TIFA

C−1 ミスリルの灯は遠く

女は追われていた。
エクスデス軍憲法第15条−スパイ防止法違反の罪により追われていた。
「まったく、誰のためにこうして走り回ってたと思ってるのよ。
 セットしていた爆弾、全部回収してあげたのに
 恩義も何もありゃしないよね、ハァ、ハァ...」

いったいどれだけの廊下を曲がったのだろう。最終目的地には未だ着かず。
呼吸は乱れ、敵を蹴り倒すための足を上げる力も残っていない。
「鬼ごっこもここまでだ...!!」
そのうち、とうとう小さな部屋まで追い込まれてしまった。
「逃げ場はもうないぜお嬢さん。
 女にしてはちったぁ腕が立つみたいだが?
 こちとら、ひぃ、ふぅ、みぃ、よぉ...100人相手じゃ手も足も出まい!」
「生徒会からの刺客だな?
 エクスデス様の大事な船に、よくも妙なことしてくれたじゃねぇか」
「アタイら不良軍団を敵に回したこと、とくと後悔するがいいわっ!!」

出た!得意の脅し文句!
凄みある面構えとセットで精神攻撃だ。
しかし...
「悪いけど私さ、帰ってお店があるからここで捕まるわけにはいかないの」
「あぁ、それなら仕方ないか...じゃあ今日はもう帰っていいから、また明日でも
 とでも言うと思ったかヴォォケぃ!!
 許さん...許さんぞぉ〜...!どこまでもナめやがってぇ〜」

喋ってる途中ですけど、女はためらいもなく後ろ手でノブを掴んだ。
それに気づいた一人の不良が声を上げる。
女の手の方が早かった。
全員一丸となり女を押さえようとしたが、もはや誰も前進しようとする者はいない。
「そ、そ、そのドアは開けるな〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」
追い込まれたといってもそこは袋小路ではなかったのだ。
堅く閉ざされた封印のドア。
これを強引に内側へと開けると、
部屋の中に目映いばかりの太陽の光が入り込んできた。
と同時に、激しい気圧の変化で
部屋の中はしっちゃかめっちゃかに掻き回された。
「ぬぁんてことしやがるーーーー!!」
「こ、ここが空の上だということ忘れてんのとちゃうか!?」

女はニコリとこう返した。
「私は飛べるよ...」
振り返り、真正面から風を受ける。それにうねりを返す長く美しい髪。
これには不良達は焦りまくった。
予想外の展開だった。
「おいおいおいおい...」
「早まった真似はよせ!!落ちて助かる高さじゃないんだぞ!!!」

しまいには何故か謝ってしまう始末。
「さ、さっきは確かに言い過ぎた。だから、考え直して、な」
「あっっ!!!?」

女は、鮮やかに飛んだ。
「ああ〜〜〜ーーーーーーーー!!!」
ジャンプしてすぐに、背負っていたカバンからパラシュートの花が咲かれた。
どうやら冷や汗をかいていたのは、
初めから覚悟を決めていたティファ=ロックハートではなく
彼ら不良達だけだったようだ。

動力を抜かれた飛空艇、こちらもまたゆっくりと地上へ落ちて行く。
不時着するであろう場所に何も危険がないことを確認し、
ここで初めてティファは一息をついた。
そして、飛空艇インビンシブルの最後をじっと見守る。
「(ポレンディーナの心の闇。完全に消すことは出来なかったけれど
  もうあの船は、二度と空を駆けることはないよ...
  ......。
  私の冒険も、これで終わり)」

恩師ポレンディーナの心の痛みを知り、
自ら生徒会からのスパイ役を買って出た一人のバーテンダー...
彼女が地上に降り立つとき、
同時に、一つの物語が幕を下ろす。
じゃが...実はもうちっとだけ続くんじゃよな、その物語も。
「な、な、なっ、なになになになによ?!」
目に映る映像が突然ビデオの早送り状態のようになった。
飛空艇インビンシブルがどんどん遠ざかっていく。いや、それだけならまだいい
地上までの距離もマッハの速度で離れていくではありませんか。
この秋特有の強風に煽られたのか?
頭の角度を変えたティファは、そこで自分の置かれている立場を知る。
目と目があったのだ。
「ヴァルぅ〜ヴァルヴァル〜」
「でかドリ...(汗)」
鳥と云うべきかドラゴンと呼ぶべきなのか。
その、ド派手かつ3メートルは有に越している巨大生物は、
何と勘違いしてるのだろう
ティファの命をつなぐパラシュートを口にくわえていたのであった。
「は、離して!!ちょっとそれ離してよ!!」
...少し冷静になって言い直した。
「うんう、今のはウソ。
 いい子だから、そのままずっと口から離さないでネ」

落ちて助かる高さじゃないなんて言葉が、今更思い出された。
物凄い勢いで怪鳥は雲を突き抜けていく。
行き先不明。
次駅停車時刻はもっと不明。
シクシクと、ティファは泣きながらもこの空の旅を満悦することにした。




C−2 デンッデデッケ・デンッデドッコ

初めて目の辺りにした地平線。
歩いても歩いても走っても、360度、周りの景色は殆ど変わることなく。
どうやら、怪鳥が休憩のため降り立ったその地はサバンナ地方のようだった。
チャンスと思って咄嗟に逃げ出したものの、
そのときの選択、果たして正しかったのだろうかとティファは悔やみに悔やんだ。
「どうやってミスリル島まで帰ろうか...」
歩数を踏む度、どんどんと不安に駆られていく。
「どうやって...ここから生き延びようか...」
人の気配が全くしないのだ。
ティファは、使用済みのパラシュートを小さな木に掛け
それをテント代わりに夜を迎えることにした。

「はぁ...
 シャレにならない。株価の暴落のごとく状況が悪化していく...
 くっ、落ち込んでたって始まらない。こういう時は歌を唄って元気出さなきゃ。
 ドナドナド〜ナ、ド〜ナーナー♪
 ...イカン!ダメだわっ、更に暗い気持ちになってくじゃない!」

小1時間、頭の中は堂々巡りの繰り返しであった。
見知らぬ地で一人。味方もいなければ敵もいない。
表しようのないぐらい寂しく、
いつまで続くか分からないこれから始まる孤独との闘いを恐れる。
先程までの暑さがまるでウソのように、サバンナの夜はよく冷えた。
禁煙派なので、カバンには火をおこせる道具は入っていなかったが
体を温めるには十分の量のウィスキーがあった。
「今日は、本当に色々あったな......」
テントから仰向けに顔を出すと、
空に幾千の星が見えた。
「あの時セシルが止めてくれなかったら...」
セシルとは、生徒会から選ばれた
大戦艦爆破ミッションに置いてのパートナーである。
熱血の割に地味で、ツッコミ役ともボケ役ともハッキリしない白髪の少年。
けれど...
「私、大戦艦と一緒にエクスデス軍を見殺しにしていたかもしれない」
その風貌に、言動に、遠く懐かしい一人の幻影を見た。
「敵だって、生きている。見殺しには出来ないよ」
「...ねぇ。いい?みんな揃ってハッピーエンドなんてこの世にはないの」
だけどセシルは最後まで諦めなかった。
幼なじみだった、チョコボ頭のあいつと同じように...
「...私ったら...
 今までなに悲劇のヒロインぶってたのよ。
 これは私に課せられた試練。うんう、罰なんだから!!
 だからこそ絶対に帰ってみせるわ、ミスリル島へ。諦めてたまるもんか!!!」

神様からの応えはその直後に返ってきた。
「グルルルルルル...」
「!!」
獣のうなり声。すぐに気配を消し、暗い辺りを見渡す。
「(モンスター達め、夜になってようやく動きだしたわね。
  集まってくれたのは...
  バシリスク2匹に、クアール。あそこに飛んでるのはバイドバグね。
  それに......えっ。ウソ?!)」

出現したモンスターから、今いる地域を割り出そうと思っていたのだが。
「(何で熱帯地域にしか生息しないバシリスクと
  リンドブルム地方のアックスビークが同じフィールドにいるわけ?!
  だいたいクアールが、
  他の種族と群をなすわけないし...!!)」

本やテレビから適当に読みかじって得た知識なので、
記憶違いの可能性もただある。
しかし、自分の中の常識を信じるならば、ここは
「獣ヶ原か」
世界中の動物、モンスター達が集まる奇跡の大平原。
いや、さすがにス○イムやポ○モン類とかはいないと思いますよ。多分。
「グァウウ!!!」
「ここが獣ヶ原だとすれば!希望の道は確かにあるっ!」
耳を澄ませば、大地の鼓動がリズムとなって聞こえてくる。
襲いかかってきた2匹のバシリスクの牙をよけ、ティファは敵の背中を踏みつける。
「東に、なんとかっていう有名な町があったはずだわ」
踏みつけ後のジャンプから、サマーソルトキックへの連続技。
「そこまで...そこまで辿り着ければ!!」
アックスビークにクリティカルヒット!
しかしその傍らで、クアールが
着々と一撃必殺の技を準備をしていたことにティファは気づいていない。
バイドバグに攻撃を仕掛ける頃、
豹型モンスター・クアールの長い髭が、万全の準備体制を合図する。
「...みんな、動物保護指定地区に救われたわね。フフ」
ゆらゆらと、自分の巣へと帰るバイドバグ。
細胞破壊音波<ブラスター>はクアールから発射されることはなかった。
レーダーの役割を果たす髭の右片割れが、戦闘態勢に入ってすぐ
ティファによって切り落とされてれていたのだ。
戦意喪失したモンスター達は、全員しっぽを巻いて逃げていった。
「3日もすれば新しい髭が生えてくるわよ。
 ...だけど、クアールに出くわしたときの対処法なんて
 まさか実際に役立つとは思わなかったな...
 全く無駄な知識かと思ってたのに、
 侮りが足し、動物奇想天外。
 あぁ〜!さすがにこのアクションスケジュールは体にこたえる!」

モンスターを追い払い、夜はまた静けさを取り戻した。
取り戻したはずだったが...
「こ、この音?確かに聞こえるわ...」
BGMかと思われた大地のリズムは、
どこか近くで、実際に鳴っている音みたいなのである。
まさかこの大荒野に、カセットデッキが置いてあったというオチはあるまい。
怖くもあったが...(色んな意味で)
聴覚を頼りに、好奇心で音の発信源へと歩いてみる。
それが途中から、不思議なことに<灯りを頼り>へと変わっていった。

「(す、凄い!!
  なんてワイルドでダイナミックで...ファンタジックなんでしょ)」

レッドエレメントによる灯が、美しく闇の中にともされていた。
灯を中心に、古今東西の動物、モンスター達が集まっている。
それぞれ自然で出来た楽器を持って。
或いは、羽音などの体の一部を使って彼らは一つの曲を奏でていたのだ。
自然の大コンサートだった。
ティファは、自分の背の半分ぐらいはある草の影から一人感動していた。
「パチパチパチパチパチパチパチ!!!...はっ」
隠れておきながら、無意識に拍手をしてしまった。
「誰ガウか!!?」
「く、クエぇ〜...クぅエェ〜」
「なんだビックリ、野生のチョコボみたいガウ」
嗚呼...典型的な誤魔化し方である。
「(ってどうしてこうして?!今のは人間の声っ)」




C−3 ムームー・パーカッションズ


人間。しかもまだ年端もいかぬ少年が、モンスターの群の中に身を置いている。
どう見てもヤバげなシチュエーションなのに、
不思議と自分の血が穏やかだったことを、ティファは不思議と思った。
助けなくてはと思いつつ、ティファはそおっと草陰から顔を覗かす。
目を疑う光景PART2だった。
少年の顔からは、怯えの表情の一欠片もない。
モンスター達と一緒に心から楽しそうに曲を演奏していたのだ。
ゴブリンキャップがドラムを叩けば、少年がすかさずギロを鳴らす。
楽譜なんてものはなく
きっと、自分達が自然と感じたままに音や声を発しているのだろう。
どうやらティファは、我を忘れ
またしても曲に聴き入ってしまった御様子です。
二つの耳に入ってくるのは、人と獣の垣根を越えた正に大地の鼓動なんだなと思った。
そして、<大地の鼓動>と勝手に命名させられた曲は美しくファイナルを迎えた。
「パチパチパチパチパチパチパチ!!!」
スタンディングオベーション。思わず立ち拍手。
「あっ......」
丸見えだ。向こうから...
「げきゃ〜ーーーーーーーーーー」
「フニャニャニャニャニャニャニャニャニャ!!!」

「しまった!に、逃げなくていいのよ!!」
気づいたときにはもう遅い。
当たりはパニック。蜘蛛の子を散らすかのように楽団は逃げていく。
ただ、先程の一人の少年を除いて。
「クンクンクンクン...」
近づいてきた。
エレメントによる灯りを失い、暗闇の世界に見えたその影は
やはりどこの町にもいるヤンチャ盛りな男の子だった。
「お前。良い人間ガウ?そんとも悪い人間ガウ」
「えっ、あっ...」
唐突な問いかけに困惑するティファ。
「自分で自分を良いヤツだって断言する事は出来ませぬけど...
 少なくとも。そちらさんから襲ってくることがない限り、害はない人間かと」

「クンクン...
 お前、ウソついてない。ニオイで分かる、良い人間だガウ!
 みーんなーーーー!!戻ってきても大丈夫ガ〜ウよーーーー!!」
「わぁ〜〜〜〜」

キン○チ先生のオープニングっぽく、逃げ隠れてたモンスター達が集まってきた。
この少年に対する彼らの信頼を伺わせた。

「最初はビックラしてたけど、みんなに拍手の意味伝えたら喜んでたガウよ。
 <ぬか漬け狂想曲>、聴いてくれてありがとガウ」

「テヘヘ。おどかしちゃってゴメンね。(そんな曲名だったんだ...)
 うちの名前はティファ」

「オレ、ガウガウ」
倒れた丸太のイスに座り、二人は自己紹介。
灯りが帰ってきたところで周りではコンサートの打ち上げが始まったようだった。
「へぇ〜ガウガウっていう名前なの」
「違うガウ。ガウっていうのが名前ガウ」
「名前がガウで、名字がガウ」
「も〜う違うガウっ!!」
「アハハっハハ!ジョークっス、ジョークっス。ガウ君でいいのよネ」
「お前、ニオイは良い人間ガウが、結構ひねくれた性格ガウな...」
「ところでここ、獣ヶ原なんでしょ?
 どこかに村があったはずだけど、ここからどれぐらい距離あるか知らないかしら」

「ガウ。それはモブリズの村」
そう言うとガウは、ピョンピョンと跳びはねて
「ティファが座ってる場所!コンサート会場!」
「??」
結局、目の前に戻ってきて立ち止まった。
「オレが立ってる場所っ、西の海岸!
 そうすっと...あの向こうに見える木がモブリズの村!そんな距離感だ!」

「遠っ!!!」
「チョコボに乗っても最低2日は掛かるガウ。
 それに道中、オレでも歯が立たない怖い猛獣がウヨウヨいるガウ」

「そ、そんなっ!
 だったらガウ君はどうやってここまで来れたわけなの?
 あ、もしかして、どこか近くに別の集落とかあったり??」

たった一つのチャンスが遠退いていこうとする。
探求心と期待を込めて出た言葉だったのだ。ティファにとっては...
「...オレは。
 生まれたときから獣ヶ原にいたガウよ」

「えっ」
ティファにとって、思いがけない返答がガウの口から発せられた。
「屋根と壁がないだけ。
 この大平原がオレの家で、そこらで騒いでる奴らがオレの家族ガウ」
「グァ〜ルルっゴアゴアゴア〜♪ゴアゴアゴア〜♪」

「ごめん...そうだったんだ...」
「元気だせ、ティファ」
「いやそれはこっちが言うセリフだって!!?」
「うんにゃ、ニオイで分かるガウ。
 ティファの家、モブリズでも獣ヶ原でもない、ずっとずっと遠いところ。
 お前、帰れなくて困ってるんだ。心がずっと泣いている」

「失礼ね。まだ、まだ泣く三歩手前よぅ...
 ねぇガウ。
 ミスリル島へ帰れる方法、村へ行くほかに何かないのかな...?」

「ガウガウ!!まーかせろガウ!!
 獣ヶ原、オレの庭のようなもん。おてんとサマが昇ったら案内してやるガウ。
 世界中どこだって行ける、秘密の抜け穴になっ」

「ありがとーーーーガウくぅーーーーん!!!」
バーテンダーのサボテンダーが、
自然発酵して出来たスペシャルドリンクを持ってきてくれた。
「よーしっみんな集まれガウーーーー!!!
 ティファのためにアンコールコンサート開くガウーーーーー!!!」

木の実のコップに入れられたドリンクは、
程良く甘く、それでいて酸味が効いており、とても後味の良い飲み物だった。
「ムームームー!指揮者のお前が来ないと始まらないガウ!」
「......むぅ〜」
「だ〜から心配いらないガウ!」

「ねぇ、どうしたの?」
「ムームームーの親父、
 オレ達ムームー・パーカッションズの指揮者だった。けど、悪い人間に殺されたガウ。
 あいつ、そのこと忘れることない。
 だからティファのことも恐れている...」

穴の中から顔を出している、可愛らしい小動物がいた。
ティファと目が合うと、すぐに顔を隠し、代わりに大きなしっぽが飛び出した。
「ティファはオレと同じニオイの人間ガウ。大丈夫ガウよ」
「むぅ?」

ひょこっと顔を出した。
同じ人間でも、ガウの言葉には本当に信頼を寄せているらしい。
「ガウガウ、来るガウ。ティファ、お前の指揮見たがってるガウ」
「む〜ぅ!」

穴から出た2代目総指揮者は、バランス悪そうにトコトコ走って来てくれた。
それを見たガウは安心し、振り向き、既に定位置に付いている仲間の元へ。

走ってくるムームームーの体が、その少しして宙に浮いた気がした。
無抵抗に地面に落ちる。
投げた後のおもちゃのように転がっていく。鳴き声一つあげずに。

落としたコップから、どくどくとジュースが土へと染みわたっていた。
何が起こったのかティファには分からない。
ただ、流れる赤い液体を見て、恐ろしい死のイメージをするのみ。
仰向けに倒れたムームームーは、目を見開いたまま小刻みにケイレンしていた。
体には矢が刺さっていた。
「ガ、ガウぅぅ...ぅぅぅ」
「誰だ...誰だ誰だこんなことしたのは......っ!!!」
「キャーーーーーーーーハッハッハッハッハッハッハハハ!!!!!」
新たなる人間の出現。
しかしモンスター達は、逃げることも後ずさり一つすることもなかった。
「幻獣ヴァルファーレを追ってジープ出して来てみりゃ、とんだエモノを発見したわ。
 これはまるでっ、
 レアモンスターの大集会じゃない!!!」

「...アンタ...ハンターね...」
「.........」
「見れば噂の野生児クン!
 それに?なんでこんなところに、
 あれまぁ旦那好みのお嬢さんがいるじゃありませんか。ヒッヒッ...!」

聞く耳持たずしてティファは先制に飛びかかった。
怒りに身を任せ連続技を入れようとする。
しかし体が思うように動かなかい。今日一日の疲れが、重力となって体に重くのし掛かる!
武器を取りだし、すかさず反撃を仕掛けてくるハンター。
ただの紙で出来たハリセンだった。
ティファは、避けに乗じて一度後退することを考える。攻撃態勢を整えるため。
風の斬る音が聞こえ、目の先でハリセンがかすっていった。
上手く攻撃を避けきったティファだが、
「違うっあれは仕込みボーガン?!!」
次の瞬間の、飛んでくる矢までかわす余裕はなかった。

にやつくハンターの顔を最後に、ティファは戦闘不能となった。




C−4 目覚め

「んっ...んんん......」
モウロウとする中、意識の部分がようやく本体に戻ってきたようだ。
瞬発的に目を開ける。
しかし、手足を初めとする体全体が麻痺状態になっており動くことが出来なかった。
ティファは、見知らぬ小屋のベッドの上に寝かされていた。
窓と扉の配置から、小屋は恐らく2〜3部屋で構成された小さなものと推測され
その向こうでは、初老の男がどこかへ電報を打っている最中だった。
意識が回復したことに、男はまだ気づいていない。
猟銃が壁に掛かっている。
さっきの女ハンターの仲間なのか?
そもそも、さっきと云うがあれからどれくらいの時間が経過したのだろう。
1年ぐらい寝ていた気もした。
しかしそれは100%ティファの気のせいである。
取り敢えず、前の男に声を掛けよう。
遠回りな言い方が嫌いなティファは、ストレートに声を上げた。
「起ーきたーわよ〜」
「っ!!」
男は凄い反応で振り返った。
キリキリとした顔でこちらに近づいてくると、
テーブルの上の冷め切ったコーヒーに手を掛け、いっきにそれを喉に注ぎ込む。
そして、また元いた場所に帰っていった。
「ふぅ〜...」
「アタシにはノーリアクションかいっ!!!」
「お、おぉぉ、ようやく起きてくれたか修理屋さんよ。
 まったく待ちくたびれたわい、さぁさぁ早く、ワシの時計を直しておくれよ」

「ハァ?な、なに言ってるの」
「早いとこそこのイスも直してくれんか。屋根の修理に使うからの」
「ちょ、ちょっとオジサン?
 私はただの通りすがりの迷い子なわけで。修理屋なんてやってないわけで」

「ならば貴様は何故ここにいる!!?」
「それはこっちが訊きたいぐらいよ!!!」
「...。
 ワシの見解を教えてやろう。
 お前は、やられたのだ。誰一人守れることなく戦闘不能となっていた」

...思い出してきた...
目が覚める前の出来事。悪夢の前の真の悪夢。
飛んでくる矢の起動を目で追いつつも、脳はそれを認知することが出来ず
体は微動だに反応してくれなかった。
突き刺さった矢は、痛く、悲しく、悔しく。
意識を失っていく中、銃声のようなものがきこえたような気もした。
「そうだガウ達は!!?」
後に残されたパーカッションズはどうなったのか。
いても立ってもいられなくなり
「んキャあ!」
ベッドから転がり落ちてしまいました。
「イタタ...そういやまだ体の自由が利かないんだったわ...
 (矢に、麻酔が塗られていたのね...)」

「協会側がなんと言ってこようとな、自分の身すら守れない若造に
 任務を引き継がせるわけにはいかん!」

「......あなたは一体、何者なの...?」
「この獣ヶ原の怪物を任せるには、お前らじゃ、あまりに荷が重すぎる」
冷め切ったコーヒー。
コーヒーの横に置いてある、これまた既に冷め切ったスープとパンを見て
それが初めて自分のためのものであったと気付いた。
「...パークレンジャー...?」
男は助けてくれたのだ。
あの猟銃を使い、絶体絶命の自分を、ハンターから。
「動物達は!あの、怪我をしたムーが一緒にいなかった?!」
男は無言で横に目をやった。
静かに耳を立てると、目線の先の隣の部屋から小さな寝息が聞こえてきた。
ティファは、ホッとし、何故だか知らないが涙がこぼれそうになった。
自力で何とか布団まで戻り、顔を隠そうとする。
「(良かった...死ななくて良かった...!!)」
心の底から安心した。
心の底からこの男に感謝した。
目をつむり、眠くもないのに
そのまま夢を見ようとティファは思った。子供のように布団を頭まで被り。
「...子供?」
「ほへ?」
「ワシには子供などおらーーーーーーーーん!!!!」
男の態度が急変した。
「なになになに?!誰か何か言ったぁ?!!」
「あぁぁぁぁゾッとする!!変なことをいわんでくれ!!
 さ〜ぁ出て行け。
 さもないと、修理屋お前も獣が原に放りだすぞ!!!」

「んキャあ!」
ひょいっ。
何が何だか分からぬまま
首根っこを掴まれた猫のように、無抵抗に窓からつまみ出されてしまった。
まったくC級コメディ並な展開である。
「...ふ、ふざけんじゃないわよ!!!
 意味が分からないのよッ、このボケオヤジがぁ〜〜〜〜〜〜〜!!!」

青い、獣ヶ原の空にティファの絶叫はどこまでも響いた。
小屋はティファを残してどんどんと遠ざかっていく...小屋が移動している。
オヤジが変なら、住んでる家も変なようです。
ツタや根のようなものに外壁全てが覆われていて、
あたかも遠くから見るその形状は
「(さまよえる巨大カツラだ)」
カツラはティファを残してどんどんと遠ざかっていく...
「あんなのがパークレンジャーなわけないじゃない!あるわけナッシングだわ!」
と、そこでポトリんこ。
カツラの中から、食料の入ったビニール袋が産み落とされた。
「...言いそびれたけど...
 ......それでも、ありがとう......」




C−5 再会


あてもなく彷徨っていた。
手がかりもなく探し続けた。
アナタがくれた缶詰を、心を、満たす、食にして。
「缶詰って!きょうび、缶切りもないのに缶詰って!」
ベッタベタなギャグ。
あのオヤジ、何だかわざとやっているような気がしてきた。
背に腹は代えられぬと、ティファは切り裂きチョップで何とか缶詰をこじ開け
ここで何十時間ぶりかの食事を取ることとなった。
缶詰が入っているビニール袋の総重量が、みるみる軽くなっていく。
そして、4缶目を平らげる頃には
体力、精神力の回復と共にティファを苦しめていた体のしびれは完全に消えていた。
「...ガゥ〜...」
「んっ。あっ!」
目線を上げると、そこに見覚えのある緑髪の少年が立っているではないか。
「ガウ君!!?」
「べ、別に、その干し肉のにおいに釣られてやってきたわけじゃないガウ!」
缶詰の干し肉をじっと見ていてたので、側に置いたら食べ始めた。
「だけど安心したわ、
 見たところ怪我もないみたいで。
 危機一髪のところで私達、レンジャーの人に助けられたんだね」

ガウは無言で肉を頬張り続ける。
ティファは、座ったまま両足を抱えその様子をしばらく見守る。
「ねぇねぇ。ムームー・パーカッションズのみんなはどうしてる?
 うちが気絶してから詳しいこと教えてくれない?」

小さな雲が足下に大きな影を落とした。
ガウは立ち上がり、ゆっくりと歩き始める。
「案内するガウ」
「あっ」
ごもごもと、まだ彼の口には肉が少し残っているというのに。
「三日月山。
 獣ヶ原から出る方法、それ、三日月山に行くことガウ。
 そこから海の向こうに通じてるってオレ、昔々に聞いたことある」

「ゴメンネ。いろいろと付き合わせてしまって」
「......なぁティファ」
「なに?」
「頼みあるガウ。オレ、考えたことあるんだガウ。
 このまま、オレ...ティファに着いていっていいガウか?
 オレもミスリルって街に行って、いいガウかな...?」

「えっ、え、それってガウも獣ヶ原から出ていくってこと?
 そのこと...楽団のみんなは知ってるの?」

「オレ、もっともっと色んな人間に会ってみたいガウ!色んな景色、見てみたいガウ!」
「...
 言葉の意味とは裏腹に。
 どうして、キミはそんな苦しい声を出しているのかしら」

「うぅ...」
「ここにはあなたの家があって、家族がいるんだってあんなに自身持って言ってたのに。
 何だか私には、そこから急いで離れようとしてるようにみえる」

「...ティファ知らない。
 家も家族も、オレにはもういないんだ」

ガウは、足を止めた。
「オレは、オレのせいで家族の一人に血を流させてしまったガウ。
 ...もうオレ、あいつらの元に帰れない。
 ここにオレのいる場所は無くなったんだガウ」

「その様子だと、キミもパーカッションズも知らない御様子ね...
 ムームームーは、ちゃんと生きているわ。
 そんな、一人で責任背負って出ていく必要ないのよガウ君」

「だからお前、何も分かってない...
 体の傷がいくら回復したって、
 ムームームーの心の傷は絶対に直らないガウ。
 誰も信用できない。家族も仲間も友達も関係ない、あいつから見る人間みんな、
 もう敵になっちゃった。
 ムームームーのため、オレ、もうあの場所にはいられない」

「...」
「オレ別に悲しくないガウよ。
 思い出全部忘れたらいいことガウ。最初から、家族なんていなかったと思えば」

言い終えたところでガウの体が少し浮いた。
「ウガぁ〜!?何するティファ!!」
ティファは、右肩に暴れるガウを担ぎ、そして獣ヶ原を一直線に走った。
「あなたが言う家族ってそんな簡単に忘れられるような絆だったの??!
 教えてあげるわ。
 そんなの勝手な思いこみだってことを。キミは独りなんかじゃないってことを!!」

放浪するカツラ小屋の形跡を追って。

カツっ、カツっ、カツっ、カツっ...
音はするが、その時計の秒針は震えるだけで時間を前に進めようとはしなかった。
そんな一定した静寂のリズムの中に、二人の人間が転がり込んできた。
木の床がもろい音を出す。
「...ありゃ、いない」
「何だここは??漂流教室ガウか?」
「一体どこでそんな言葉覚えた。
 ここに、私達を助けてくれたパークレンジャーがいたの。さっきまでは、だけど」

机の上に朝食がそのまま放置されていたが、布団のしわは綺麗に伸ばされ
ホテル並のベッドメイクがされていた。
部屋の中を歩く。
ドアの前に立ったとき、その向こうで何かの気配を感じた。
「うガっ。ティファ、ちょっと待つガウ」
「どうしたの急に」
「今から、そのドア開けるんだろ...?
 知らない人間と...ムームームーのニオイが部屋の先からするんだ...
 オ、オレやっぱり...」

「分かってる」
ティファは優しく応えた。
「そこのベッドで待ってて。
 うちが先に中に入って様子を見てくる。
 その間に、心の準備とキミが本当にしたいことを頭の中で整理しておくのよ」

「ん〜...ガウっ!」
このドアを開けるのに、ティファにもタメライが無いわけではなかった。

部屋の中には予想通り、あの時のオヤジと
治療跡が目立つムームームーがいた。
ムームームーは小さな赤ちゃん用のベッドで寝かされていた、
ティファが目覚めた部屋と、家具など含めて別段変わりはしない。
「おぉ、何だ、修理屋じゃないか。
 突然消えてしまったんで、神隠しにでもあったんじゃと心配しとったんじゃぞ」

レンジャーは目線を変えぬまま、入ってきた来客に向け口を開いた。
「さぁさぁ戻ってきたなら急いで芝刈り機を直しておくれ。
 あんたのサービスが悪いから、表の庭は芝がボウボウじゃい。
 15メートルもノビちまったぞ」

「...寝かせ付けるの、お上手みたいですね」
タンスの上の写真立てが目に入る。
緑髪の美しい女性と、マジックで顔を塗りつぶされた男が肩を組んでいる写真。
母親似である。
面影は、確かにあった。
ティファは、思い積もらせていたことを素直に吐き始めることにした。
「レンジャーさん。
 あなた、息子がいたんでしょ...?」

初めてあったときから...
ガウの言葉を借りるなら、二人からは同じニオイが感じ取られていた。
まだその時は、モヤモヤとしてて実体としてつかめないほどの確信だったが。
「......息子?」
「生きているのよ。
 だけど今、彼は傷つき、
 思い出を捨てて獣ヶ原から出ていこうとしている。
 お願いしますレンジャーさん!!ムームームーと一緒にあの子に会ってやって下さい!
 独りじゃないってことを!
 あの子にも、本当の家族がいるんだってことを教えあげて下さい!!」

「本当の、家族とな??」
「どういう理由で別れたのか私は知りません。
 けど、ここで会っとかなきゃ二度ともう二人は」

「なんじゃなんじゃ?さっきから、お前は...息子じゃと?
 ワシには息子などおらん!!」

「とぼけないで下さいよ!!!
 だったら、この小屋中に掛けられている写真の中の夫婦は誰なんです!!?
 顔は塗りつぶされてるけど、全部写ってるのはあなたなんでしょう!!」

「そんな、いっぺんにヤイヤイ言わんでくれ。ムーとて起きるじゃろうが。
 ......しかし、そういえばな、
 息子といえば昔悪い夢を見たことがあるな。
 ...悪魔の子が生まれる夢じゃ。
 ワシは赤いヌルヌルの子供をおぶって獣ケ原まで行くんじゃ...
 妻の命を食いちぎりおった悪魔の子を...!!
 ...獣ケ原に着くと、その子はにわかに泣きだしよった......」

「ねぇっ!レンジャーさん...」
「そして獣ケ原にその子を捨てる...
 ワシは後ろを見ないようにそこから立ち去るんじゃ...」

「だ、だから...」
「すると突然、泣き声がやんだ。
 ワシは後ろを見てしまうんじゃ...
 そこには......
 見たこともないような化け物がっ...!!
 ああ、恐ろしい!思い出しただけでも身震いがする」

「(そんな...この人はもう...)」
「あんたみたいなリッパな子を持った親は幸せじゃろうて。
 ワシゃ今でも悪魔の子に追われる夢を見るんじゃ。
 恐ろしや、恐ろしや...」

「言わせておけば......
 ガウの気持も考えないで!!ブンなぐられたいの!!?」

背後で物音がした。
「(しまった...!!)」
すぐに部屋を出てガウの姿を探す。
足の向きを変える前に、
開きっぱなしのドアを見つけたティファはそこから外へ飛び出した。
乾いた土に顔を付け、ガウは、うつ伏せで倒れていた。
常に移動している小屋の事を忘れて、着地する時に足を滑らせたんだろう。
ティファの気配に気付いても、立ち上がる気配はなく。
広げられていた両手が、ふと弱く握りしめられたように見えた。
「ガ...ガウ...ゥ、ゥ......」
ティファの手もまた弱く弱く握られた。
汗が溜まり、まるで全ての熱がそこに凝縮されていくように感じる。
「聞いていたのね......」
「...オ、レ...」
ティファは激しく自己嫌悪に陥った。
なんて余計なことをしてしまったんだろうと、ここまで後悔したことはなかった。
結果として、最悪の事実をガウは知ってしまったのだから。
「...ティファ...ありが、と、う」
怖かった。
...間違っても、自分がしたことに御礼を言われる理由はない...
気遣いにも皮肉にも取れる言葉が、どんな鋭い矢よりも深く心を貫かせた。
しかしガウは、皮肉を言えるような器用な子供ではなかった。
「...オ...ヤジ......生き...てる。
 ガウ......。
 し...、あ...、わ...、せ.......」

「!!!」
ハッとした。
その次の瞬間には、両手がガウを抱き留めていた。
「うちの店に来るといいわっ。
 ...ポレンディーナなら絶対温かく受け入れてくれると思う。
 孤児だった私と同じように!
 絶対に離れること無い、私達3人これからは新しい家族よ...!!!」




C−6 海の下を越える


「すーずしぃーーー」
クリーム色の乾いた岩山に、ぽっかりと大口が開かれていた。
その山が三日月山と呼ばれる由縁、
また、太陽が沈むまでにとガウに足を急がされた理由は洞窟の内部にあった。
到底外からでは理解できまい。
天井にあいた、大きな、三日月形の穴から太陽の光が射し込み
本来暗闇であるはずの世界に命を吹き込ませていた。
「なんだか幻想的な光景だね...」
自然と口にしてしまうのだった。
「ねぇ、それでガウ、三日月山に着いたはいいけど
 ここにいったい何があるってわけなの?」

「クンクンクン」
「...はっ!も、も、もしかして、あの三日月穴の光の下に立って...
 ......ワーーーーーーーーープ!!!」

ワープ!!ワープ!ワープ!ワープ...(残響音)
「出来るはずないわよね...」
一人で勝手にドキドキして、そしてガッカリするティファであった。
照れ苦笑いでガウの元へ帰る。
ガウは、洞窟に入ってきてから早々、何かを探しているご様子だった。
「クンクンクン。
 だめガウ...空気の流れが悪くてニオイよく分からないガウ」

「そろそろ明かしてくれてもいいんじゃないかな?
 獣ヶ原からの脱出方法。世界中どこだって行けるっていう、秘密の抜け穴の正体」

「ガウ。耳を下に付けるガウ」
「......こう?」
言われたとおり地面に耳をやると、その冷たい岩盤の下から水の流れる音がした。
チョロチョロといった水の湧き出るような音ではない。
それはもう轟音に近い、水脈の流れる音だった。
「こんなところに地下水脈が!」
「それ、<蛇の道>呼ばれてる。<蛇の道>に抜ける縦穴、ティファも一緒に探そうガウ」
「ス、ストップ!!ストーップ!!!
 非常にイヤ〜な展開が脳裏に浮かび上がったんだけど、
 まさかして...この、今、下で流れてる地下水脈を通って外の世界に出ようってわけじゃ」

「お前すげーな!まさかしてのそのまさかガウ!」
「それは無理よッ!無理むりムリMURI!!」
「どーしてガウ?」
「ど、どうしてってそりゃ、距離的な問題とかあるでしょ?
 海の下を越えてくわけなんだから
 終始流れに乗ってくだけでも相当な体力が必要なわけ。
 それに加えて、イカダだって浮いてくれなさそうなこの激流音。
 残念だけど私達人間には、蛇の道を通ることは出来ない」

「...ああ〜、要するにティファはカナヅチなんだ」
「なんでそういう解釈になるかーーーーーーーーーーっっ!!!」
図星だった。
「安心するガウ。オレ、泳ぐの得意、ティファはずっとオレの右手掴んでおくいい」
「あぁぁああ!だーからこれは得意不得意の問題じゃないんだって!
 ねぇ!ちょっと待って、聞いてる?!」

ガウは、振り返ることを知らなかった。
多重に分かれた分岐でも本能のままに突き進んでいく。
このモンスター達がうごめく大地で、彼はそうやってこれまで生きてきたのだ。
ペタペタと洞窟内に響く無邪気な足音は、
やがて天井の光が行き届かない場所にまで遠ざかった。ティファの視界もまたしかり。
どうも暗闇の中でも、ガウは全然目に不自由がない様子である。
「だいいち...そんな大陸を繋ぐような大水脈の話、聞いたことないわよ...」
再会は、突然にやってきた。
「!!!!」
「キャーーーーーーーハッハッハッハハハハッ!!!」
ドゴぉん!!
一瞬の風の揺れを察し右に避けたっ。
しかし岩が砕ける音がした瞬間にはもう同じポイントから2発目が振ってきている!!
「A加減・千壊!!!」
......だが、それは顔の10cm前のところで屈辱の寸止めをされた。
「顔は...女の命ですものね。傷をつけたら値段が落ちちゃうし」
薄く赤色に染まった折線の角が、顔から離されていく。
見覚えのあるハリセン...
「気配がまったく感じられなかった...どこから尾けていた...」
幸運だと思った。ただひとつ、ティファが獣ヶ原に心残りを残すなら
「ヒヒヒヒヒ、
 こちとら毎日命を張ってるハンター、人間なんかに悟られる気配は出してないわよ。
 ...また、会えたわねェ。お嬢ちゃぁん」

「ウワアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
この、人の心を持っていないモンスター以下の生物に
せめて顔面一発でも入れて冒険を終結させたかったからだ。




C−7 その仕事、最後につき

飛ばす軌道はストレートの右拳!
ガードされるのは
繰り出す前から見えている。左の拳がフォローに回り、そのまま削りに入った。
言いようのない怒りが形となり、防御はされているものの全てをヒットに繋げていく。
ハンターは一瞬だが隙を見つけた。
避けもせず反撃のチャンスにも使わず、防御の体制はそのままにハリセンを前に広げる。
そしてニヤリと笑うその顔ごと身を隠す。盾としてではなく、凶器として。
折り角の刃が、飛び込んでくる獲物に対し冷たく牙を光らせた。
「ターゲットから目を離すんじゃないわよ!!」
ティファは姿勢を崩し軌道に無理やり補正を加える。
ハリセンの罠から逃れたところでパンチ攻撃をキャンセル、
今度は右足を使い、しゃがみ姿勢でハンターの足元をすくわせた。
地に手をつかせ倒れるハンター。
「アンタっ!!出番だよ!!」
追い討ちをかけようとしたティファは、叫ぶハンターの目線の先に注意を向ける。
罠であった。
ティファが向いた反対の方向から、強い衝撃が後頭部に走った。
「あウっっ!!」
「デゲデゲデンデンデンデンデーン!」
「くっ、もう一人仲間がいたのね...イつつつつ...」
妙な雄叫びを上げ登場してきたのは、何を食べたらこうなるのか
熊よりでかい巨体の男であった。
ピクピクした筋肉が気持ち悪く、3秒も見てらんない。
「成る程こりゃあ、なかなかの上玉の女だ。
 尻餅など付いてマギサよ、まさかやられていたという訳じゃあるまい?」
「バカお言いでないよ。
 可愛い犬っころと思ってたら噛みつかれそうになっただけさね」

「...言ってくれるじゃない。
 うちだって、伊達に10年
 荒れくれもの相手にバーテンダーやってきたわけじゃないんだから」

「ホッホッホ!気が強い娘はアタシは嫌いじゃないよ」
「だが、人間相手に筋肉の無駄使いだ。俺は出来れば話し合いで解決したいがな。
 ...我ら2人は、めおと幻獣ハンター。
 俺の名前はフォルツァで、そっちがワイフのマギサである」

「(幻獣ハンター?)」
「捕まえりゃ一匹何千万ギルの商売。
 しかしな、噂を聞きつけるだけでも運が良い相手は伝説の幻獣達。
 現実は厳しいな。それだけじゃ商売にはならねぇのさ」
「ヒッヒッ、そこで副業としているのが動物ハント。そして人売り!」

幻獣ハンターという言葉を、ティファは過去に店の客から聞かされたことがあった。
常連の、コルネオという男から。
確か幻獣ハンターからプリチーアニマルな買い物をしたとかなんとかで...
「(もしかすると、こいつらの顧客リストの中にもコルネオの名前があるんじゃ?
  可能性は低くない。
  それだったら、ワザとハンターに捕まって
  ミスリル島に帰ることが出来るんじゃないかしら...!?
  そうよ考えれば逆利用って手もあったんだわ)」

「抵抗なんて、お互い無駄な筋肉の浪費に過ぎねぇ。
 ...着いてきな。
 この先ずっと、喰うにも着るにも寝るにも困らねぇ場所に案内してやるからよ」

手を差し出してきたフォルツァ。
「ドールフィーーーンブロォ!!!」
地面すれすれからのアッパーカットで、ティファはフォルツァの体を突き上げた。
「...ガウが受けた痛みはその何十倍......
 断っておくけど。
 私は、嘘でもアンタ達を喜ばせたりしないから」

「あーら怒らせちゃったみたいよ。やっぱり、調教が必要みたいだわねぇ」
「フンガーーーーーーーー!!!!」

バーサク状態と化したフォルツァが襲い掛かってきた!
「わわ!」
体全体の重みが掛かった強烈なパンチだ。
空気をえぐり取るようなモーションでティファを狙うが、彼女の姿は宙の上。
クリティカルを狙って空中回し蹴りを決める。
「キイテナイヨーーーーー!!!フングァーーーー!!!」
ダメージ0。
「なんで?!」
さっきのドルフィンブロウには確かにダメージを受けたのに。
「体の筋肉を一時的に強化したのさっヒッヒ」
反対に、空中で無防御状態となったティファは
フォルツァのガチョーンの手つきによって頭を掴まれてしまった。
キリキリと頭を締め付けられた後は、壁にめがけて投げ飛ばされた。
受身を取ることも出来ず大ダメージを食らってしまった。
マギサは静かに、土ぼこりにまみれるティファへとハリセンの標準を向けていた。
「強力麻酔でまた眠らせてやるよ...
 昨日はたまたま見回りに来たレンジャーに邪魔をされたけどね、
 偶然は2度も起こらないのさ」
「ティファ!!?一体...どうなっちゃってるガウ!!」

「ガウ君!!」
「アハハハハ!やっぱり一緒だったわね野生児クン!」
駆けつけてきたガウは、そこで見覚えのある人間の顔を見つけ
その場で起こりえる最悪のシナリオをイメージしてしまった。
足がガタガタと震えだした。
「怖がってるのね......もっともっと怖がってみせなさい!!!」
「い、いやだ。
 せっかく出来た家族、もう誰にも壊させないガウ!!
 オレ、モンスターのように暴れる!ドゥドゥフェドゥのように暴れるぞ!」
「暴れるですってキャハハハ!まさに本能のままにって感じだわね。
 別に駄々をごね出すわけじゃないんでしょ。
 好きなようにやってみせるといいわ」
「...ねんえき...ねばねば!!!」

ガウの攻撃は、洞窟を本来の暗闇の世界にさせた。
光を注ぐ天井の穴が、ガウの口から飛ばされた粘液によって塞がれたのだ。
「しまった!闇に乗じて逃げる気か」
「えっ、逃げるの?私、この隙に逃げればいいの??キャッ!?」
掴んできたのは小さな手。強く引っ張られる腕に暗闇の中をリードされ、
ティファはバランスを失いつつも必死に足を動かした。
「思い通りにさせるかい!軟出矢燃!!」
そう言うとマギサは、
ハリセンの仕込みボーガンから四方八方に火の矢を放ち
辺りに視界を蘇らせた。
「今度はランドグリヨンのように暴れるっ。
 はおと〜ー〜!!」

羽音じゃなくて歯音なんです。脳を刺激する歯ぎしり音波攻撃。
「くっ、くぅ〜...野生児が一丁前に左脳を使いやがってぇ!!
 アンタ!!いつまで一人相撲とってる気!!?」
「フンガ?」
「逃げられやしない。どちらかにオチが着くまでは」

たいして広くもない、勇者が最初に訪れるような簡単なダンジョンだった。
故に、洞窟内部に逃げ場はない。
横穴の繋がりは複雑であったが、
どの道を通っても、中心である月明かりの天井広場に出るようになっている。
岩陰に隠れていたティファとガウ。
ムーのようにガウが暴れることで、そこに2人分の穴を掘り、
ハンターが過ぎ去っていくまで
それぞれの穴の中で息を潜める作戦でいる。死角にはなっている筈だ。
「......」
暗闇の世界は尚もまだ続く。
「.........なぁ」
「ねぇ」
敵の殺気が遠くに消えかかった頃、どちらかともなく隣の穴に話しかけていた。
「ミスリルって街...どんなところガウ?
 オレ一回だけ、モブリズの村、行ったことあるけど。
 川あるか?家たくさんあるか?どんな人間、そこに住んでるガウ?」

ガウの好奇心あふれる顔が目に浮かぶ。
こんな状況でと、呆れながらもティファは気持ちを煽るように楽しく語った。
「そうねぇ...海に囲まれた、そこは小さな島で...
 でもね、鉱物を産業にしていて
 船や飛空艇でいろんな国のいろんな人達が集まって来るのよ。
 あと、街中には坂が多くて、他の街から来る人は結構それに驚くみたい」

「坂が多いか!転がって遊べるガウ!」
「私はそこで、ルゴルってBARを開いていてね。
 良い人、悪い人、
 そんな区切り関係なしに、私はカクテルを作りながら生活してる」

「悪い人間でも?辛くないガウか、そんなやつら相手して」
「お客はお客。
 かえって、そういった考え方のほうが楽だったりするのよ。案外」

「そういうもんなのか...大人の世界、むづかしいガウね」
「...」
「...ティファ...?」
「...」
会話途中なのに、ティファのいる穴から全く返事が返って来なくなった。
「ティファ...あ、あれ一体どこ消えたガウ!?」
返事が返って来る筈もなく。本人の姿が消えていたからだ。
見ると、偶然にも、ガウが掘った場所に元からあった自然の縦穴があり...
「...こ〜こ〜よ〜...」
ティファは、深い深い更なる落とし穴に落ちてしまったようだった。
ガウの声に反応して、ティファは自分が潜ってきた道を見上げる。
自力で這い上がれるような角度だったので、
不幸中の幸いだと思い立ち上がろうとすると
足の付け根辺りに激痛が走った。
「大丈夫か〜〜〜!!」
「だ、だいじょうぶ...足をちょっと捻っちゃったみたいだけど」
「今オレもそっち行くガウ!」
ザザザァと滑り落ちてくる音が聞こえてくる。
自分が落ちたときは感じなかったが、相当深い穴だった様子。
穴の向こうから足が見えるまで、結構な時間が掛かった。
「ドジちゃって、ゴメンね、ガウくん」
「いえいえ、どういたしまして(ニヤリ)」
......ティファの右肩に、麻酔の矢が刺さった。

「ティファーーーーーーーーーー!!!!」
「だっからそう筋肉を暴れさせるなってんだ。
 おーーいマギサ!!そっちの方は上手くいったか〜!!」
「自分から怪我の報告してくんだから世話ァないわ。
 だけどこの洞窟が2層に別れていたなんてねぇ。
 ヒッヒッ、おあつらえ向きな奈落のガケまでこっちにはあるよ」
「成る程そいつぁ都合がいい」
「ガウ〜...」
「さてと野生児。お前にゃ捕獲される前にやってもらうことがあるんだよ。
 ...お前が知ってる、レアモンスター達の集会場所を教えるか否か...
 くれてやんのは命令じゃなく選択権。
 返答しだいじゃ、穴の下の小娘の命はない」

「どこまでも...ガウの気持ちを踏みにじりやがってぇ...!!」
ティファは倒れていなかった。
足を付き、気力だけで上半身を起こしている。意識を失うぎりぎりのところで。
「嬉しいじゃない、どこまでも立ち上がってくれて。
 けれど、鬼ごっこもここまでよ」

少し前にも聞いたセリフ、シチュエーション。
だがあまりにも状況が違いすぎる。どれだけ虚勢を張ったって、そこに逃げ道はない。
「本当は、目を開けてるだけで精一杯なはず。
 塗っておいたのはキマイラだって気絶する飛竜草の毒なんだからさ」

「精一杯なのは...息上がっちゃってる、オバサンの方なんじゃない?」
スっとマギサの顔から表情が消えた。
持っていたハリセンを、そこらへ投げ落とす。
「最後まで生意気ね!!!」
バチン!!
大きく張った手で平手打ち。
睨み顔で顔を向きなおしてくるティファを見て、その右頬にもう一発。更に左に一発。
「さっきから...!!パンパン痛いのよ、この年増女!!!」
パーーーーン!!!
喰らった3発分のビンタを、2倍返しにしてマギサにお見舞いした。
「うっ、くぅ...!」
「ガウ!!!こんな奴等のいうことに聞く耳持つんじゃないわよ!!!」
「だけどそれじゃティファ殺されちゃう!!」
「ぜぇ、ハァ、そーさ状況は何も変わってはいない、
 依然としてアンタの命綱はアタシが握ってるんだからネ!」

フォルツァの雄叫びが洞窟内に響く!
「さぁ言え!!吐け!!!義も情もない、たかがモンスターじゃねぇか!!!」
「安心して......うちは、死なないよ。
 たかがモンスターじゃなく、彼らは、家族だったんだから...
 家族だったんだからぁ...
 興味心旺盛なガウに、そんな、人が通れナイような道を教えないわヨね」

「呂律が回ってないさね。そろそろ体の自由に限界が来たのかしら?」
「......信じてみる...」
地面を這いながら前進するティファ。方向感覚は既に無くなっている。
「い、今更その足でどこに逃げられると思ってる!?」
「先に!!<蛇の道>に行ってるわよっ!ガウ!!」
そして、欠けた小石と共に、ティファは深い地面の割れ目に落ちていった...
既に落ちる前から意識は失っていた。
悲鳴は聞こえず、流れる水脈の轟音だけが耳の中で轟きを上げていた。
「...お、お、落ちたよ...
 自分から落ちやがったよ〜ッヒッヒ!!ヒィヒヒははは」

目の前で起こった出来事に、マギサは笑い、腰が抜け、茫然自失となった。

「ティファ、穴の下で<蛇の道>見つけた!!?オレもすぐそっち行くガウ!!」
泳げるにしろ泳げないにしろ、今のティファは完全麻痺状態である。
手足を縛られたまま海に落ちたのと同じ。
タイムリミットは1分もない!
「おっと野生児...」
縦穴に潜り込もうとするガウだが、
長いリーチを持ったフォルツァの巨大な腕に掴まってしまった。
「どうやら交渉にアクシデントが起きてしまったようだな」
「離せ!!離せっ、ムキムキ男!!」
「結局一匹だけになっちまったが。せめて、お前だけは確実に捕獲してやるぜ」
「ティファが、オレの右手を待っているんだぁ...!!!」

キュゥーーーーーーーーーーン!!!!
蜂か。
フォルツァの耳たぶが、まるでその音によって切り落とされた感覚となった。
暗闇からの謎の銃声。
「まさか...いや、そんなわけはねぇ、
 レンジャーの野郎がここを嗅ぎ付けてくるなんて、まさか!!」
「行けィ!!!!!!」

キュゥーーーーーーーーーーン!!!!
「今だ行くのだぁ!!!!!!」
若干弱まりを感じた腕の力の隙を付き、ガウはそこから抜け出す。
物凄い叫びに圧倒され、ガウは急いで縦穴へ向かう。
...その時、三日月形の穴を塞いでいた粘液が、徐々に剥がれ出していた...
ガウは、ふと後ろに振り向く。
二人の間に、小さな射光が射し込んだ。
「......」
ボンヤリと見えていた輪郭線が、やがて...
「......オ...ヤジ...?」
「行けーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

「...二兎を追うものは一兎をも得ずってか...
 まったく、毎日が勉強だぜこりゃ...」
「...」
「幸運にも、洞窟に視界が戻りつつあるが...
 老いたレンジャー1人が、俺の筋肉を前に何が出来るか言って見やがれェ!!
 あらかじめ言っておくが、マギサと違って
 俺はそんな銃なんかにゃビビら!!...ね...ぇ、からな...」

フォルツァは、1人のレンジャーに銃を突きつけられている。
その後ろで、他のキャンプから駆けつけてきたレンジャー部隊が何十もの銃を構えていた。
「...ど、どーも...ハハ、
 ありがとーございやしたー!デゲデゲデゲデーン!」

完全包囲されていた。




C−8 エピローグ

...重かったりしないかな...今度は、私のほうがガウに担がれてる。
乾ききれない靴の先で、地面にズルズルと水の線を描きながら。
ガックシながら、ここはまだ獣ヶ原の下らしい。
溺れかけた私を助けるために、水脈から這い上がって出てきたのが
この、暗く、長いトンネル通路。
ガウは言ってくれた。
「間違いなく、ここが蛇の道ガウ」
痺れが取れない私の口を察し、ガウは一人で色々と答えてくれた。
<蛇の道>とモンスター達から呼ばれてる由縁は、実はこの足元にあった。
昔、どこかの集会所で、チョコボ頭のあいつと見た映画のワンシーンを思い出す。
蛇のように敷かれた線路。その上を歩いていく、背中越しに見るガウを見て。
島と島を繋ぐ大水脈なんてなかった。
けれど、島と島を繋ぐ地下の大交通路なら私はよく知っていた。
この道を辿れば、必ずミスリル島へ帰れる。<デビルロード>の中心、ミスリル島。
空の便がまだ盛んじゃなかったころ
島々の貿易に使われていたこの人工の道は、
偶然にも、水脈を隔てて獣ヶ原の三日月山に繋がっていたというわけだ。
もしかしたら、獣ヶ原の動物達も
昔々に蛇の道を通って集まって来たのかしら。なんて、妄想モード。
きっとガウ君、重いんだろうな...
もう少しだけだから。
ここがデビルロードであるなら、
乗り捨てられたエンジントロッコが何処かに落ちてあるはずだから、
それを見つけるまでの、辛抱だよ。
ポレンを訪ねミスリル島にやってきた集団の中に、私は懐かしい影を見つけ
とっさに彼らの白いトロッコに飛び乗ったのが冒険の始まり。
ダンボールみたいな仮面をしていたけど、ガウ君風に言えばニオイで分かる。
あなたは、クラウド=ストライフなんでしょ?
結局、コーネリアに着いて、その後は見つけられなかったけど...
忘れかけていた色々なことを思い出したり、教えられたりした今回の冒険。
世界に一つの私だけの冒険。
それも、このデビルロードに始まり、もうじき終わろうとしています。

「最後のお勤め、ご苦労様でした!!」
護送されていくハンター達。
その横で交わされる、ある二人の会話。
レンジャーにしてはやや歳の行き過ぎた印象のある熟年風が、
使い古された銃を片手で差し出した。
受け取った側は、ホクホク顔で砕けた調子で話す。
「いやハハしかし、
 まさかアナタの方から連絡が来るとは思いもしませんでしたよ。
 いつもなら、この獣ヶ原の怪物を任せるには貴様らには荷が重すぎる!って、
 そう言っていつも門前払いだったのに」
「ワシの、役目は、これでもう終わったからのぉ...」
「ん?まぁ、あれです。
 これからは僕達若いレンジャー達が頑張って彼らを守っていきますから、
 オヤジさんは安心して引退してください」
「おお修理屋!!そこにいるのは修理屋さんじゃないかい!!」
「...聞いちゃ〜いませんか、やっぱ...
 本当に、そのボケた頭でよくこれまでやっていけたもんですよ...」
「オイみんな来て見ろよ!!」
「何だ...?」
「いいからこっち、外へ来て見ろ。
 .........な?...聞こえないか?大地の鼓動のリズムだよ」
「珍しいじゃないか、まだ完全に日は暮れてないはずなのに」
「な?なかなかのレアもんだろ?」
「こんな時間にムーのコンサートを聴けるなんて、
 オレ達なかなか運がいいかもよ?」

「......早速じゃが修理屋よ、
 急いでワシのこの二つの目玉を直してくれんかね。
 さっきから、意味もなく涙が溢れ出してきて前が見えんのじゃい」

その意味を誰にも知られぬまま演奏される歌に、老人は心を乗せ、
ふと吹いた悠久の風と共に記憶を預けることにした。
思い出されることはなく、
忘れられるはずもない我が子への記憶を。


「ガウ〜〜〜〜〜!!!」
「バーーカもんがぁ!!何度言ったら分かるか、店の中で暴れるんじゃないと!!」

ある日曜日の朝の風景。
似ても似つかぬ...いや、その自然体溢れる風貌は似てると言った方が良いのか
ぶかぶかのTシャツを上半身に着たガウは、
店のオーナーであるポレンディーナに朝っぱらからドやされていた。
「さーぁ二人とも、どいたどいたぁ。
 何週間も店を空けてたからね、今日は朝から大仕込み大会よ」

「今日は日曜、本に書いてたガウ。休む日、遊ぶ日、日曜ガウ」
「ガッハッハ!!そうだそうだ、休む日、遊ぶ日、日曜ぢゃ!!」

「いつの間にポレンは一緒になって暴れてるんじゃないわよ!!!
 う〜...そうかと思えば、二人してテレビを見てるし...
 まぁ、その方が静かでいっか」

「ポレン、どこ押すリモコン?大きくしたいテレビの音」
「この右のボタンだ。グィーンと、グィイイーンとでっかく出来る仕組みよ」

「>>>>>>>>>>>>>>>>>>>(最大音)」
「ダハハハハハハハ!!お前は物分りがいいな!!!」

「うーーるさぁーーーーーーいっっ!!!!」
「あの人は!?」
「自ら名乗りを上げられてしまいやがりましたが、もう一度改めてご紹介いたしましょう!
 そうっ、次なる挑戦者の名はセッツァー=ギャッビアーニ!!!!
 たった1人での参戦!孤独を愛する一匹狼が、いま広野に立つゥゥゥ!!!!」
「!!」
「!!?」
けたたましいテレビの音が、否が応にも耳に入ってきた。


THE END?

本編に続く...

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MIDI詳細

C−1...「Force Your Way」  by.yusawaさん (HPへ)
C−2...「獣ヶ原」 by.よこたさん (HPへ)
C−4...「ティファのテーマ」 by.DR(零式)さん
C−8...「親愛なる友へ」 by.よこたさん (HPへ)
主な元ネタ

「ティファ追いつめられて」...FF7
「私は飛べる」...FF10
「ハンターマギサ」...FF5
「大地をさなよう根の家」...FF3
「ビンタ合戦」...FF7
「蛇の道」...FF6
「デビルロード」...FF4
「白いトロッコ(船)」...FF8