H・R
「私立FF学園高等部……今日からここが私の学校ね」
煉瓦造りの門の前で足を止め、少女は言った。
少女の名はセリスという。
輝き波打つ金の髪はセーラー服によく映え(映えるのか?)整った顔立ちを一層際だたせている。
が、空を閉じ込めたかのような蒼い瞳は傲然と前を見据え、
その眼差しは残念ながら彼女の持つ本来の魅力を損なわせていた。
「秋のそよ風に美しい髪をなびかせたたずむ美少女…
なんて絵になるのかしら。この学校の生徒もすぐに私の虜ね…。ヒェッヘッヘ」
ニッと唇を歪めブキミな笑い声をあげつつ、セリスは門をくぐり職員室へ向かうのだった。
職員室のドアを開けながら、セリスは言った。
「転校生のセリス・シェールです♪」
先程のブキミな笑い声とは似ても似つかぬ可愛らしい声だ。
素晴らしい技術である。
「ああ、君が転入生のセリスさんね。
私は君の担任のエドガー・ロニ・フィガロだ。よろしくな〜」
「は………はあ…………………」
雑多な机の群の中から歩み寄ってきた男にセリスは顔を引きつらせた。
その男、エドガーはセリスより銀色に近い金髪をリボンで結び、
白衣を羽織っていた。
瞳は深い碧。年は27,8か。
はっきり言って、格好良い。格好良いのだが………。
彼は口にバラをくわえていた。
(バ…バラ……?口にバラ……??口にバラ………それは一体……)
セリスが顔を引きつらせたままでいると、エドガーが覗き込んだ。
「君なんだか顔色が良くないな…どっか具合わるいのか?」
(アンタが意味不明なのよ!!!)
心の中で思いっきりツッコミを入れたその時。
ぽと。
エドガーの口からバラが落ちた。途端!!
「うぐわあああぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
ガッシャアアアアァァァァァアアアアアアアアンン!!!!!
ばさばさばさばさ!!
どごごっ!!!
「んぎゃっ!!!」
エドガーは絶叫をあげ、まわりの机やら書類やらテストやら教師やら
すべてを巻き込みながらのたうち回り始めたのだ!
「きゃああああああああああーーーーーーーーーーーーーー!!!!???」
(な…なんなのこれ!?何が起こっているのおおおおおおおっ!!???)
セリスは訳がわからない。そりゃそうだ。
(と……とりあえず逃げよう!!巻き込まれるわ!!!)
廊下への扉に手をかけるセリス。
だがその瞬間、がしっ、と足首をつかまれ、
セリスは転び顔を床に打ち付けた。
「へぶっ!!痛いじゃないなにすんのよぎゃあああああああああああああ!!!!!」
文句を言いながら振り向くと、それはエドガーだった。
しかし彼はいろいろな物で全身をぶつけ、血まみれだった。まるでゾンビだ。
「ぎゃああ」はそれに驚いたためでた悲鳴である。
「がぶぁっっ!!!」
びぢゃぢゃっ!!
「ぎゃあああああああああああああああバイオハザードーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
エドガーが血を吐き、セリスの制服に赤い染みをつくる。セリスは再び絶叫した。
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい許じでえ゛ぇ゛――――――――――!!!!!」
恐怖のあまり、転げ回りながら悪くもないのに謝りまくるセリス。
その時、蚊の鳴くような声でエドガーが何か言った。
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「バ…バラを……」 「ええ!?」 「バラををををををををををををヲヲヲヲヲヲヲヲヲ!!!!!」 「はいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
物凄い勢いで、さっきエドガーが落としたバラを拾って渡すと、 と、次の瞬間! 「はっはっは!」 「ヒッ!?」 エドガーは突如として立ち上がり、爽やかに笑った。
「いやーーーすまないねーーーーー。 (そんなバカなことがあるか!!!)
だが口に出しては言えない。 「それじゃあ教室に行こうか」 (行きたくない!!この人は何かがおかしい!!!)
だが口に出しては言えない。 「ああああの、手当とかしなくていいんですか?」 「え?なんの??」 エドガーは全然わからない、と言う顔をしている。 「いやあのだから……もういいです………」 この男には何も通じない…セリスは悟った。 |
(…私はただ転校してきただけなのに……ここはどこ?
この教師は一体何者??私のこれからの人生大丈夫???)
だが口に出しては言えない。
セリスはエドガーについて、惨憺たる有様になった職員室をあとにした。
頭が真っ白になっているセリスだったが、
エドガーと5メートル以上距離をとるのは忘れなかった。またああなっては困る。
そして当然の事ながら、エドガーは血まみれのままだった。
〜つづく〜 (絵・ババロア2世)