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DISK33

160章 極寒の聖天宮

前回までのあらすじ
止められた記憶を取り戻したのはセシルだけでは無かった。
ローザは、校長の血を引くセシルの監視役だったをことを告げ、
その罪と憎しみを込め矢を放つ。 <武器禁止>というロウを知りながら...
プリズンへ飛ばされるローザ。それを追いかけ、セシルもまた自らプリズンへ。
...あの思い出だけはウソじゃない...
「ピンチの時は、絶対に僕が助けに行く」
その約束を守るため、自分は今まで頑張って強くなろうとしてきたんだからと。

ここは、ミッドガルハイスクールのある大陸から
遠くは海を越えての舞台。
雲をも突き刺す高い山々からなる場所に、天空都市を彷彿させる
きらびやかな建造物の草原が広がっていた。
...吹雪の中にそびえ立つ塔...
そしてその塔を支えにした空中広場では、寺院にも似た各施設が立ち並んでいる。
プリズン−聖ベベル宮。
極寒の監獄塔である。
世の極悪亡者はもちろんのこと、
鎖に繋がれてたモンスター達もそこにはウジャウジャ。
しかし、他には例を見ない
この収容所の特徴は違う点にあった。

一つが、
この収容所と、政府により
バストア海に掛けられているワールドロウとの関係である。
決められたロウを破ると、事情はどうあれ
それを無理矢理「罪」とされ、海からここ聖ベベルまで飛ばされてしまう。
この彼らの敷くルールは絶対であった。
彼らとは、全てのロウを取り仕切るジャッジ達のこと。
ロウを掛ける理由は、表では
海と空の安全のためとされているが
その行き過ぎた管理には常に疑問の声が上がる。
だがその真実は一市民達には知る由は無い。
そしてここからハイ注目、二つ目の特異点でございます。
...監獄長ジスカル=グアドは、<幻獣>を操る事が出来る
世界で唯一とされる<召還士>であったのだ...
収容所であるが、そこには監獄を囲う壁というものが存在しない。
だが誰もこの監獄から逃がれることは出来ない。
切り立つ渓谷。そして
人でも機械でもない<幻獣>という絶対の壁がそこにはあるのだから...

「...今日もまた。
 何事も無く夕刻を過ぎようとしています。
 平和でありましたよ母様...ラブ&ピース&カオス」

窓に手をかけ、男は一人そう呟いた。
言いながら、もう片方の手を耳の近くで奇妙に動かす。
まるで、電子楽器のテルミンを空中で操ってるかのように。
部屋に間もなくノックが響き渡った。
品の無い音だった。
「囚舎房Bブロック看守主任!!
 アデルバート=スタイナーでありむぁああああす!!!」

そして、返事を待つ気もなくドアを勢い良く開けてきた。
...この、ドアを開けた時の瞬間が、何とも耐え難い気分にさせられる。
外からの無機質な空気が、
アジアンテイストに彩る部屋にドクドク流れ込んで来る。
「グアド監獄長に定時の報告をば!!!」
そう言ってスタイナーと名乗る男は、ガチャガチャと重い鎧を揺らした。
いかにも堅物な風貌をしたおっさんだ。
「あぁ、いえ、悪いですがスタイナー殿...
 どうも私は、その名前で呼ばれると
 偉大であった父ジスカルの功績に甘んじているような気がして...」

部屋の主である、この男の名はシーモア=グアト。
青い髪が美しい青年だった。
監獄長という肩書きからは掛け離れた、不思議と神々しい雰囲気。
だけど、身長は155cmだった。
山田花子ちゃんと同じだった...
「申し訳ないですが...
 ここは、他の看守同様シーモアと呼んで頂けませんか?」

シーモアの言葉を受け、スタイナーは身を縮ませる。
「!!...ハッ、
 も、申し訳ないであります...
 ですが自分はっ、先代ジスカル様同様、シーモア監獄長をお慕いしての...!」
「ハイでは、お慕いの証に
 ここでピースポーズを」
「えっと...あっ、ヘイワ!!イチバン!!」

スタイナーはそう言って、
両手をぐるり左右交互に回し、中央に持って来たところで丸の形を作った。
その姿勢のまま頭を下げようすると、怪訝そうな顔でシーモア監獄長が止めに入った。
「ハイそれは、先週のものでしたね」
スタイナーは次にコマネチのポーズを取る。
「それは、先々週のものでしたね」
服の裾を床に引きずり、ニコニコ顔でシーモアは彼の元に近づいた。
「朝礼は、ちゃんと聞いておくものですよ、スタイナー殿」

今週のピースポーズ!みんなもちゃんと覚えよう☆
レッスン1・足はガニマタ
レッスン2・左手で拳を作り、肘を90度に曲げる。右側の手は前に!突き出す!
レッスン3・そして最後に突き出した手をイッパイに広げグルグル回し...
スタイナーは、マジメ顔で叫んだ。
「ヘイワ!!イっチバーーン!!!!」
「今日もまた。
 何事も無く夕刻を過ぎようとしている...」
「いやこっち見ていて下さいよ!!!?」

スタイナーは、今日も報われそうに無かった...
「しかし、挨拶とは、数ある規律の中でも最低限のものです。
 その一つが一つが、平和を維持する確固たる体制となるわけなのですよ。
 ...とまぁ、フフフ、
 堅い話は、このぐらいにしておきましょうか。あまり私も好きではありませんし。
 そちらの椅子に腰をおかけになって下さい」
「有難きお言葉。しかし自分はーこのままでもっ」
「フフフ、父の代から相変わらずですね。
 では、私の方もやはり立ったままでいましょうか...いや、しかし...」

シーモアは、耳の近くに手を添える。
そしてまた何かを操るかのような仕草。しばらくして、その動きが変わった。
「...ここで少々平和に乱れが...どうやら暴動が起き始めたようです」
「ぬぁああんですとォ!!!??」

スタイナーは走った。

シーモアの言うとおり、確かに
塔と施設を結ぶ広場で囚人達による暴動が起きていた。
すぐに無線でAブロック看守主任に連絡を取り事実確認。
急げ!愛する心のプリズン・聖ベベルの平和を守るため!
師であり、主君であるグアド監獄長のために!!
しかしスタイナー、
そっちは方向は違うぞ...
広場に出たつもりが、気付けば塔の屋上に立っていた。

...今年に入っての事だったか。
ジスカル=グアドは、不慮の事故に合い
それをきっかけに執務を引退していた。
事務室に入った瞬間、ドアの間に挟まった謎の鋼鉄スーツが落下してきたというのだ。
<父の日メガトン>と書かれてあったらしいが...
依然として、犯人の目星は付いていない。
「許しがたき事件...(笑)
 しかし犯人が何者でも決して我らは屈してはならない。
 私が、亡き父の遺志を継ぎ、このプリズンを永久に指揮していこう!!(爆)」
別にジスカルさんは死んじゃいないのだが...
シーモアのその決意ある言葉に、全米が涙したのであった。

鉄格子の窓越しに聞こえる
他の囚人達の騒ぎに、塔内も大いに盛り上がった。
「いやっはーーーーーーー!!!」
「アハハハっ!!やれぃやれぃ、もっとド派手にデストローイっはははは!!!」

看守達も数人掛かりでそれを止めようとする。
警防でガラガラと威嚇してくる。
「(コエーーーー!!!マジコエーーーーーーーーーー!!!)」
部屋の隅で一人...この祭りに乗り切れず、青ざめている男がいた。
「(不良とかの次元じゃねぇよ、こいつらマジモンだよーーーーーーー!!!)」
元エクスデス幹部四天王の、ギルガメッシュであった。




161章 ベベルにようこそ


...セシルは...結構後悔していた...
「(うっわは〜......うっわは、
  本当にワープしちゃったし!!そしてこの空気は、まさに本物の...)」

後先考えずに行動する、典型的なタイプ。
今更、言わずもがなですか。
ローザを追いかけ
自ら監獄内へ飛ばされて来たものの、はてさて、これからどうすれば良いものか。
肝心のローザはその冷たい部屋には見当たらず、
セシルはおずおずと、パイプ椅子に座る女性と向き合い入所検査を受けるのだった。
「(嗚呼...肩の傷がズンズン痛い...)」
そして...心の本当の傷はまだ痛みへとは変わっていない...
「それじゃ、ポケットのもんはこれで全部やな!!!...だな!!!」
標準を装っているが、ちょいと訛りを含んだ口調のその人。
「ぐあいやい」
平常を装っているが、ありえない緊張の仕方でセシルは応えた。
対して相手は軽やかに
「えぇ〜一時グッズはこちらで預かり
 チェックしました後に、領置、宅下げと区別させて返させて頂くで!!このやろ!!」

訳してどちらも、持ち込み不許可な意味なのでありますが。
しかしそんな言葉はセシルには聞こえてはなく、
かと言って、ローザの心配をしているのかというとまた違っていて...
「あ、あのズビバゼン...」
「んんっ、なんやの?
 じゃなかったわ!アタシらからの受け答えを除き、ここでは一切口を開くなッ!!!
 でも一応聞くよ」

「ご、ごの後はやっぱりガクブル、身体検査とかなんでしょか...」
「え?ん?あ〜、あれ、穴という穴のチェックね〜。
 こういう時って小説は便利やねぇ。
 論理的問題上。キラリ〜ン☆」

「にゃぎゃーーーーーーーーー!!!!!」
何故か、こういう変な知識だけは持っていたセシル...
身体検査。
つまり、素っ裸になって、不審物を所持してないか徹底的に調べられるわけで。
ここで、囚人達の多くがプライドをザクザクにされる。
修学旅行時の入浴時でさえ、セシルにとっては地獄門だというのに。
「んじゃまずは上の服から脱いでもらおかー
 っと、あっとっと、それは生徒手帳?ふえーキミはミッドガルの生徒なんやな」

どうもツメが甘いこの看守、裏地ポケットを見落としていたようで。
「ほーう、セシル=ストライフというのかい。
 贅沢な名前だわねぇ
 しかーし!!これからこの監獄では貴様に名前など与えられなーい!!
 今からお前の名前は囚人番号1000だ。いいかい、1000だよ!
 ハクっ、ハクはいるかー!!」

「ってどこのお湯屋だよここは!!!」
コツ、コツ。
...ペンで、机を叩く音。ここで第三者からの声が入った。
「はいはい、オチはそのへんでいい?
 看守ごっこはそのぐらいにしときなさいアナタ達」
「OK満足♪」
「...はぁ...」

は〜、と溜息をつかれたところで、イマイチ状況が掴めないセシル。
「???」
ただただ、呆然...
今まで不思議と存在に気が付かなかった、この第三者の存在。
眼帯の上から、更に眼鏡を掛けている。
くるくる巻き毛が重たそう。落ち着いた感じの女性だった。
窓の無い部屋の片隅の机で、スタンドの灯りだけを頼りに
本を読んでいる様子であった。
それもセシルと看守の会話が終わるまでの間だった。
「どうもこの本も3流ミステリーのようですね...
 ふぅ...アナタ達の漫才の方が、よっぽど退屈しないみたいだったから
 ついそっちに頭が行ってたみたい」

パタンと本を閉じた。
その人物は座ったまま名乗りを上げた。
「ようこそ、ベベルに。
 私はここの看守を務めるベアトリクスです」
「そんでアタシは今日からから囚人を務めますセルフィや!同業者ってことでヨロね」

「囚人!!?ちょーーっと待って!!!」
目の前に座ってるその元看守?現囚人なセルフィを指差しながら
セシルは口をパクパクさせた。
「さっきまでの入所検査はーー??もしかして遊ばれてたーーーーー!!!?」
「ちゃうのちゃうの
 いやハハ、だってな?あの逆モーツァルトな髪型の看守、
 職務怠慢で、なんも仕事してくれへんから」

確かに。本物の看守であったベアトリクスは、指摘されてる傍から
また別の一冊に手を掛けようとしていた。
セルフィは、話の続きをする。
「そいでな、一人しくしく、壁の模様使ってアミダくじゲームしてたところに
 囚人番号1000...もといセシルちゃんが飛ばされて来たから。
 まぁ代わりに看守勤めやってあげてただけなんよ。
 ってな説明カタリングで理解してくれた?」

そう言って、両腕をバタバタと天真爛漫に笑って見せた。
「...そろそろ行きましょうか」
ベアトリクス看守は、会話の流れに関係なくおもむろに重い腰を上げた。
「服はそのままでいいから。
 それぞれの部屋まで案内します。二人とも」

「アレ?身体検査とか色んな手続きは?!」
あまりの簡略されっぷりにセシルとセルフィの声がハモった。
看守は、眼鏡の奥でニコリとした。
「その手の趣味があるなら別にどうぞ。
 罪状も幾つか増えますけど」

「ないないないない、ナイですナイですっ!!!」

望まなくも同期となってしまったセルフィは、
学校の教室移動でも始まるかのように、キャハハとはしゃいでいる。
そんな彼女を横目に、セシルは、
無意味に机に広げられてしまった所持品を戻す。
「うー...なんであのコはこんなに元気なんだろ...
 僕もつい勢いだけでここまでやって来ちゃったんだけど。
 (これからどうなるんだろうか...まずはローザを見つけ出して、
  そこでちゃんと話し合って説得して...
  プリズンから脱獄?そんな、映画じゃないんだから出来るわけ...)」

「アナタ方二人は」
「おあっと?!」
心の中を見透かされているわけでもないのに、ベアトリクスの言葉に少しドキリ。
...ただ普通に、コード式の鍵扉を開けているだけ。
「バストア海からのロウ違反で収監されたのですよね。
 ジャッジから、簡単なデータは入って来ています。
 ふふふっ、本当は、
 ある程度の手続きも必要なのですけどね...」
「うっわ、やっぱそれって職務怠慢やわー」
「私の髪の毛が自動判別しますから。そこに危険人物なアロマを感じたら、ピンっと。
 ...では一応聞いて差し上げましょうか?
 そこの半端モーツァルトな髪型の子はどうしてここへ」
「セルフィ=ティルミット!!ちゃっかりさっきの呼び方、根に持ってんな...
 聞いて笑ってチョンマゲよ〜、
 砂浜でヌンチャクの修行をしていたらそれが顔面ドカーン!
 なんか...気が付きましたら、武器使用禁止になってったって感じ〜!」

「うわ、なにその理由っ」
「ナハハぶっちゃけお恥ずかしい限りやわ〜」
「つまりはそういう事」

ベアトリクスは言った。
「細かい手続きする方も、される方も。
 そんな時間は無意味という話なのですよ。
 あのバストアのロウだけは特別。
 罪を裁くためではなく、あの海を守るためだけに存在しているわけなのですから」

「そう...だったんだ...」
「...だいたい今は、書類を書いても目を通す人物がいませんからね...
 某一部の看守は、
 バカ真面目に一人一人取り調べてるみたいですけれど」

部屋から出る唯一の扉が開いた。
あと少し荷物をまとめるのに手間取っていたら、悲惨な事になっていただろう。
「うわップ!」
「キャっ!さぶーーーっ」
扉の向こうは、白銀の世界だった。
冷たい突風と雪が、一瞬にして扉を越して吹き荒れてきた。
「ここが...プリズン・ベベル......!」
「凄い凄いーーーー凄い!!!
 こんな地獄巡り体験出来るなんて、アタシらって超ラッキーやなァ〜!!!」

逃げられなんか出来ない...
そうセシルは確信した。
そこは、山岳のへその様な場所にそびえる天空の収容所。
セッツァーの飛空挺だって、この吹雪の中じゃやって来れないだろう。
...これが...現実というものだった...
「脱獄なんか考えない事よ二人とも...ゴゴゴゴゴゴ(効果音)」
「ゴクリ...!」
「刑期は一日、明日にはすぐに出所となるから...ゴゴゴゴゴゴ(効果音)」
「出られるんかいなーーーー!!!!!」
セシルはベアトリクスの言葉にずっこけた。
「おおー、セシル、どこで覚えたかツッコミ慣れしとるねぇ」
セルフィがそのリアクションを褒めてくれた。
「先ほども伝えました通り、本来アナタ方は管轄外の人間なのです。
 収容人数にも限りがありますから。
 簡単な矯正プログラムを受けてもらったあとは、明日の昼には出所手続きを」

「な、なんだかなぁ〜安心はしたんだけど...
 想像してたのと、
 だいぶシリーズのイメージ違うというか、これじゃただの留置というか」

どういう困難なシリーズ展開を望んでいたのだこの男は...
「それでも、有らぬ考えを引き起こさないため
 行動は制限させて頂きますので。
 ...くれぐれも今を観光気分で楽しまないようにして下さい」

そこは、幾つかある塔の一つ。
塔と塔を結ぶ空中廊下が到る所からから出ており
3D化されたアミダくじの様になっていた。
見下ろせば、霞の中に薄っすらと見える中央広場。
建造物でありながら、ベベルにとってはそこが地面の代わりである。
その更に下には...
殆ど底のない絶壁なのだろうと想像して、セシルは追加−1℃程ゾっとした。
「そういえば...」
先を進むベアトリクスに声を上げた。
「ここに一人、女の子が入って来ませんでしたか?
 ポニーテールで...金色の髪で」

しかしそれは、風切りの音で看守の耳までは届かなかった。
突然、看守の足が止まった。セルフィはその背中にぶつかりそうになる。
行く手を阻む者達がいた。
「(え?)」
スキンヘッドの男達、8人。
無言のままだ...
「...棟が違う筈じゃありませんでしたか?」
ふぅふぅと、呼吸は荒く一種の興奮状態であるかのよう。
だがハッキリと意識は持っているらしく、看守の顔を見るなりニヤリとした。
...囚人番号の書かれた服...
その時、足元が少しぐらついた気がした。
パーーーーーーーーーン!!!
数秒遅れて乾いた爆発音が。セルフィがすぐに広場の方を指差した。
「下でなんか始まったみたい!!行かへんか行かへんかお祭りやで、きっと!」
ここからでは視界が悪い。だが何かが起こったというのは明白だった。
「...ふぅ...ふぅ...
 えやははは、そうさこれはお祭りだぁ、
 聖ベベルに反旗を掲げる革命祭っ、この要塞はオレ達が占拠する...」
「ひゃっは、よく見りゃテメエはベアトリクス看守主任様?
 よくも今までネズミ扱いしてくれたよなぁ...
 噂の<将軍>の異名でも、
 10人相手に周りを囲まれ何が出来るって話だぁぁ」

「...8人+2人で...
 ええーーーっ!!!なんか僕とセルフィも仲間に数えられてませんか!!?」

その看守様に無線から連絡が入って来た。
不機嫌そうに、ベアトリクスはそれに出て適当に相槌を打ち始めた。
「てめぇオンナ!!!オレ達の話はシカトかよ!!!」
「...はぁ...」

無線機を腰に収めた。
相手の手には、どこから手に入れたのかナイフ、手榴弾。
「...無意味...何もかも。学習能力の無い虫ケラどもが...
 フフフフ...
 それとも本気で、私の闘志を満足させてくれるというのですか...?」




162章 シーモアという男


ベアトリクスは、眼鏡の真ん中を指で持ち上げ直した。
それを合図にしたかのように悪漢達は襲い掛かってきた。
どうも仲間と勘違いされてるセシルとセルフィは素通りして。
「ひゃはーーはっはっはっは!!!」
上手い事それを避ける。
しかし男達の連続攻撃3人目のところに来て体制が変わる。
背後を取られた事で、避ける相手は前と後ろ、一度に二人となるっ。
冷めた顔でベアトリクスは警棒らしきものを取り出した。
それは、よく見ると先端が鞭の様な武器だった。
「いいか殺すな!看守様は俺達への生贄になってもらおう!!」
ベアトリクスは鼻で笑った。
「どちらの話だか...
 ローズ・オブ・オウガスト(8月のバラ)」

しなる鞭は一瞬にして前後左右自在にうごめいた。
その動きは、ニンテンドーDSのタッチペン使用のミニゲームでありそうだ。
あっという間に8人の囚人達を締め上げたのだった。そして更にキュウっと締め上げる。
鞭にはバラの棘のようなものがぎっしりと詰まっている。
「ぎゃあああああ」
そしてエフェクトとして、何故か後には赤いバラの花びらが彼女の背後を舞うのだった。
「私を満足させるだけの力を持ってして、そんな偉そうなセリフは吐くのだな。
 はぁ...」

看守の様子から見て、こんな事件は初めてではない様子だった。
「(一体ここはどういう監獄なんだ...)」
同時に下で大爆発。いや、今度は違うぞ、何か巨大なものが上がってくる。
「シーモア監獄長もやってくれたようですね...
 これで、今日の祭りも終わりだ」

見たことの無い巨大なブツは、見たことの無い巨大な生き物だった。
食虫植物に半身を食われた...
「化け物だ〜やほほーーーい」
セルフィが後ろで騒ぐ。
そう、セシルも見た瞬間すぐに化け物という言葉がよぎった。
「召喚獣アニマ。誰もここから逃げ出したりは出来ない」
眼鏡を上げ下げしながらベアトリクスが付け加えた。
足元でキュウ〜となっている囚人達じゃないが、体中は鎖で締め上げられ
血の涙を流しているアニマという生き物。はっきり言って怖いです。
その肩には人影が見えた。
「みなさん、これにて騒ぎは収まりました。
 今日の平和は明日への喜び。ラブ&ピース&カオス。
 ...さぁ、お嬢さん、怖かったでしょう立てますか?」

おかしな髪型、服装をしている胡散臭い男。その横には...
「ええ、大丈夫です。危ないところ助けて頂いて有難うございました」
「ローザ!!!!」
しかしセシルの声は吹雪によってかき消された。

「う〜ん、なるへろ、それでアンちゃんは
 その元恋人を救い出すために自らプリズン入りしてきたわけだ。
 今時泣ける話やわ〜」

監獄に取り敢えず入れられたセシルとセルフィ。
案外部屋の中はこざっぱりしていた。トイレも個室で安心。
本当の囚人達の部屋とはまた違うのだろうが。
「だけどええやんかー。刑期は一日だけ。
 彼女も同じロウ制度でやって来たんなら、探し出したりもせずして
 仲良く一緒にここからサイナラ出来るんとちゃう?」

「でも......」
ローザの気持ちが今でも変わっていないのなら、
どうもそんな簡単には行かないと、そうセシルには感じていた。
それにもう一つ、いやな予感というかパターンが思い浮かんでいた。


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MIDI詳細

160章...「ティナのテーマ」 by.よこたさん (HPへ)
161章...