷きになってるってわけか」
「そこで相談なんだけど...」
「っとっと。いくら俺が手伝ったとしても岩は動かせないもんよ」
「あっ」
見透かれっぱなしだ。
「...だけんどな、俺に良い方法があるもんよ。
たったいま思いついたもんよ。
この村の、うちでのこづちを使えばいいんじゃないかってな」
「そうか!うちでのこづちを使って、大岩を小さくすればいいんだ!」
「そーと分かれば急ぐもんよ。
こづちは村長が管理してるもんよ」
「それじゃあ!ありがとう雷神!」
役所に村長はいなかった。
そこで、RPGっぽく村長の現在の居場所を聞き込みし
セシルは、トーザス村唯一の病院シェルコ医院を尋ねた。
「お願いします!」
「ダメじゃな」
いきなりのキツい言葉にセシルはずっこけた。
「ど、どうしてなんですか村長さん。これも何かの掟?」
「想像してみてくだされえ。
ワタクシたちが村の外に出るとどのような事がおこるか。
こづちがもたらす不思議な力が、あなた達の世界にどんな影響を与えるか」
村長の落ち着いた喋りが、セシルを冷静にさせた。
「(...そ、そうか、考えもしなかった...
もしも村から出て悪い人間にでも見つかったら。
解剖実験......うええぇ。
あるいは見せ物小屋行きだ。
最悪、この村にも人間の手が入ってくるかもしれない)」
「分かって。下されましたか?」
「...村を...村を守るための掟だったんですね。
それも知らずに、僕、すごく勝手なことを...」
すると、村長は意味深な言葉を返してきた。
「いいや。これは、君たち人間のためでもあるのじゃよ...」
「え?」
「それぐらいのことも分からんのかね!!
外に少しでも情報がもれたら、
この村は観光客であふれかえってしまうではないか!
トーザス村は、こののどかな雰囲気がうりの観光地であるのに
そんなことになってしまったらぁも〜
シッチャカメッチャカじゃい!」
「...」
おいしい頑固オヤジの店なんか、
テレビに出ても場所だけは教えてくれませんよね。
この村も、そんな穴場中の穴場な
観光地を目指しているのです。〜トーザスガイドブックより抜粋〜
「(シッチャカメッチャなのは、自分の方じゃぁ...)」
「ですからな、運良く村を見つけてくれた方にも
在住の間は心からおもてなしをさせて頂きますが、帰るときには、
この、忘れ薬を飲んでいただくことになってるのです。
ちなみにオレンジ味ですじゃ」
「オレンジ...それが掟の真相」
「これもこの村の情緒を守るため、理解しておくれ...」
セシルは、ハイそうですかとしか言いようがなかった。
「それも少し可哀想じゃないですか?」
「(助け船!)」
「あの、村長。ちょっといいかなぁ」
村長の隣に座っていた、この病院の先生らしき人。
今までずっとここに座っていたのだが、
小説というのは喋ってないとまるで存在感がない。
座っていた椅子を足でずらしながら、こちらに近寄る。横着な人だ。
「今は掟だとか言ってる場合ではありませんよ。
助けを待ってる人間がいることを忘れてはないですか。
少年、嘘ではないんだろ?」
「本当です!」
「だそうですよ村長。
これはあくまで、一人の医者としての意見ですけどね」
「なんとか協力お願いします!」
セシルは頭を下げた。
「...先生に...せがまれてはNOとは言えんじゃないか。
そうだな。改良型、使い捨てうちでのこづちなら...
小人効果は一度切りじゃ。あなたを信用して、持ち出しを許可しましょうか」
「おお〜!」
「たーだーし。条件がありますのじゃ」
セシルはもといた旅館に戻った。
フロントがやけに寂しいと感じたのは、そうかおみやげ屋がなかったから。
「(これも村の存在を隠すための手段...
どんな情報も徹底漏らさずってわけか)」
しかし動機が不純だ...
セシルが探していた男はすぐに見つかった。
よほど気持ちがいいのか、未だマッサージチェアーに座っている雷神。
腰が砕けやしませんか?
しかし、見つけだす手間が省け好都合。
村長からの条件とは、このようなものであった。
「たーだーし。条件がありますのじゃ」
「それ、さっきも聞いたんですけど」
「実はセシル殿!
あなた以外にもう一人、この村に人間が滞在しておりますのです。
条件というのは他でもありません。
その方に...この、忘れ薬を飲むよう説得して頂きたいのです」
セシルの顔は、驚きの顔。
「その様子からすると既にお会いになったようですのぅ。
そうですじゃ。
もう一人の人間とは雷神殿でございますじゃ。
雷神殿は非常にするどいお方で、帰りの際に渡したアメを見るなり、
すぐにそれが忘れ薬だということをを見抜きまして...」
「そのまま村に居座り状態」
雷神は、よっぽどこの村が気に入ったらしく
村での思い出を消したくないらしい。
だが、村人が直接説得に行くにも相手側にとって良い感じがしない。
そこでセシルの出番というわけだ。
「頼みましたぞー」
なんだか汚れ役な気がするぞ。
最初に声を掛けたのは、またもや雷神の方から。
「ななんなななんだもんよよよ」
バグったわけじゃありません。
椅子の振動で声が震えてるだけ。
「えっとサァ...」
「こづちは貰えたかっかっかっかっか」
「うん、まぁ」
持ち物欄を見てみよう。
あるのは、オレンジ色の忘れ薬だけ。
「ところで雷神も、森に迷い込んでるうちにここに?
やぁ僕もさ、殆ど偶然のうちに辿り着いたんだけど。運が良いよねー。
ここは空気はうまいし」
「...」
「温泉も最高だし!」
「...」
椅子の振動が止まった。
雷神は、その細い目でセシルを直視しこう言った。
「かぶと虫を追いかけてるうち、この森に入ったんだな」
会話の入りのつもりで尋ねた質問に、雷神は食らいついてきた。
「なんだ、じゃあやっぱり」
「違う。俺は呼ばれたんだ。妖精ププルンにな」
「プルルン?プルルンって...あの妖精の。
ずっと前学校でやった、教育映画のあの<さよならプルルン>?」
「そーだもんよ」
さよならププルン...小さな妖精ププルンと、
人間の言葉が分かる柴犬との交流を描いた物語。
アニメ映画にもなって何気に感動作。
だからといって、これを教育映画として上映する高校もどうかと思う。
「(カブト虫はプルルンの使いってわけか...
でも、ここにいる人達は、明らかに妖精じゃないもんなぁ)」
「やっと会えたもんよッッ!!」
「ひゃっ!」
雷神は立ち上がった。
「みんなはバカにするがな、絶対いると思ってたもんよ。
ずっと、会いたいって思ってたもんよ。
...今、俺はププルン達の村にいる。夢が、叶ったんだな」
雷神が、ここまで来た理由が分かった。
セシルには、雷神がなぜ風紀委員に入っているのかも
憶測だが分かったような気がした。
だが、こうなると余計に説得しづらい。
こんな話を聞かされた後に、「記憶を消して帰って欲しい」なんて誰が言えるだろう。
「一生の思い出なんだな」
雷神は、マッサージチェアーに座り、目を閉じた。
「......それじゃ雷神は、いつまでここにいる気なんだい」
「心配するな。いつまでもここに居座るつもりはないもんよ。
明日の朝一番にでも。俺は帰ろうと思ってる」
「...」
自分の耳を疑った。
「いま、なんて言った?」
「俺は明日の朝、帰るもんよ。仲間が待ってるもんよ」
「ここにいた記憶、全部消さなきゃいけないんだよ?!」
「おろ。お前もそのこと知ってんのかぁ。
そうだな、俺は十分思い出作ったからまぁいいもんよ」
「だけど薬が...」
「頭ん中の記憶は消えるかもしんないが、
俺はもっと違うとこに思い出残したもんよ。
俺も具体的にゃ分かんないけどよぉ、なんとなく分かんないか?
赤ちゃんの時の記憶みたいな」
「...」
「だから俺は、いいもんよ。
村長が余計な心配しなくとも、俺は帰るもんよ」
雷神は、マッサージチェアーのスイッチを再び入れた。
雷神が言った言葉、どこかで耳にしたことあると思ったら
<さよならププルン>の劇中内のセリフだった事をセシルは思い出した。
雷神はこれの受け売りで言ったのだ。
「いくら遠くに離れても、記憶がなくなってしまっても、
心の中にはちゃんと思い出として焼き残ってるんだ。
例えば、赤ちゃんの時の記憶みたいなネ。
だから元気だしなって。
思い出さえあれば、また会えるヨ」
そして物語の中の二人は、
続編に当たる<また会えたねププルン>で見事再会を果たしている。
「私の本当のお父さん、今も元気にやってる。そう思う」
夜の海を眺めながら、エアリスは言った。
「結局、再会の夢は叶わなくなっちゃったけど。
でも私はいいの。
ガストラさんにウーマロさんや、海賊のみんな、
それに...赤毛のレノさんとスキンヘッドさんに会えたこと。
それだけで、私良かったと思ってるんだ」
「...覚えてるのか?」
「お父さんのこと?それがずぇ〜んぜん。
いや、お母さんのだったら、少しは、頭に残ってるんだけど、
お父さんの思い出となったら、これがちっとも」
船は、ダスター島へ逆戻り中。
現実はそう甘くない。
そう言ったのはティファだったか。
しかし、人の人生というのはどんな物語よりも長く、エンディングまではまだ程遠い。
物語が続く限り、夢が叶う可能性はあるのである。
「セシル殿」
「あ、村長」
「村の門の前で待っていて下され。約束のブツを渡しまする」
「(割と嫌な人。ずっと見てたのかなぁ)」
「お待たせ!ジャジャーン!」
「これが、村秘伝のうちでのこづち。
何度もいいますけど、使えるのは一回限りですのでヨ〜ク注意して振って下さいよ」
「ありがとうございます。
あと、無理なお願い事言ってしまってごめんなさい」
村をあげての送別会。
大半は野次馬が混じっている。
村長の助役が代表し、使い捨てこづちが渡される。
これで、下敷きになった人を助けることが出来るぞ。
「そしてこれが、忘れ薬ですじゃ」
直接村長の手によってセシルに手渡された。
忘れ薬は、用心のために粉末状。
コップ一杯の水と一緒に飲み込んだ。
薬が効きだすのは40分程度先だと村長は教えてくれた。
村長は、薬を飲み干すのを確認すると
オリジナルのうちでのこづちを懐から取り出した。
「なるほど。忘れ薬を飲まないと元の大きさに戻してくれない仕組みなんだ」
「本当は劇とか歌なども用意しておりましたのですが
あまり、お時間がないようですので」
「6年生を送る会じゃないんだから、いいですよ」
「それでは。こづちを、振らせていただきますじゃ」
「おまちくださーーーい!!!」
若い男がこちらに走ってきた。
「ぜぇはぁぜぇはぁ...み、水を...
ゴクゴクゴク。
ってブフーーーー!!ウォッカなんか渡すんじゃねぇよ!」
「だ、誰ですか?あなた」
「ぜぇはぁ、お客様。これ、忘れ物でございます」
「あぁ、ホテルの人」
「わざわざ届けに来たのかい。セシル殿、良かったですじゃな」
「ありがとうございますっ」
「んん?おや。これはまた、
なんと素晴らしいマテリアでございましょう」
忘れ物とは、クリスタルのことであった。
「温泉のロッカーの中に忘れてありました」
「さっきの素振り。村長さん?これがなんだか知ってるんですか?」
「マテリアですじゃな」
「僕らはクリスタルって呼んでるんですけど」
「これはなかなか。一級品ものですじゃなぁ。
制作者に一度お会いになりたいほどじゃ」
「ええ!制作者って...これって、人工的なものだったんですか!!?」
「トーザス村の特産品でもある。近くに、パワースポットがありましてなぁ、
ほら。見て見なされ」
村長は、こづちの平らなところを開けてみせた。
中から綺麗な小石が出てきた。
形は違えど、この輝きは確かにクリスタルと同じ。
「へ〜え、意外な場所で新事実発覚だなぁ。
ちょっと小さいけど」
「ム」
「小さい?」
「この大きさでも3年ものですぞ」
「でも僕の持ってるクリスタルは、元の大きさに戻したら
ここの村人サンぐらいにはなるよ」
「.........」
村は。静まり返った。
「...そうでしたな」
「やっぱ凄いことなんですか?」
少し自慢っぽく言った。
「あ、あなたは何も知らないんですね!」
「知らないといえば...まぁそうなんだけど」
「何も何も知らないセシル殿のために、壱から説明いたしましょう。
これがどーんなに凄いことか!を!
マテリア。アナタ達の世界ではクリスタルと呼ばれてるそうですが、
これはいわば星と大地のエネルギー結晶体ともいえるもの。
装備した者と星を結びつけ、様々な能力や現象を呼び起こすのですじゃ。
さて、問題はこれを作る仮定にあるのでございます。
セシル殿は、塩の結晶というのを存じておりましょうか」
「小学校の理科の実験で...」
そういえば昔、しんけんゼミの付録で<結晶作りキット>なるものがあった。
「要はソレと同じ。
星の力が集まるパワースポットに、土台となる岩石を置いておく。
ただし形となるまで時間がかかって。
ふむ。この村にあるのでも
最大15、6年物がいいとこじゃろう」
「てことは、僕の持ってるのは...」
「500年は経っておると予想されますじゃ」
「ドヒエャーーーーー!!」
「(こんなにも驚いてくれるとは、ワタクシも本望でございますじゃぁ...)」
「どうしよう。どうしよう村長さぁん!」
「意識して欲しい事がいくつか。
まず。力を悪用しようとする者には、絶対渡らぬよう」
「ちゃんと気を付けてます」
「これを使って、キャッチボールしないこと」
「はい」
「シールをベタベタ張らないこと。
服と一緒に洗濯してしまわないこと。
油性マジックで名前を書かないこと。そして決して割らないこと」
「あのぅ...お言葉ですけど時間が」
「ヌ。そうじゃったか」
「それに今気付いたんですけど、
あれこれ言われても記憶、全部忘れてしまうわけで」
「ガーン!」
「あ、でも今言われたこと
今までもちゃんと守ってきましたから、心配しないで下さい」
「ロッカーに忘れてきたくせにが」
「アハハハハハハ(^^;」
不幸は、突然やってきた。
「お客様?実はもう一つ、ちょっと見ていただきたいものが」
ホテルの従業員は、まだそこにいた。
「なんじゃ。また忘れ物ですかい」
「マテリアと、同じロッカーの中に入ってましたので...一応」
「え、他に何かあったっけ」
「この、一見女性の方が着られる服ですが。
他にお泊まりになってるお客様は、あなたと雷神様しかいなく、
雷神様に見てもらっても違うとおっしゃってま」
「シリマセン」
きっぱり否定した。
「そういえばこの服、セシル殿が最初に着てた服と似てますですが」
「(余計な事を〜!)」
「あ!今来てるその服!
ダメですよ、その浴衣。うちの店のじゃありませんか。
あ〜あ、勝手に持ち出しちゃって」
「それとこれとで交換しましょう」
「やっぱりセシル殿の服でしたか」
「シマッタ!」
「浴衣も一応、村の物品ですから。持ち出しは禁じておられますのじゃよ」
「さーあ、着替えて着替えて」
...セシルは、泣きながらセーラー服を装備した。
呪われた服である。
ダンダーダンダーダンダーダンダーゴーングえケンっ♪(SE:ドラクエ)
「コホン!改めまして、こづちを振らせて」
「ちょっとタンマ!」
「こ、この場に及んでなんでございましょう」
「村長さん、実は...ごにょごにょごにょ」
「フムフム」
「ごにょごにょ」
「フム...」
村長は、首を横に振った。
元の大きさに戻ったセシルは、そうそうと去っていった。
村人達は、花火大会が終わった時みたく
ざわざわと雑談しながら家路に。
見えなくなるまで手を振っていた村長の助役は、
隣で煙草を吹かす村長に言った。
「変わった...人でしたね」
「まぁな」
「あ、そうだ。さっき二人して耳打ちしてましたけど
何話してたんスすか?」
「今日の終わり値」
「あの子、株やってるんスか」
「冗談に決まっておろうがっ。
それが傑作でな、我々に、一日だけでいいから
妖精プルルンと名乗ってほしいとせがんできたのじゃ。
そんなバカなこと出来るわけが無く、
もちろん、丁重にお断りさせてもらったぞえ。
「妖精<ププルン>なら出来ますですが?」ってな。
ナハーハッハッハッ!」
「はぁ??妖精って、なんのことですか?」
「帰るぞい。今日はまだ、雷神殿の前でのマジックショウが残っておる」
「あ、ハイ!」
「ここで遅れたら3日間の猛特訓がパーじゃからなぁ」
セシルがこづちを振ると、大岩はみるみるうちに小岩になった。
不要になったこづちは、
村のことを考えて土の下に埋めることがした。
ちょっとした、証拠隠滅な作業。
「もう大丈夫ですよ。起きて下さい」
ゆすり起こす。
下敷きになっていた男は、のんきに寝ていたのだ。
「...ぁ...
Oh!私は助かったのだな!
キミは。あの時の少年?
あぁぁぁぁぁ、なんて感謝したら良いのだろう」
「う、うぐ、苦じい」
男は抱きついてきた。
セシルは27のダメージ。
「この感謝の気持ちを形で表したい。
私のホームで是非ごちそうを」
「い、いえ結構です。
それより、辺りはすっかり暗くなってしまって。今夜はここで野宿した方が」
「どちらにせよ、私は今日中に
ゴーホームしなければならない用事がある。
ここは私のマイサングラスに任せなさい」
「...なにソレ」
「ナビゲーション付き、高性能サングラス。
うちの商品の一つだ」
サングラスから光が点灯、懐中電灯代わりにもなった。
<うちの商品>と彼は言うが、
どういう商売をしているのだろうと疑問に思うところ。
「ところで。私を苦しめていたビッグロックは〜、一体全体どこにいったのだネ」
「ああ、大岩のことですね。えぇーつとーーーー......
確かあれはーーーー......
??どうなったんでしょう??」
村の記憶は、口に残ったほのかなオレンジの味しか
もう残っていない。
その日はやけに、歓迎されることの多い日だった。
森を抜け、またしばらく歩き続けた。
男が話すアメリカン小話、これがまた以外と面白く、
2時間という疲れはあまり感じさせなかった。
「どうにか無事に着けたようだな」
遠くからちらりと三角屋根が覗き出す。
「...」
「どうした?」
「で、でかい...」
自家製ヘリを持ってるぐらいだから、
少なくともセシルの家よりは金持ちなのだろうと。
また、小話の内容から
どこかの社長であることも事前に想像できていた。
しかし、今セシルの前にそびえ立つ建造物は
想像を遙かに超える豪邸だった。
「おじさんの家って、お城だったんですか?」
「古いお城を買いとったんだ。
昔からお城に住むのが夢でねぇ」
「へ〜え〜〜〜〜」
「といっても
ここ最近は仕事が忙しく、家に帰るのは3年ぶりなんだがね。
さぁ、後もう少しだ。ダッシュしようっ」
「お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!」
「お帰りなさいませ!」
使用人達がぞろぞろと現れる。
「ひょ、ひょっとして、超もの凄い人とお知り合いになっちゃたのかなぁ」
「自分の目で確かめてくれたまえ」
セシルは名刺を手に入れた。
「大財閥風力発電系列会社社長、
アレキサンダー=ハイウィンド=タイクーン...
タイクーンって、あの世界に支社を持つ、あの?」
タイクーンはセシルを無視し、妻との感動の再会をしていた。
「あなた!良かった!」
「心配かけてアイムソーリーだったな」
「あたしより先に会社を出たというのに、
まだ家に帰ってないと聞いて...なにかあったんじゃないかと」
夫人の隣には、セシルと同じぐらいの年の女の子が立っていた。
少しの距離を置き、呆然とタイクーンの顔を見ている。
「...」
「...レナ。大きくなったな」
「お父様っ」
バッとタイクーンの胸に飛びこんだ。
「おわっぷっぷ!重くなったな!こいつはヘビーだ」
「もーお父様ったらー」
「ハハハハハ」
「ウフフフフフフフ」
「...。3年ぶり。これが3年という月日の重さなんだよな。
髪も短くして。うん、母さんの子供の頃とそっくりじゃないか」
「まぁお父様ったら」
「ハハハハハ」
「ウフフフフフフフ」
入り込めないこの世界。
でも、それはそれで良いとも思った。
会話が弾む頃、タイクーン夫人がこちらにやっと気が付いた。
「ところで、あちらの方は?」
「ああ。ハハハ、うっかり紹介を忘れていた」
手招きしてくれたので、セシルは腰を低くして輪の中に入ろうとした。
「こちら、困っていたところを助けてく...」
「い、いやーーーーーーーーーーーーーーー!!」
突然レナが絶叫したのだ。
絶叫しながら、掃除機のコードのように城の中に転がり逃げていったのだ。
「...」
タイクーンは、慌てず騒がず笑顔でフォローする。
「気を悪くしないでくれ。ちょっとアイツは人見知りするとこがあってな。
バットしかし...
そのキミの着ている服は、確かに絶叫したくもなる」
「そうですワねぇ。そのお召し物のセンスはちょっと」
「全然フォローになってない...」
「取り敢えず、正装に着替えもらおうか」
さて、ここに草場に隠れる4人の影がいる。
影はセシルらのやりとりを見ながら
「よりによってセシルの奴め、こんなところに逃げ込むとは」
「しかもしかもじゃ!あれに見えるのはタイクーン社長じゃ!」
「せーぇーかーくー見ーつーけーたーのーにー」
と、苛つきまじりに呟いた。
FF小説−第2部の最終舞台は、ここ、タイクーン城。
そして、この先のキーとなる人物が何を隠そう...
「3人はここに残って」
「まさかバルバリシア様。あなた一人で潜り込もうと」
「潜り込むって、あなたねぇ。私の家なんだから何も問題ないっしょ」
「しかし...」
「Here is ホームグラウンド!
けど、2時間経っても私がセシルを連れてこれなかったら。
その時は軍団に連絡、お願いするわ。
マグ、ラグ、ドグ!」
家を飛び出してから結構経つ。確かに家には入りにくい。
使用人や、妹とは、なるべく顔を合わせたくない。
「(それ以上に親という障害がある。
何の用だか知らないけど、いきなり家に帰ってきた親父におふくろ...
ふん、レナめ。金髪娘になった私を見せたくなくて
わざと連絡よこさなかったのね)」
タイクーンは、ある吉報を知らせるため帰ってきたのだ。
その吉報に、バルバリシア、更にはエクスデス軍全体を揺さぶる力があるとは
まだ一部の人間しか知らない。
MIDI詳細
87章...「モグのテーマ」
by.きゃっぷさん
88章...「小人の村トーザス」
by.鳳燕龍さん
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89章
90章...「Fragments of Memories」
by.ババロア2世
91章...「王家の宮殿」
by.じゅさん
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